maria-pon

お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

ルグリガラ Aプロ ④

2007-08-09 14:08:00 | BALLET
第三部、続きます

「椿姫」第2幕より La Dame aux Camelias acte2

金髪で健康的な官能美を持つエレオノーラ・アッバニャートと感情を表出させるコンテンポラリーのソロがお得意(と見ていますが)の最近(忘れた頃に?)エトワール昇進のベテラン、バンジャマン・ペッシュ。
これほど「椿姫」に合わない配役もない・・と思うのですが・・・。
白いフリルのついた華やかなドレスを着たエレオノーラは金髪の洗い髪を振り、美しくはありますが、とても死に至る病を隠して、若い恋人とのかりそめの甘やかな日々を愛おしむ洗練された高級娼婦ではなく、バンジャマンもリフトがキツそう・・・。
そう、このノイマイヤー版の「椿姫」の一番の難関は上体を反らせてスカートを前面に出した状態の女性のリフト。上手く2人の間に空間が出来れば、それぞれの苦悩を立体的に見せる効果があるのですが、リフトが足りないと・・・悲惨。男性の顔はスカートで隠れ、女性のスカートだけを振り回しているように見えてしまうのです。リフトされたエレオノーラがさりげなくスカートをたくし上げてペッシェのお手伝いをしていましたが、下ろすときにまた「よいしょ~」と聴こえてきそうなぺッシェ。リフトしたまま舞台を斜めに横切るところはヨタヨタでした。
この人がエトワールになると聞いて最初に思ったのが、グランバレエで女性をリフトするシーンが増えそうだけど大丈夫かな??という疑問。
これは、その昔、男性二人のコンテなどでよく共演したバンジャマンへのルグリ先生からの「頑張れよ」という励ましをこめた宿題でしょうか。力演だったので、拍手もしっかりもらっていましたが、そんなあらぬ方向に思考が・・・(^^;)

本当はこの作品、「三角帽子」の前に演じられたのですが、同じ男女2人の関係を描いた文学作品シリーズとして比較の為にこちらに移してみました。

大トリは

「オネーギン」Onegin

 

若きルグリのパートナーとして比類ないバツグンのコンビネーションを見せていたモニク・ルディエール様が特別出演。2001年からカンヌのロゼラ・ハイタワー国際舞踊センターの校長を務められていて、今は踊ってはいらっしゃらないはず・・・はず・・・なのに。
プ-シキンの「エフゲ二ー・オネーギン」が原作。シュツットガルトのジョン・クランコ振付。チャイコフスキーの音楽。かつて文学少女だった田舎貴族の娘タチアナは都会の青年オネーギンに恋文を渡しますが手ひどく振られ、公爵夫人となって美しく成長した今、彼からの恋文を手に書斎にいますが、忍んできた彼を既婚者の身であることを理由に拒絶・・というシーン。
モニクの一瞬蘇る過去の恋心に引き裂かれつつも毅然と彼の哀願を拒絶する表情が相変わらず理知的で美しく、ルグリ先生の哀願しながらも音楽にのって・・・というより音楽そのものと一体となった踊りの洗練、踊りと表情と物語の展開が完璧に溶け合った、稀有な舞台を見せていただきました。
もう・・・、もう・・・、他の今日見てきたパフォーマンスの数々とはステージが違います。
乱暴に言ってしまえば他の良かった演目をAとして、これはトリプルAと言う感じでしょうか。
感情表現、と一言で言いますが、洗練とドラマをここまで極めたバレエというものの到達点を見た想いでした。
黒のリボンタイのクラシカルなスーツスタイに口髭をつけたルグリ先生の美中年振り、モニクの肩を出した、大きなペーズリーのフロック加工をスカート部分に施したシックな青の(ペチコートが紺)ドレスも知的なタチアナにぴったり。大人の恋、に引き裂かれるロシア貴族の品格を体現していて何とも薫り高い一幕。今日はこの舞台を観られただけで満足です。







ルグリガラ Aプロ ③

2007-08-09 13:35:01 | BALLET
第二部の続きです

「ドリーブ組曲」Delibes Suite

 

ジョゼ、アニエスのエトワール・ペアが余裕綽綽で見せてくれる十八番。
ジョゼの振り付け、アニエスのデザインした衣装・・・。
クラシックのパでお得意なところを散りばめた作品。
何度も拝見していますが、やはり現役エトワール生活の長いペアならではの見せ所を心得た演技に会場は沸き返り、それを感じ取ってかノリの良い演技を見せてくれました。
でも、この中で2人が互いにポージングしながら相手の前に出ようとするところ、いつ見てもニヤリとしてしまうのですよね・・・

第三部

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」Tchaikovsky Pas de Deux




待っていました!淡い水色のフワリとした衣装をつけたマチューとドロテ・ジルベール。
ドロテは持ち前の明るい闊達さのあるきらめきと、自在にアクセントとタメをきかせた演技でバツグンの安定感。スピーディな回転やバランスなど、見せ場を自分で作りながら、疾走します。
同じく若さと美しさに溢れながら、ドロテとは逆に、レガートでソフトで軽やかな持ち味のマチュー。
同じタイプのミリアムとの白の組曲のときはおとなしく纏まってしまった観がありましたが、ドロテとだと互いを引き立てあってより華やかな感じ。
ドロテが走りすぎて音に遅れそうになって一気に取り返す当り、一瞬ヒヤッとさせますが(群舞だとこれがやり過ぎ、に見えてしまう)それもまた目が離せないところ。
エミリー・コゼットが彼女を差し置いてエトワールに上がったとき、どうして?ドロテじゃないの?と99%のバレエファンが思ったでしょうが、今回の拍手の多さでも、彼女の時代が着実に近づいていることを自分自身感じ取っているに違いありません。

「三角帽子」Le Tricorne



またしても、待ってました!!
ジョゼが愛知万博の関連イベントとして催されたスペイン政府主催の国際的に活躍するスペイン国籍のダンサーを一同に集めた好企画「スペイン・ガラ」でこの「三角帽子」のファルーカを踊ったときの衝撃が忘れられないファン、その噂を耳にいつの日か。。と心待ちにしていたファンの熱い視線を浴びて登場のジョゼは真紅のシャツに黒いパンツ。
バリバリのスパニッシュでサパテアード(フラメンコの足のステップ)も指を鳴らす音もスペイン男の魅力満載。
カッコいい・・・。
パリオペ公演の楽屋口で、ジョゼに「あのスペインガラのときのファルーカ、また見せてくださいねっ」としつこく頼んだファンはわたくしだけではないはず。
堪能させていただきました。
あの時は、ジョゼっていうよりホセ、という感じでしたが、今回感じたのは、スパニッシュながらも洗練されたフレンチなバレエのテイスト。
いや、クラシックバレエダンサーのコンテンポラリーも面白いですけれど、クラシックバレエダンサーのフラメンコも・・・良いものです。
ジョゼ、本当に来てくれてありがとう、と拍手には感謝をこめて。






ルグリと輝ける仲間たち Aプロ ②

2007-08-09 09:48:37 | BALLET
第一部

「白の組曲」Suite en Blanc



画像はガルニエでのミリアムです。
東バ・パリオペ混成チーム(?)による「白の組曲」
そういえば、これは東バのレパートリーでもありました。
セルジュ・リファールの振り付けによる”シンフォニックバレエ”。
1943年以来、シーズン初めの「グラン・デフィレ」の際に上演されるお約束の”顔見世”演目。
これを最初に持ってきたか・・・という感じ・・・。
幕開けから純白の衣装のダンサーがキレイにポージングして勢ぞろいでワクワクします。

シエストの3人、パ・ド・サンクの内、4人の男性、そして群舞は東バダンサーが担当。
そのほかのソリスト役をオペラ座勢が務めます。
トロワのローラ・エッケ、オドリック・ベザール、アクセル・イボ。
エッケは長身のクールビューティ。アクセルくんはSBLでお馴染み。短髪にしていましたが、どことなく情感漂う持ち味を滲ませながら健闘していましたv
セレナードは黒髪でちょっと東洋的な顔立ちのマチルド・フルステー。細く長い四肢がバンビのよう。
キレのある踊り。
サンクのシャルリーヌ・ジザンダネもSBL生としてお馴染み。相変わらずチャーミングですが踊りのバランスはあと一歩かも。
シガレットのアニエス・ルテステュが素晴らしい。
他と一線を画す大きな白鳥のような存在感と優雅なアームスにうっとり。いきなり回りがかすんで見えるあたり、脂の乗り切った成熟期に入ったエトワールの力量を知らしめる感じ。
アニエス、来てくれてありがとう~と思わず心の中で感謝したのはわたくしだけではないはず・・・。
拍手も一際大きい中、続くマズルカはマチアス・エイマン。
SBLでお手本役を務めていた彼は毎年一階級ずつスピード昇格をしている注目株。
臆せずキレのよい大きなジャンプとステップでさすがの自信漲る演技。
アダージュのミリアム・ウルド=ブラーム、マチュー・ガニオの目にお星様系カップルはきれいな踊りでしたが、アニエス、マチアスの後ではちょっとインパクトに欠けたかも・・・。
フルートのメラニー・ユレルが華には欠けるがベテランならではの着実なテクニックを見せて、最後全員の大団円まで、すっかり楽しませていただきました!


第二部

「扉は必ず・・・」Il Faut Qu'Une Porte...


画像はオレリーとルグリです。

イリ・キリアンがルーブルにあるルフラゴナールの絵画「閂」に想を得て振り付けた作品。
前回のバレフェスでのオレリー・デュポンとルグリの名演が記憶に新しいところ。
今回はオレリーの降板により、プルミエールのエレオノーラ・アッバニャートが頑張りました。
ハープシコードを一音ずつ響かせて残響を残す静けさをメトロノームのように扱った音楽にスローモーションのような動きでロココスタイルの部屋着の男女が絡み合います。
男は部屋を出て行こうとするのか。。。後半ややコミカルな花束の投げあい、りんごを手渡しては齧りあうなどの二人の間のコミュニケーションの変化を表すメタフォリカルな振りなどやはり面白い作品。
オレリーとの時には緊迫感を強く漂わせ、先鋭的な実験作品というイメージが強かったのですが、男女の柔らかな情感すら漂う今回。悪く言えばやや鈍い感じ。どちらが、というのは、これは好みでしょう。
演じるダンサーによっても味わいが変わる作品と言えるかも。
私見ではオレリーに圧倒的に軍配が上がります。
コンテンポラリー作品らしい世界観の抽象化とユ-モアの感覚。これがオレリーにあってエレオノーラにないものです。

「スパルタクス」Spartacus



古代ローマ「スパルタクスの反乱」を題材にした、男性的な勇壮な作品で一時代を築いたボリショイのユーリ・グリゴローヴィチ振り付けらしく全編これリフト。
男性ダンサーの筋力が試される作品・・・というのは冗談ですが、ハチャトリアンの雄大な音楽に合わせて、スパルタクスが妻フリーギアをリフトし続けるパ・ド・ドゥ。
長くほっそりとした四肢をきれいに伸ばしたままリフトされて次々と変化させていく難易度と危険性の高い振りを難なく美しく見せるマチルド・フルステのラインの美しさを堪能。
上部をきれいにまとめたダウンヘアも黒髪が清楚な感じで役に合っていました。
2人の情愛や運命に翻弄される苦悩などが映し出される一幕ですが、そこまでの内面描写には至っていなかったかも・・・。マチルドと同じくスジェのステファン・ビュヨンはサポート、頑張っていましたが勇壮な戦士には見えず。もっと言うなら人民の英雄にも見えず。
画像はボリショイからお借りしました。これはかなりマッチョなイメージですが、パリオペでは衣装もバーントシエナでもっとエレガントでシンプルな感じ。リフトもここまで高々とは上げていませんでしたが、よくこなした!という感じです。






ルグリと輝ける仲間たち Aプロ ①

2007-08-09 09:15:41 | BALLET
Manuel Legris et ses Etoiles 2007
Series Finale

というのが、口髭をたくわえた黒のリボンタイのスーツ姿がなんともダンディなルグリ先生が表紙のプログラムのタイトル。
ファイナルなのですね・・・・。
会場のゆうぽうと簡易保険ホールに到着してすぐに、現実に直面。

思えば1996年から2年毎に「輝ける仲間たち」を引き連れて真夏の東京を訪れてくださったルグリ先生。
クラシック全幕主体のOpera座の引越し公演では観られない面白い小品やコンテンポラリー作品をバランスよくグランバレエのPDDに織り込んで紹介していただいたこのグループ公演。
ここで知った気鋭の振付家、思いがけずモダン作品が似合うダンサーのもう一つの顔、などなどが脳裏をよぎります。

来年Opera座のエトワールとしての定年を迎えるルグリ先生。
従って、この「ルグリガラ」として親しまれているこの公演も今回が最後ということに・・・。

今回はなぜか公演前に怪我人続出。
予定されて降板したのは大輪の華オレリー・デュポン、ロマンチックな持ち味で女性ファンの多いエトワールに昇格したばかりのエルヴェ・モロー。
その他、燻し銀のヤン・サイズ、SBLでおなじみのジョシュア・オファルトも。
そして沖縄公演中にミュリエル・ズスぺルギーも。

プログラム変更、配役変更でさぞ大変なことと案じていたファンに強力な助っ人の報が。
Aプロにアニエス・ルテステュ、ジョゼ・マルティネスの大型エトワールカップル。
Bプロになんと(元)エトワールの殿、ローラン・イレールが・・・
その他プルミエールのメラニー・ユレル、カドリーユのマルク・モローが投入されての開幕。

着席すると前方に東バの高岸直樹さんが、通路とお一人をはさんでNBSの佐々木会長の並びに。
その高岸さんに挨拶に小林十市さんが。
小林さんのブログによると、会場にはレニングラード国立バレエ団の名花イリーナ・ぺレンの姿もあったとか。後から詳しく友人に確認すると、お見掛けしていました。でもぺレンとは気づかなかった(笑)

さすが注目度の高いルグリガラ。客席も華やかですね。