新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

海外における生存競争の激しさ

2014-05-29 07:56:39 | コラム
だから容易じゃないと言ったじゃないか:

27日夜の対キプロスのサッカーのゲームの結果は、テレビ局御用達の解説者どもが何を言おうと惨憺たる出来だった。中でも悲惨だったのが、散々マスコミに持ち上げられて鳴り物入れで(鳴り物を入れたのはマスコミだ)ACミランに移籍して何の成果も上がっていない本田圭佑の不出来だった。武田という芸人に成り上がった元日本代表は事前の合宿が厳しすぎて疲れていたと抜かした。笑わせるな。

これまでに私は何度も欧米諸国に進出するというか、その人自身の職業で海外に出て行くことがどれほど大変か、異文化の中に出て行って評価されるほどの実績を築くことが、精神的にも大きな負担になると指摘し続けて来た。マスコミは如何にも期待されて優遇されるかの如くに言うが、それは高額な年俸に対する期待度ないしは見合うだけの成績を残さねばどういうことになるかを知らないから言っていると考えている。あるいは承知で言っているのであれば、罪が深いが。

それどころではない。そこに待っているのは事前に想像した以上に苛烈な生存競争があるのだ。それが目に見えることもあれば良い方で、全く考えてもいなかった方向から襲ってくるのだ。その激しさは言葉が解る程度では凌ぎきれない場合が多々あると思っていて良いだろう。

悪い例を挙げてみれば、野球における今負傷で離脱している阪神の西岡と何で出ていられるのかが不明の低打率の福留、消えかかっているヤクルトに戻っているのか岩村等のMLBからの出戻りである。帰国してからの彼等に、出て行く前の輝きがあるか。ないじゃないか。あの世界での生存競争に潰されたか自滅したと私は見ている。

MLBは今やスペイン語系の名字の選手ばかりになってしまったと言うか、アメリカ人だけではない連中が圧倒的でだが、我々から見れば言わば「外人」のゲームの世界である。そこに我が国から進出すれば「外国人」が彼等の権益を侵しに来たと捉える者がいるかも知れないと、私は思っている。そこで無邪気に生存競争をするのが容易ではない。

さて、本田圭佑である。あのゲームを見る限り、彼とマスコミが賞賛したマンチェスター・ユナイテッドに迎えられたが監督が替わって補欠扱い以下にされた香川真司の出来は、情けないと言う前に気の毒にすら思わせられた。極言すれば「彼等は実質的に生存競争に敗れた」のである。それはあるいは監督の不公平な起用のためかも知れないが、使って貰えなければあのような出来と言うか仕上がりになってしまうのだ。

ここまではスポーツの世界の話しだが、かく言う私も20年以上も日本が勤務地であったとはいえ、アメリカ人の会社で如何にして生き残るかをイヤと言うほど経験してきた。経験したから言うのであって、上記の連中が苦しめられ懸命に生存しようとしてきただろうと、勝手に想像している。だが、結果が出ていないではないか。イタリアから来た海外経験がない監督さんは「ザックジャパン」などと戯れ言を言われているだけでは、その点が解るのだろうか。

ところで、その何とかジャパンである。私は何度も「本田中心のティームを作ってしまった以上、香川真司は活かしようがない」と、監督の方針を批判してきた。もっと解りやすく言えば「あの監督を評価していない」のである。その本田がイタリア人とアフリカ系中心のACミランに入って、極端に言えば腑抜け状態にされて帰ってきたのだ。

恐らくザケローニさんはそのくらいはお解りだろう。だが、最早事ここまでに至れば(W杯は来月に開催されるのだ)本田中心ではないティームに変更出来る時間的余裕はない。そこに未だに「サプライズ」という枕詞をつけられた大久保を入れようと誰を使おうと、杖とも柱とも頼む本田があの状態では極めて難しい局面ではないか。協会もそれくらいは解っているのではないか。

マスコミは未だに戦後間もなくの頃に「喜んで下さい。我が社もアメリカに輸出出来るようになりました」と言って中小企業の社長さんが誇らしげに語っていた「海外進出は素晴らしい」と喜び合っていた時代の感覚から残念ながら抜けられていないのだ。外国進出は勿論結構なことだ。

だが、結果がどうなるか、そこのでの競争とは如何なるものかくらいは明快に伝えるべきではないか。何度でも言うが、言葉が出来る程度では切り抜けられない世界だと言うべきだろう。Darvishは渡米後直ぐに「異種の競技をやっているのかと思った」と言ったではないか。しかし、ビジネスの世界を見よ。アメリカではHondaやSonyをアメリカの会社だと本気で信じている者が沢山いるほど成功しているではないか。

私は「文化の違い」論者だが、それ以外のものすらあるのだが、その点を明らかに書くことは問題発言になりかねないので、御身大事に一先ず避けておくことにする。

最後にザケローニさんに望むことは「短期間に本田と香川を海外の呪縛から解放すること」である。彼は日本に住んでいないようだから、その点を認識しているのかな。