新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

YM氏と懇談した #2

2016-01-26 13:21:08 | コラム
アメリカの経済を考える:

昨日採り上げたYM氏との語り合いで採り上げたアメリカの景気をもう少し詳細に論じてみた。

YM氏にアメリカの景気動向の見方を尋ねたところ、私の長年の主張である「ロッキー山脈が東と西の経済圏を分けている」と同じで「アメリカは広過ぎて地域ごとに景気の様相が変わる。特に西海岸と東海岸では別の国の如くである場合すらある」と言う。つまり、『アメリカの景気』として一言で語るのは無理だ」ということ。その通りだと思う。私は以前にアメリカの経済はロッキー山脈の東側が70%で、西側が30%と指摘したことがあった。

我がW社はその所有する森林が主にアメリカ西北部のワシントン州とオレゴン州にある為、その製品を材木であれ紙パルプであれ、ロッキー山脈を越えて中西部から東部に売るのは輸送経費の面から見ても合理的ではなかった。即ち、所謂”Pacific rim countries”に向けて輸出するのが最も理にかなっていたし、その国々の中でも我が国を主たる販売先としたのは当然だった。

W社の本社があるのはワシントン州で(ワシントンDCではない、念のため)私の長年の馴染みだった西海岸地域にはカリフォルニア州のナパヴァレーのようなところもあるが製造業が弱く、輸出品目にしたところで私の在職時には木材製品や紙パルプが主体であるかの如くだったし、動物の飼料である干し草やフレンチフライの素材といったような一次産品に属するものばかりだったものだった。

この辺りを上智大学経済学部の緒田原教授(当時)が「それではアメリカはまるで我が国の植民地のようではないか」と評したのが忘れられない。東海岸からの日本向け輸出が輸送距離と航海日数等で不利な面が多く、対日輸出が不振なのは我が国の責任ではない面が多々あるが、為政者にはこういう実態が解っていないのか、知っていて知らん振りで「輸入を増やせ」と押しつけたのかまでは私には解らない。

アメリカの嘗ての自動車メーカーの本拠地だったデトロイトは五大湖の下のミシガン州にある。そんな場所から極東向けに売ろうということ自体が既に輸送面でハンデイキャップを背負っており、それに加えて質の低い労働力で生産するのだから、自動車産業が国際市場での競争力を失ったのは仕方がなかったのではないか。また、アメリカの大手製紙会社、例えば世界最大のInternational Paperは主力工場が全部東部か南部にあったので、極東向けには西海岸まで貨車輸送するか大西洋岸のジョージア州サバナ(Savannah)港から積み出すしか手段がなかった。

ボーイングは我が国向けには最大のメーカーの一つだが、最後の仕上げをする工場はシアトル空港の北にある「ボーイング・フィールド」なのだ。そこから出荷するといっても船積みする訳ではなく空を飛んでいくんだから、何のハンデもないのだ。また、アメリカは中国の製紙産業向けには世界最大の古紙のサプライヤーである。だが、その積み出し港は西海岸以外にニューヨーク港もあるのは面白い現象だと思っている。即ち、中国の製紙産業が不振になればアメリカの古紙業界も低迷するということだ。

以上、やや雑ぱくに纏めたが、アメリカの経済というか景気の消長は西と東かまたは南部と分けて論じる必要があると言えるということだ。