新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカの会社に見る責任論

2014-05-09 13:58:41 | コラム
I’m not paid for that.

これを言わば意訳で日本語にしたら「その分の給与は貰っていない」となるでしょう。

これはアメリカの会社での責任論とでも言えることです。屡々アメリカの会社を訪れた方が「アメリカ人は権利意識が強いので、仕事が途中でも定時に帰ってしまう」と定時で帰ってしまう現象を誤解して唱えていることの原因です。

一般の事務員ではない担当する範囲が広く責任も重くある程度以上の給与を取っている連中は、その日にやり遂げねばならないことが17時を過ぎでも残っていれば終わるまで帰りません。そんな中途半端なことをして収入に見合う実績を挙げられなければ、何時失職か格下げされるかを解っているからです。そういう難しい地位に望んで就いたのですから、帰ってしまう訳がないのです。

定時で帰ってしまう人たちはそのようなサーヴィス残業などする義務もないし(本社機構にいる者は残業手当はないのが普通だと思っていますが)そんなことのための給与を取っていないのですから、さっさと帰ります。それを見てそそっかしい人が「権利意識の表れ」と誤認識したのでしょう。貰っている(低い?)給与の範囲内だけの仕事をするという意識です。

即戦力として事業本部長(GM)に採用されたような連中は「何が出来るからこれだけの給与が欲しい」という話し合いをして入ってきていますから、出来ると称したことは何としてもやり遂げねばなりません。そうでないと、翌年の昇給などあり得ないのですから。GMとても同じことで、上層部に約束した実績を挙げねばその地位を保てないのです。

である以上、彼等は朝は6時頃から出勤するし、夜は仕事をやり終えるまで帰りません。土日の出勤も当然です。何故ならば"They are paid for that."だからです。彼等の仕事の実績と収入は常に見合っていなければならないどころか、やると言った以上のものを残さねば翌年の昇給どころか地位が危ういことすらあり得るのです。

こういう仕組みになっている世界ですから、同じ部門の他のマネージャーの担当範囲内に踏み込んで助けて上げることなどする訳がないとご理解頂けるかと思います。秘書にしても「判断業務」をするだけの給与を貰っていないのですから、ボスの不在中に得意先と商談などする理由などないのです。言うなれば、全てが個人単位であり、収入の範囲内で働き、各人の責任で担当業務が遂行されます。

それでは個人の負担が多すぎないかとの懸念はあるでしょうが、全て自分の責任でやらねばならないのはかえって気楽でした。他人は頼りに出来ないし、またすべきではないと解れば、自分だけを頼りに仕事が出来るものです。アメリカの企業がこういうシステムで動いていると承知した上で飛び込まないと、後で臍を噛むことになりかねないのです。

日本創成会議の発表

2014-05-09 08:48:20 | コラム
896自治体に消滅の危機が:

幾つかの地方都市勤務の経験がある身内が以前に言ったことは「地方の都市に行くと駅前にあるのは金融・証券、生保・損保、JA関連の団体のビルばかりで、製造業が自前のビルに入っている例が少ない。これが何を意味するかを考えて見よ」だった。別な見方をすれば、大きな需要・消費地域に遠いところに製造拠点を設けると、我が国の物流の形では運賃が過剰にかかって採算がとれないということに通じるのだと思う。

私が1990年からW社の本社事業部で「日米間の企業社会の文化の違い」のプリゼンテーションを始めた時に、補足説明として採り上げたのが「我が国は過剰とも言える中央集権ないしは東京一極集中が問題である。これを表す例にJRでは全ての東京発の列車を『下り』と呼び、その反対を『上り』と呼んでいる」だった。さらに、未だに「東京に行けば何とかなるだろう」と信じて、地方を捨てて上ってくる若者が多いのだ」とも述べた。

また、我が国を簡単に説明するために言ったのは(何方かの受け売りだったかも知れないが)「我が国の国土はカリフォルニア州よりも狭い。その70%見当は山か山岳地帯で人が住むには適していない。しかも残った30%の居住に適した地域には東京・大阪・名古屋・仙台があり、ほとんど太平洋沿岸にある。これでは東京の人口密度が高くなるのは当然だ」ということだった。

その国土内にこれほどあちこちに新幹線を設けて中央への交通網を発達させれば、中央に集まる人が多くなってくるのは自明の理ではないのか。何とかなると錯覚して上京する若者が後を絶たなければ、限界集落が増えてくるのも不思議ではないのではないか。その上に25%にも達する高齢化があるのだ。

私はこの度の日本創成会議の発表の内容というか、鳴らされた警鐘は誠に尤もだと思っている。だからと言って人も集まらない輸送の便が好ましくない地方で新規の製造設備への投資をする企業が増えるだろうか。極めて疑わしい。安倍総理は女性の社会進出と登用を推進されているのは結構だとは思うが、現在の保育所や産休の制度を考えると産んでで育てていく余裕がない女性が増えるのではないかと、秘かに危惧している。

だが、私はこの大問題を解決する方法は到底思い付かない。安倍総理以下の閣僚に知恵を絞って頂きたいのだ。