新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

経験的アメリカの会社論

2014-05-10 15:55:33 | コラム
アメリカの企業の営業形態は名店街:

アメリカの会社は個人の能力を基本に置いて成り立っているとは既に述べた。そこで、各個人がどのように機能しているかを分析してみよう。先ず逃げを打っておけば、私は紙パルプ林産物業界で僅か2社にしか在籍したことがないので、以下に述べることが一般論であるとまで保証できる確信はないが、本筋を外していないと思っている。

W社の我が事業部はCEOのジョージが大家主で総責任者である壮麗にして巨大なアメリカ建築学会賞に輝く本社ビルの一角を借りて、我が生涯の最高の上司だった副社長兼事業本部長(VP&GM)が加工原紙の輸出を主体とする店を張っていた。他にはパルプや洋紙や段ボール箱と原紙を商う店もあれば、林産物の分野では丸太や製材品や合板等の店が軒を連ねていたといえば解りやすいだろうか。

即ち、それぞれの店舗は大家主が提供する製品を独自の商法で売り上げを伸ばし利益を挙げて家賃を払った上で、販売員であるマネージャーたちに給与を支払っているのだ。私はこの形式を名店街のようなものであると長年説明してきた。そう言う根拠は、各店舗の責任者、即ちVP&GMもまたその権限で独自に即戦力となる販売員を雇用し、その店舗の敷地を又貸しして個人商店を営業させているのだ。

会社自体の営業の大方針と目標等は大家主からVP&GMに指示されるが、どのような方法で目標を達成するかの細目までには踏み込まないと理解している。その大家主の意を帯した各VPは営業担当者に職務内容記述書を与えて達成すべき目標も叩き込むが、達成する手段を指示することは希である。何故ならば、即戦力として契約して雇い入れたのであるから一任しても結果を出すと期待しているからだ。

私自身の経験と言うか実感を語れば、私なりに東京事務所に自分の店を出して、任せられた以上は自分なりの手法で結果を出せるよう全力を注ぐ以外なかった。余談ではあるが、東京には本社の各事業本部からの出店が数多く出ているので、マネージャーの人数はいるが、同じ事務所内にいても、仕事の内容には何ら共通する点がないので、横の連絡などは先ず不要だった。

極端に言えば、隣のオフィスにいる者が何時出勤するのかどころか、何処で何をしているかなどには関心を持つ暇さえ無かった。それは業種が異なる商店が偶々隣り合っているだけだから、当然のことである。例えば、私が八百屋で隣が文房具屋であれば、相互の情報交換にさしたる意義はないということ。

即ち、東京事務所は即戦力として雇用された営業担当者が、それぞれ異なる商品を商っている個人商店の集合体なのである。私はこの形を名店街方式と見なして、アメリカの会社を説明する手段としてきたのだ。見方を変えれば、この方式であれば、4年制大学の新卒者が採用されて直ちに店を張るのは難しいし、会社側も彼等を育てて使っていればそのための時間がかかり過ぎて、競争能力が低下するということにもなる。

ここで触れておかねばならないことは、VP&GMの職務というか職責である。彼等は店舗の維持・保全・近代化・大家主からの製品の購入の確保、営業、経理、総務、人事(採用から査定から馘首まで)、輸送、在庫管理等々の全ての責任を負っているということ。しかも、多くのVP`&GMは彼等自身が担当する得意先と地域を持ち、その点では各マネージャーと同じような責任を負っている場合があるのだ。言うまでもないが激務である。

この名店街形式は私の頭の中では整理されて良く解っているつもりだが、余りにも我が国の企業社会の文化と異なっているので、解説しても直ちにご理解願えない場合が多かった。その際には「これ即ち、日米企業社会間の文化の違いの典型的な例で御座います」と言うしかなかった。

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