新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

紙流通業界の "slang"

2014-04-14 08:32:48 | コラム
"slang" とは「特定の社会や職業の通用語、専門用語」である:

ジーニアス英和にはそうなっている。先日、畏メル友の某氏と交信中に懐かしき紙流通業界の通用語を採り上げたので、この際に思い出せるままに可能な限り正確にあらためて列記しようと思った次第。紙流通業界とは、紙商の中にはその昔に社名や所番地とともに掲示されたいた電信略号に「元禄」となっていたほど歴史がある代理店もある。

厚司: 
印半纏か法被と同じだと思っている。言うまでもないかも知れないが、最早市中で見かけることはほとんどなくなった。前面に出る襟のところに店名が記されているあれのことだ。往年は新入社員はそれを着て倉庫番や発送係のような現場を経験した後に、事務所内に勤務するような方式になっていた。営業に出るのはそのまた先のことだった。

外交: 
これは基礎的な教育と訓練を経た者が「適当」と旦那またはオウナーに認められて、晴れて外回りの営業担当者になった際の俗称である。これは店内では次の番頭さんの候補の一人となったことと認識される場合もあったようだ。

付出し:
広辞苑には「売掛金の請求書」となっている。業界では毎月20日締め切りで請求書発行する際に、その締め切り日直前と言うか2日ほど前までに仕入れる時にその分を翌月の請求にして貰うこと」を条件とする買い方を指す。しかし、この方式を関西では帳端または帖端(チョウハ)と称していた。その根拠を尋ねると、「その了解の下の売りなので、帳面の端の方に記帳するからだ」と教えられた。

仕切り:
その得意先向けに売り上げを立てて、売掛金とすることを言う。仕切らなければ商品が動いても売掛金にならないから上記の付け出しとなると理解していた。

製造家:
確認したことはないが、メーカー、即ち製紙会社を指していると思う。最終のユーザーが「需要家」になる。

前替:
これもこの業界ならではの微妙な表現。値上げが非常に難しいこの産業界にあっては、メーカーからの値上げ通告を了承しその期日が過ぎた後でも、新値段ではなく前の値段で仕入れることを約束させる行為を言う。即ち、実質的な値上げ期日の先送りだ。即ち、「前替えで100トン仕入れる」ようなことを言う。

帳合:
「帳合」そのものは帳面に記入して売り上げを立てる事だ。だが、「帳合を~にする」となると、メーカーの代理店がAという紙商の得意先であるB印刷との間に成約した場合に、Aの立場を尊重して売り上げはA宛に立てるという意味になる。または「そこに売るのだったら、帳合は当店にせよ」という要求をすることでもある。

仲間:
紙を販売する同業者のこと。通常はメーカーから代理店を経て紙商という物流になり、代理店と紙商という製造業ではない業者を仲間と言うようだった。代理店でも紙商に売ることを「仲間売り」と言っていた。

府県商:
何時頃までだったか、各都道府県にある紙商のことをこのように称していた。今では「卸商」か「紙商」に変わっているようだ。しかし、江戸時代からの歴史がある名称だと理解している。

真物:
正常品を指す。即ち瑕疵はない製品のことだ。しかし、「正常な物流経路を経て来た紙」と言うことにもなる。その反対を「バッタもの」と言えるだろう。

アメリカとUKとのスペリングの違い

2014-04-14 07:28:13 | コラム
中央官庁名の英語表記はUK式スペリングだった:

何と言うことはないことだが、昨日テレビのニュースで厚生労働省の看板が見えた。そこには漢字表記の下に当然のように英語表記があった。これまでどういうスペリングをしているかは考えたこともなかった。念のため言っておけば「スペル」とすればカタカナ語になってしまう。

英語表記は "The Ministry of Health, Labour and Welfare"となっていた。知らなかった。「労働」はアメリカ式では "labor" と綴られる「中央」が "center" となるように。ところがUK式では労働は "labour" とアメリカ式ではない形になる。同様に中央も "centre" となっている。この他にもアメリカとUKでは異なる例はいくらでもある。

私の興味を惹いた点は我が国の中央官庁はUK式のスペリングを採用している点だった。確かにアメリカ語よりもUKの言葉が先にあったのだろうが、何故UK式に準拠したのかが面白い。1945年に中学で初めて英語を習った時にどちらの綴りで教えられたかの記憶は一切ない。だが、何時かの時点で両国間に違いがあると知った。

感想を一言記せば、「我が国の中央官庁はUK式の方が格調が高いとでも思っておられるのだろう」と疑った。だが、確かアメリカは我が国同盟国で安保条約もある。しかしながら、アメリカ人から「日本の官庁ではUK式を採用していて怪しからん」という不満を聞いたこともない。あるいは誰も注目していないだけかも知れない。

そうなると私が採り上げたい問題点は、「我が国の英語教育ではどちらの綴りを教えているのか」と「両国間に違いがあること」を教えているのかである。ヨーロッパは勿論UK式で、東南アジアに行けば香港、シンガポールはUK式だったと記憶している。中国と韓国ではどうなっているかなどはどうでも良いだろう。

W社の我が事業部に私が在職中に、ニュージーランド人でかのOxford大学のMBAである人がいた。嘗て部内の会議で副社長がホワイトボードに貼られたフリップ・チャート(「フリップ」はカタカナの造語だが)に "gray" と書いたところ、彼は立ち上がってチャートに向かって行き、憤然とした表情で "gray" を消して "grey" と書き直して、全員に拍手喝采された。

因みに、このワードのスペルチェックではUK式は修正が必要と表示される。当たり前か!