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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

ルグリ特別全幕プロ「白鳥の湖」第一夜 ④

2007-08-19 11:41:29 | BALLET
第四幕

キャストは第二幕と同じ。
夜の湖。
白鳥たちの踊り。悲しみのオデット登場。ロットバルトの支配。

白鳥たちが去り、王子が走って現れます。
王子のソロ。これが見たかった・・・。
高いジャンプ、舞台を小さく見せる渾身のグランジュテ。
高速のシェネ。回転の軸がぶれず、感情がこもっているのに形は乱れず・・・。
かくあるべし、の古典の王子ソロ。
この域に達するのにはどれほどの才能・経験・精進が必要なのだろうか・・・と今日の出演者たちを思い浮かべながら、圧倒的なルグリのソロに酔いしれました。

ロットバルト登場。王子とロットが対角線上でグランジュテしながら擦れ違い、オデットを巡って対立する2人の力と力のぶつかり合いを迫力たっぷりに表現します。オデットを連れ去ろうとリフトするロット。そのオデットの手を離さずに王子が追いかけ、そのままパ・ド・トロワに。

このヌレエフ版を使っていますね。
ロットバルトの存在感が大きく、オデットを巡る善悪の2人の魅力的な男性の対立、という構図で、自身才能横溢するダンサーとして見せ場を増やし、男性ダンサーの魅力をアピールする改訂を行ってきたヌレエフならではの発想で、面白い。

戦いの中、ロットの羽を折る、王子。苦しみ、羽を押さえながら袖に消えるロットバルト。
最後は東バ版の愛の勝利シーン。
羽が腕に戻ったわ・・・と確認して喜ぶ王女。白鳥たちも戻ってきます。
湖に夜明けが訪れ、王子とオデットの愛が実り、幕。

これが当初の予定通り、若きエトワールエルヴェ・モローが出演して、エルヴェ、マチュー、ルグリ先生の3王子揃い踏みとなったらいかに眩い舞台となったことだろうと思うと残念な気がしなくもありませんし、本当の通し上演に比べてテンションの高さを出すのが難しいのも理解できますが、この趣向はこの趣向で楽しめるものでした。

こうなったら全幕が観たい・・・との願望は2日後の土曜日に満たされるという幸せ。
あと一つを残すばかりのルグリガラ。
チケットケースが一杯だった8月初めから思うとあっという間で濃い日々でしたが。
土曜日が終われば夏が終わります。



ルグリ全幕特別プロ「白鳥の湖」第一夜 ③

2007-08-19 10:21:36 | BALLET
第三幕



オディール: ドロテ・ジルベール
ジークフリート王子: マチュー・ガニオ
悪魔ロットバルト: ステファン・ビュヨン
王妃: 加茂律子
道化: マチアス・エイマン
司会者: 野辺誠治
チャルダッシュ(第1ソリスト): 長谷川智佳子、大嶋正樹
(第2ソリスト): 森志織、福田ゆかり、高橋竜太、氷室友
ナポリ(ソリスト): 高村順子、マチアス・エイマン
マズルカ(ソリスト): 田中結子、坂井直子、中島周、横内国弘
花嫁候補たち: 小出領子、西村真由美、乾友子、佐伯知香、高木綾、吉川留衣
スペイン: 井脇幸江、奈良春夏、後藤晴雄、平野玲

ここでも最初からマチアスくんが場を盛り上げます。
花嫁選びの舞踏会。王子マチューはルグリ先生ほどの押し出しはないが、美しく育ちの良い王子。
お約束のディベルティスマン、各国の踊り。
まずはチャルダッシュ。大嶋さんの鋭くキレのある踊りはやはり目を引く、長谷川さんをサポートでくるくる回すのはかなり前のめりに音をとっていて、ちょっとせわしなかったかも。
ナポリでマチアスが高く高くジャンプするのに息を呑む。
大体、この人は見知った踊りの重心を高く引き上げたところで演技をするので、この踊りってこんなだったっけ?と見直してしまう場面多々あり。
東バ一のチャームの持ち主、かわいい役どころならお任せ、のスペシャリスト高村さんと愛らしい微笑を交わしながらの幸せ感一杯の演技。ナポリは基本的にはテクニックを見せる踊りではないので、マチアスには物足りなかったかも・・・。
ピンクのブーツにいつも疑問を持つ(笑)マズルカでは中島さんのラインの美しさをチェック。
花嫁候補の踊りでは美しいが見所はないのが常ですが、主役級の小出さんがきれいな手首を見せてくれて場を引きしめています。
どの女性にも興味が持てないのです、とソフトに、でもキッパリとお断りするマチュー。がっかりして悲嘆にくれる母娘たち。
と、暗転、激しい音楽、怖がる道化。
スペインチームを引き連れてロットバルトの登場。
艶やかなダークグリーンのサテンの長いマントを翻すとオディールが。
ドロテはさすがに華がありますね。
マチュー、ドロテ、ステファンの並びは美しくて華やか。
期待高まる中、まずはスペイン。東バの中でも長身美形のソリストが踊るこのスペインのカッコよさには定評がありますが、この踊りのスペシャリスト井脇さんの切れの良さと柔軟な肢体を活かした反って扇で床を打つ演技も相変わらず冴えていて、ワクワクします。

そしてお待ちかねのパ・ド・トロワ。
マントを翻して、オディールを隠しながらエスコート。王子に歩み寄り、キメポーズで誘惑の視線を送るオディールに目を向けさせる、暗躍のロット。この場面はダンサーの個性や力量で際立つ役や役の意味が大きく変わって来る、演じ手の全てがさらけ出される見所なのですが、今回の3人は・・・。

ドロテは企みの視線をロットと交わしたりの目力はあるのですが、基本的に妖艶さや女性らしさ、というよりは陽性の活き活きとした生命感やキレのあるリズム感が持ち味なので、適役と期待されたほどにはオディールの誘惑に魅力を感じなかったかも・・・。
テクニックの強さを見せる、見せ場の32回フェッテでは、最初は3回に1回はダブルを入れてきたり来るぞ来るぞと思わせておいて、最後息切れしたのか最後の手前で降りてしまいました。土曜日の自分の主演の通しに照準を合わせて、今日は無理をしないことにしたのでしょう。

ロットは父親代わりの後見人的な立場なので、ベテランの色気のある男性が勤めるとロットとオディールの間に大人の愛人関係にあるカップルのような秘めた親密さが流れてドラマを盛り上げたり、キャラクテール的なベテランだとヤリ手の宰相のような政治力を発揮したりするのですが、スジェのステファンとプルミエールのドロテは年も近いので、2人の目配せは、女スパイドロテが「守備は上々よ」「了解」と同僚スパイのお仕事のよう。
ステファンはロットのソロもきれいに決めて、凄みを感じさせるにはキレイすぎ、ソフトすぎの風貌ではありますが、押さえた表情で、なかなか悪くないロットでした。

マチューはまんまとだまされる王子・・・でしたが、オディールが誘って王子が近づくといきなり拒絶、という手管を使った後には少し心が高ぶって次にオディールの手をとるときにはちょっと強引な感じで強く引き寄せたり、思いがけない若者の血潮を垣間見せて。
単にサポート下手、という説もありますがxxx。わたくしとしては演技との説を採りたいところ。
マチューのソロは複雑なジャンプアラベスクの連続など難易度の高い演技をきれいにこなしていて流石。ジャンプも高いしアントルシャもきれい。
ただ、マチューってとことん持ち味がソフトで難しいことを大げさにアクセントをつけずに淡々とこなしてしまうので、凄いことをしているのに全く凄く見えない・・・そこがマチューの凄いところ??

誓いを立てたところで高らかに嘲り笑うロット・オディール・スペイン軍団。背後の壁には苦しみ踊るオデットのシルエットが。騙された!
火薬が爆発、白煙が昇り、ロットの一団は姿をくらまします。
「ママ~!」との声が聞こえそうなマチューが王妃の膝にすがり、よろめきながら走り去り、悲嘆にくれる王妃と悲しみ慰める道化、王宮の人々が残されて幕。


ルグリ全幕特別プロ「白鳥の湖」第一夜 ② 

2007-08-19 09:48:55 | BALLET
第二幕



オデット: ミリアム・ウルド=ブラーム
ジークフリート王子: マニュエル・ルグリ
悪魔ロットバルト: ステファン・ビュヨン
四羽の白鳥: 佐伯知香、森志織、福田ゆかり、阪井麻美
三羽の白鳥: 西村真由美、高木綾、奈良春夏

ロットバルト登場。
この幕はパリオペ版。ダークグリーンと黒の衣装がカッコいい。パリオペ版のロットバルトは基本的に色悪の美味しい役どころなのです。スジェのステファンがどこまでその悪の魅力を発揮してくれるかが見所。
それがハッキリするのは3幕ですが。

王子が走って登場・・・って流石ルグリ先生!
走るだけでも王子!醸し出すものが違います。
気品・落ち着き・豪胆さ・思慮深さ全てを兼ね備えた古典の王子オーラがマブシイ・・。
発表会がいきなりホンモノの舞台になった感じが致しました。

ミリアム登場。
ちっちゃい・・・。このところ大きなオデットに目が慣れていたので(ロパートキナ、ポーリーナ、アニエス)ミリアムがとても小さく見えます。
長い手脚のダンサーですとその上腕を緩やかに動かして白鳥らしいムーブメントやエレガンスを醸し出すところ、ミリアムの動きはどことなくせわしなく感じられ(特にマイムは「こんな酷い目にあったのですわ、聞いて下さいませ~」のマシンガントーク!)るものの、気品と愛らしさは充分。
王女が身をやつした白鳥の精、というよりは白鳥のコスプレをしたプリンセス、と言う感じ。
神秘の白鳥、悲劇の主人公・悲しみの女王キャラとはまた異なる、姫な白鳥でこれはこれで魅力的。

パ・ド・ドゥの美しさはホゥ・・・とタメ息をついてみるばかり。
ちなみにこの日は全幕とあって、久し振りにオーケストラ(東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団)が入りました。指揮はバレエ音楽を知り尽くしたアレクサンドル・ソトニコフ氏。彼の姿をオーケストラ・ピットで認めると安心感で心が和みます。
この日はクラシック通のA氏との観劇でしたのでオケがはずしたらどうしようかとヒヤヒヤしていたのですが、いつになく熱のこもった演奏でチャイコフスキーの音楽の素晴らしさを堪能致しました。
ルグリ先生のサポートでミリアムの踊りが伸びやかに見えます。
指先まで美しいライン・・・。オペラグラスで見ると、ルグリ先生はミリアムの回転軸を上げた手で支えるときも、中指と人差し指だけにつかまらせて他の指はきれいに伸ばしたフォルムを保っているのですね。
オデットのソロも気品溢れる姫オーラでテクニック的にもほぼ完璧。
東バの4羽の白鳥の揃い方もパーフェクトで、この幕、バレエ・ブランの世界を心から楽しむことができました。
王子のソロが省略されていたのが唯一不満ですがxxx



ルグリ全幕特別プロ「白鳥の湖」第一夜 ①

2007-08-19 08:17:54 | BALLET
8月16日(木)
ソワレ、18:30から、いつもの(すっかり通いなれた道)五反田簡易保険ホールに。

ルグリガラ、全幕特別プロ、白鳥の湖3連日公演のうち、今回は幕ごとに主役が変わる趣向の16日と、パリでは多分見られないだろうと思われるドロテとルグリ先生が主役の18日をGET.
17日は東バの上野水香ちゃんとマチュー、という若い2人の全幕でしたが、3連日は流石に辛いのと、以前見たときの水香ちゃんの白鳥があまり好みでなかったことと、マチューはこの先何度も観られる機会がありそうだと思ったことなどでパス。
そう思った人が多かったみたいで、瞬殺でSOLD OUTの16、18日に対して17日はギリギリまで会場でもチケットが販売されていたようです。前売り段階でダメでも、直前に主催者に問い合わせると救済策がみつかることも多いので、バレエ公演にご興味があって、でもチケットがとれないから・・とお思いの方は是非トライなさってみて下さい。
ちなみに今回のルグリガラ全体、SOLD OUTで諦めた方も多かったようですが、当日券売り場に立見席が¥6000(だったかしら)で出ていました。20~30枚用意されていた模様。


第一幕



ジークフリート王子: オドリックベザール(左)
王妃: 加茂律子
道化: マチアス・エイマン(左中)
家庭教師: 野辺誠治
パ・ド・トロワ: マチルド・フルステー(中)、シャルリーヌ・ジザンダネ(右中)、アクセル・イボ(右)
ワルツ(ソリスト): 西村真由美、乾友子、高木綾、奈良春夏、田中結子、前川美智子

この幕をさらったのはマチアス!!
ジャンプが高い!超高速フェッテ!そしてなによりもちょっとおカマちゃんっぽいCUTEなキャラクターの役作りで演技が細かい!王子に話しかけたり、気弱な女の子にお花を渡して王妃に捧げるように後押ししたり踊っていないときでも大活躍。
そして圧巻のソロでは180度でしっかりと顔をつけながら加速するフェッテで衆目を集めていましたが、最後のキメで三半規管にキテシマッタのか、流石にとまらなくなってしまった様子で慌てて瀕死の白鳥ポーズで手をパタパタさせて収めていましたが、会場はそれを残念に思うというよりも、「よくここまでやった!」と温かく称えるムード。
この人、SBLでお手本を踊っていたときには隙がなくて(髪型も硬く・笑)どことなくクールで優等生タイプかと思っていたのに、まずAプロ「白の組曲」でアニエスの次の登場でも動じずに見事なテクニックをみせて度胸とテクニックで印象付け、Bプロ「ドリーブ組曲」ではミリアムに対する温かなエスコートでサポートの良さを期待させ、この全幕で演技力と観客を味方につけてしまうチャームを発散し・・・。
いや、全く今後が楽しみな逸材。ルグリ先生彼を連れてきてくださってありがとうございます
衣装は東バの派手派手な赤黄青の3原色を装着。

王子のオドリックは、登場してから最後にソロを踊る前まで、すっかり消えていました。
存在感なし。トロワのマチルドを主にエスコートするのですが、まるでマチルドを見ず、淡々と歩いていたまっすぐな背中が印象に残りました。傍らを行くアクセルくんがエレガントな造形でシャルリーヌを気遣いながらノーブルなマナーの良さを見せていたのは対照的。
最後の王子のソロは高身長を活かしてダイナミックさもありテクニック的には問題なし。
ルグリガラ3回目の成長振りを見せてはくれましたが、貴重な体格の男子に対する周囲の期待に応えていたとはちょっと思えない王子らしさの欠如が彼の課題。コンテは良くても古典の王子はまだ荷が重そうです。

トロワの3人は、スジェのマチルドはやはり踊りが端正。
難しいパも決して端折らずに決めてくるあたりとピケピルエットの高速回転の切れ味など、見ていて気持ちの良い踊り。
コリフェの2人はテクニック的にはまだ不安定な部分多々あれど、醸し出す雰囲気が柔らかくて良い。
シャルリーヌは上体の特に腕の使い方が実に滑らかで可愛らしさもあり、アクセルくんは個性的な面立ちなれど、身体のラインがきれいで何ともいえないロマンチックなムードを持っている。
この持ち味は強みでしょう。
トロワといえばエマニュエル・ティボ-くんの目の覚めるような演技を昨年のパリオペ引越し公演で見た記憶が新しいので、比べてしまうと・・・ですが。
成長期にある若手を見守るルグリガラならではの配役ですね