オバマ大統領の重要課題にTPPがあるだろう:
私はオバマ大統領の今回の我が国を始めとするアジア訪問が、自らの手で混迷化させてしまった対世界全体の外交の状態を何とか自国に有利に導こうと懸命な努力をしようとしているので、先ずは日本で成果を挙げる気ではと思っている。私はこの大統領は未だに我が国はアメリカが右を向けといえば素直に従う国だと認識しているような気がしてならない。今日までにどれほど事前の折衝が出来たかを知る由もないが、何となく「来るために来る」ような気がしてならない。
私は大統領は恐らく「対日関係の悪化というか弱体化の大半の責任は日本側にある」と信じておられるのではないかと疑っている。しかし、自らの力不足も徐々に認識し始めておられて、そこには焦りもあるだろうとも疑っている。しかも、対ロシア関係は明らかに分が悪いのではないか。
オバマ大統領は以前から輸出振興を唱えておられ、それが為にもTPPに対しても積極的な姿勢を採られ、何としても我が国を加盟させようと努められたと考えている。だが、大統領は輸出国としてのアメリカの力量不足の原因が、自国の労働力の質とその製品の対外的競争力不足にあるという重大な点に関する認識がもしかして不十分なのではないのかとすら思って見ている。
だが、何としてもTPPで我が国に譲歩させようとしている姿勢には疑問を感ぜざるをえない。関税に関して言えば、牛肉や農産品などについては既にそれなりの地盤を確立しており、今更税率を引き下げたからと言って飛躍的に増えていくものかどうかは疑わしい。私が長年お世話になってきた紙パルプの分野に於いても、我が国にはない製品がアメリカの原料の優位性を活かして無税で十分に入っているし、現状以上の飛躍など考えられない。
しかも長引く全世界的な不況下にあっては先進工業国は言うなれば全て過剰な生産設備を抱えており、その活路を輸出に求めざるをえない状況にあって苦戦している最中だ。そこに参入した最新鋭の生産設備で競争力をつけた新興勢力との激しい競争に直面している。その攻勢を紙の分野では関税で閉め出していたのが保護政策を採っているアメリカだということを、まさか大統領はお忘れではないと思う。
ここで話題を変えるが、22年間アメリカの製品を我が国に輸出する仕事をしてきて痛感したことを挙げておきたい。先ずはアメリカの文化というかシステムには「何をやっても良いがあれとこれは例外として認めない」とでも言えば良い自由放任主義がある。一方の我が国では「自由にやることは認めないが、例外として認められる分野ある」という感覚で物事が動いている面がある。
即ち、アメリカでは「輸出でも輸入でも何でも、企業の裁量で自由に実行して良いが、例外として制限や禁止条項は設けておく」という感覚である。我が国はその対極にある文化で「輸出も輸入も禁止だが、例外としてこれとこれは許可する」という、言わば閉鎖的な形が採られていると感じていた。即ち、これだけの文化の違いがある市場に対して、自国の都合と理屈で押しかけていては容易に成功しないということだ。この点の認識が不十分で失敗した例は多いと思う。
これだけでは具体性に欠けると思うので、実際に経験した我が国の禁止的な文化の例を挙げてみよう。ご存じの方もあるかと思うが、牛乳パック用の紙はアメリカを主体として全て輸入紙で賄われていると言って誤りではない。そして、我が国では1960年代から牛乳瓶が徐々に紙パックに置き換えれ、今や懐かしき牛乳瓶は時々見かけるだけになっている。
ここには「乳及び乳製品の成分規格に関する省令」があって、W社が本格的に参加した1970年代にはこの乳等省令で「牛乳の容器はガラス瓶に定められ、例外として紙パックを認める」とされていた。紙パックに切り替えていく乳業会社は「例外容器使用申請」を厚生省(現在の厚労省)に提出して許可を得ていた。この省令は例外だった紙パックが、市場の過半数を超えても続き、乳業会社は申請に際してはパックに使用する輸入紙と表面にラミネートされているポリエチレンの見本の添付が義務づけられていた。なお、省令は既に改正されている由だ。
我田引水的だが、我が国の市場に進出しそこで確固たる地位を築き上げるためには、その市場を理解するだけではなく、関連する規制というか法律を認識していないことには、思いがけない難問に出会うことになってしまうものだ。既に市場に受け入れられ対抗馬もない製品でも、その申請のための乳等省令が求める企画の見本を常時用意しておかねばならなかった。
牛肉の分野では嘗て狂牛病の問題が発生した際に、我が国の業界では輸出者のアメリカの畜産業界に全頭検査を厳しく要求し、大きな論点になっていた。アメリカ側は我が国の要求を過剰として反対した。これも我が国の例外を認めない文化と厳しい衛生面における安全性の追求をアメリカ側が容易に理解できずに抵抗していたことが、今日オーストラリアの後塵を拝している原因になったと私は解釈している。
要するに、自国の利益の確保と都合を優先して強硬に押すことだけでは、相手国の市場における地位を確保できない危険性があるということだと、私は経験的にも考えている。私はアメリカの全産業の主力の企業がどれほど日本市場で最大乃至は有力なのシェアー・ホールダーになることを狙っているのかと問いたい。その際に問題となるだろう労働力の質と品質の問題は既に繰り返し指摘した。
仮に関税が撤廃されたといって、穀物や米などの農産品や自動車以外にも、ロッキー山脈の東側から、それでなくとも長引くデフレだけではなく供給過剰に悩む団業界が多い我が国に向けて、本格的に輸出に励む気があるのかと問いたい。我が安倍内閣はオバマ大統領の立場を理解しておられるだろうが、ただ単に局面の打開か最悪の場合の妥結を目指すのではなく、飽くまでも我が国の立場を貫く主張をして貰いたいと望むものだ。
私はオバマ大統領の今回の我が国を始めとするアジア訪問が、自らの手で混迷化させてしまった対世界全体の外交の状態を何とか自国に有利に導こうと懸命な努力をしようとしているので、先ずは日本で成果を挙げる気ではと思っている。私はこの大統領は未だに我が国はアメリカが右を向けといえば素直に従う国だと認識しているような気がしてならない。今日までにどれほど事前の折衝が出来たかを知る由もないが、何となく「来るために来る」ような気がしてならない。
私は大統領は恐らく「対日関係の悪化というか弱体化の大半の責任は日本側にある」と信じておられるのではないかと疑っている。しかし、自らの力不足も徐々に認識し始めておられて、そこには焦りもあるだろうとも疑っている。しかも、対ロシア関係は明らかに分が悪いのではないか。
オバマ大統領は以前から輸出振興を唱えておられ、それが為にもTPPに対しても積極的な姿勢を採られ、何としても我が国を加盟させようと努められたと考えている。だが、大統領は輸出国としてのアメリカの力量不足の原因が、自国の労働力の質とその製品の対外的競争力不足にあるという重大な点に関する認識がもしかして不十分なのではないのかとすら思って見ている。
だが、何としてもTPPで我が国に譲歩させようとしている姿勢には疑問を感ぜざるをえない。関税に関して言えば、牛肉や農産品などについては既にそれなりの地盤を確立しており、今更税率を引き下げたからと言って飛躍的に増えていくものかどうかは疑わしい。私が長年お世話になってきた紙パルプの分野に於いても、我が国にはない製品がアメリカの原料の優位性を活かして無税で十分に入っているし、現状以上の飛躍など考えられない。
しかも長引く全世界的な不況下にあっては先進工業国は言うなれば全て過剰な生産設備を抱えており、その活路を輸出に求めざるをえない状況にあって苦戦している最中だ。そこに参入した最新鋭の生産設備で競争力をつけた新興勢力との激しい競争に直面している。その攻勢を紙の分野では関税で閉め出していたのが保護政策を採っているアメリカだということを、まさか大統領はお忘れではないと思う。
ここで話題を変えるが、22年間アメリカの製品を我が国に輸出する仕事をしてきて痛感したことを挙げておきたい。先ずはアメリカの文化というかシステムには「何をやっても良いがあれとこれは例外として認めない」とでも言えば良い自由放任主義がある。一方の我が国では「自由にやることは認めないが、例外として認められる分野ある」という感覚で物事が動いている面がある。
即ち、アメリカでは「輸出でも輸入でも何でも、企業の裁量で自由に実行して良いが、例外として制限や禁止条項は設けておく」という感覚である。我が国はその対極にある文化で「輸出も輸入も禁止だが、例外としてこれとこれは許可する」という、言わば閉鎖的な形が採られていると感じていた。即ち、これだけの文化の違いがある市場に対して、自国の都合と理屈で押しかけていては容易に成功しないということだ。この点の認識が不十分で失敗した例は多いと思う。
これだけでは具体性に欠けると思うので、実際に経験した我が国の禁止的な文化の例を挙げてみよう。ご存じの方もあるかと思うが、牛乳パック用の紙はアメリカを主体として全て輸入紙で賄われていると言って誤りではない。そして、我が国では1960年代から牛乳瓶が徐々に紙パックに置き換えれ、今や懐かしき牛乳瓶は時々見かけるだけになっている。
ここには「乳及び乳製品の成分規格に関する省令」があって、W社が本格的に参加した1970年代にはこの乳等省令で「牛乳の容器はガラス瓶に定められ、例外として紙パックを認める」とされていた。紙パックに切り替えていく乳業会社は「例外容器使用申請」を厚生省(現在の厚労省)に提出して許可を得ていた。この省令は例外だった紙パックが、市場の過半数を超えても続き、乳業会社は申請に際してはパックに使用する輸入紙と表面にラミネートされているポリエチレンの見本の添付が義務づけられていた。なお、省令は既に改正されている由だ。
我田引水的だが、我が国の市場に進出しそこで確固たる地位を築き上げるためには、その市場を理解するだけではなく、関連する規制というか法律を認識していないことには、思いがけない難問に出会うことになってしまうものだ。既に市場に受け入れられ対抗馬もない製品でも、その申請のための乳等省令が求める企画の見本を常時用意しておかねばならなかった。
牛肉の分野では嘗て狂牛病の問題が発生した際に、我が国の業界では輸出者のアメリカの畜産業界に全頭検査を厳しく要求し、大きな論点になっていた。アメリカ側は我が国の要求を過剰として反対した。これも我が国の例外を認めない文化と厳しい衛生面における安全性の追求をアメリカ側が容易に理解できずに抵抗していたことが、今日オーストラリアの後塵を拝している原因になったと私は解釈している。
要するに、自国の利益の確保と都合を優先して強硬に押すことだけでは、相手国の市場における地位を確保できない危険性があるということだと、私は経験的にも考えている。私はアメリカの全産業の主力の企業がどれほど日本市場で最大乃至は有力なのシェアー・ホールダーになることを狙っているのかと問いたい。その際に問題となるだろう労働力の質と品質の問題は既に繰り返し指摘した。
仮に関税が撤廃されたといって、穀物や米などの農産品や自動車以外にも、ロッキー山脈の東側から、それでなくとも長引くデフレだけではなく供給過剰に悩む団業界が多い我が国に向けて、本格的に輸出に励む気があるのかと問いたい。我が安倍内閣はオバマ大統領の立場を理解しておられるだろうが、ただ単に局面の打開か最悪の場合の妥結を目指すのではなく、飽くまでも我が国の立場を貫く主張をして貰いたいと望むものだ。