maria-pon

お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

フェリ引退公演 Aプロ ④

2007-08-08 03:16:39 | BALLET
「フー・ケアーズ?」
ガーシュウィンの音楽に乗せて粋に流麗に踊られるマンハッタンの夜。
振り付けはバランシン。
ラメを散りばめた真紅のミニドレスのへレーラが美しい・・・。
活き活きとした都会っ娘の火花の散るようなフェッテを余裕を持って繰り広げる。
掌中に収めた作品なのだろう、と思わせる音のとり方がたっぷりとしていてその分回転は超絶技巧を満載。お得意分野と見ました。
そしてカレーニョ!彼の持ち味はクラシックのテクニックとエレガンスなので、この曲想の持つちょっと斜に構えた粋さ、とは若干キャラがずれるのですが、それを瑕と思わせない微笑を湛えてへレーラを愛でる表情、完璧なダブル、そしてトリプルのフェッテからサッと脚を高く上げる流れのエレガントなこと!
マンハッタン賛歌を踊るこの2人を見ているとアメリカも捨てたものではないではないかと、思えてくるほど・・・。堪能しました!

「マノン」第3幕より沼地のパ・ド・ドゥ


フェリ4つ目の演目はマノン・・・。
無邪気なファム・ファタールがパトロンを裏切り詐欺罪に問われてアメリカはルイジアナの女囚となり、追ってきた恋人デ・グリューの助けで脱獄、逃避行の中、力尽きて命を落とすシーン。
ぼろぼろのミニのコルセットドレスにザンバラのショートカットが小鳥のよう。
彼女が登場するだけで華麗なるNYの夜はどこか異次元に飛んで行き、聴こえるのは沼地の夜のたちこめる霧の中を行く恋人達の荒い息遣いのみ。
ジュール・マスネのドラマチックな音楽に合わせてマクミランの超絶リフト連続のハードな振り付け。
ガラで、このシーンを好んで演ずるのはシルヴィ・ギエム、ディアナ・ヴィシニョーワといった超絶技巧系の方々。・・なのですが、得てして 駆けて、飛び込んで、リフトされた状態で空中で回転・・・という流れはそれを瀕死の状態で行うのは至難。ギエムですら、表情こそ悲劇のヒロインですが、しっかりとした軸を持った自立したムーブメントで踊りの輪郭を際立たせる彼女の踊りの特質により(それが彼女の美点でもあるのですが・・・)とても自力で歩けないようには見えなかったり。
ヴィシニョーワに至ってはうっかりするとはつらつとして見えかねない難しいシーン。
フェリは・・・ボロ雑巾のようでした・・・。アラベスクをしても力なく、ボッレの腕に飛び込んで空中で2回転されてまた腕の中にいる彼女の体には全く力が残っていない・・・そんなギリギリの状況で腕の中で息絶えるマノンを最後に呼ぶデ・グリュー。声なき声。悲痛な叫びが踊りから聞こえてくる。そんなボッレのデ・グリューも見事でした。

カーテンコールで、ハラハラと天井の一点から落ちてくる紅いバラの花びらの下に、全体ブルーの照明の中、そこだけスポットが当った状態でフェリがいる・・・という演出がキレイでした。

さぁ、次はBプロを残すだけ。
楽しみにしていた公演ですが、そしてAプロの内容の良さにBプロへの期待は寧ろ高まっているのですが・・・なにやら寂しい気分に。
”終わり”が近づいている。来て欲しくない”終わり”が・・・。