新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

前田健太がDodgersと契約した

2016-01-08 08:44:37 | コラム
年俸3億円が安いか高いか:

私にはそれにしてもDodgersはかなり厳しく買い叩いたものだという印象がある。彼がそれほどアメリカはMajor League(MJB)に行きたかったことを示す金額だと思う。ここでは「出来高払い」の金額は除外して論じている。私は球速が150 km台のMLBにヒスパニック系の投手が多くなったことも、前田健太の評価があの程度になってしまった一因だと思っている。その一因を論じる前に「アメリカの企業に移る」ということが如何なる意味を持つかをあらためて考えてみよう。

これはただ単にアメリカはMLBに行って、日本でNPBでやってきたのと同じ野球が出来るものだと思わない方が良いと思う。これは野球を見ておられる一般の方にも是非とも知っておいて貰いたい違いが"baseball"と「野球」の間には存在し、それ以外にも「異文化(言語・風俗・習慣・思考体系を言う)の中で過ごす」という、思ってはいたが「これほどまでとは知らなかった」という見えるようで見えない意外に大きな負担を背負っていく生活をしていかねばならないのだ。

マスコミ的には「マウンドの高さや硬さが違う」であるとか「アメリカのボールは滑りやすい」に加えて「中四日のローテーションの過剰負担」があることが負担となって、肘や肩を痛める危険性がある等が重要な克服すべき課題となるだろう。それも極めて尤もである。

だが、前田君が先ず驚かされるだろうと予測できることに、MLBとは言わないまでもヒスパニックも含めた白人たちに加えてアフリカ人たちの体格の物凄さ、就中骨格の逞しさというか素晴らしさには圧倒されるだろう。普通に我が国で暮らしていれば彼らと所謂裸の付き合いをすることはないだろうが、私は彼らの中に入って東洋人である自分と彼らの違いに驚いて劣等感すら覚えた。ここでお断りしておけば、私の周囲にいたのは普通のビジネスマンであり、私自身は日本人として所謂「良い体」と言われる部類だったから言うのだ。

そういう優れた体格である連中が我が国より以上に科学的である方法で鍛え上げてきて(多くのヒスパニックやアフリカ系は科学的に鍛え上げられていないかも知れないが、生まれ持った運動と身体能力に優れていることは既に多くの実例で証明されている)いるのだから、その劣勢を文化の違いの克服とともに野球の実技でも凌駕していかなければ生存できない社会だと、前田君他のMLBを目指すNPBの志願者がどれ程認識出来ているだろうか。

かく申す私も2社で合計22年半を異文化の中で、全てがその我々とは比較にならない体格と既にそれに基づいて設計された、我々から見ればあまりに身体的な負担が大きい仕事の手順の中に入って生存のために「身を粉にして働く」などという生易しいもの以上に物理的に動き続けねばならない生活を、何とか切り抜けてきたのだ。そこには野球等の運動における身体能力を争う競争はないが、併せて頭も出来る限り使わないと、時には突然の「馘首」が待っている危険性すらあったのだ。これは社会通念の違いでここでは詳細に泣論じない。

もっと注意すべきは、そこにある評価の基準は時には計数化された「結果」のみが評価の基準であり、「結果は芳しくなかったが、そこに至るまでの中間で良くやっていたではないか」という温情的な査定はないのである。「出来た」か、「出来なかったか」の基準しかないない世界である。時には自分でも良く解る結果が出るので諦めがつきやすいが、1年365日、その与えられた課題に挑み続けねばならない生活の苦しさは、やって見るまで解るまいと思う。

そこで、前田健太君の技量だが、これまでにMLBを実際に見て、今ではテレビ観戦のみになってしまったが、あの程度の直球の速さの投手などはそこには掃いて捨てるほどいる。変化球でも彼よりもはるかに球速があって変化すると見てきた。彼にあっても何事につけても大雑把な白人とヒスパニック系の投手にないものは「精密且つ緻密な制球力」であろう。シアトル・マリナーズでは岩隈久志が絶妙な低めのコントロールで生き残っている例を見ても、前田健太はそこを目指すのが最善の生き残り策ではないかと考えている。

それ以外に問題点ありとすれば、仮令通訳が付いていて当面言葉の問題が何とかなっても、どれほど早く異文化に慣れていくかが重要であろうと経験上も指摘する。これら全てを克服できれば、3億円が良い買い物(good buy等という)だったと立証できるだろう。