新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

11月16日 その2 アスリート・ファーストは疑問だ

2016-11-16 13:54:51 | コラム
何故「観客様ファースト」ではないのか?

去る13日(日)に約1年振りで横浜のDeNAベイスターズが本拠地にしている横浜スタジアムに行ってきた。ここはその昔「横浜公園平和野球場」というせこい、失礼、古色蒼然とした野球場だったものを、1978年に人工芝の言うなれば近代的なプロ野球の試合も出来るスタジアムに改装したものである。この球場の特色はその敷地の狭さに合わせたのか、途中からスタンドが急勾配になってフットボールのような球技を観戦するのには好都合に出来ている珍しい施設である点だ。因みに「フットボール」とは俗に言うアメリカンフットボールのことだが。

遠慮なく言えば、フットボールのような球技は、と断言する前にサッカーもラグビーでも同様であるが、高い位置から俯瞰するように観戦する方が全体の動きが良く見えて解りやすく興味も増すものだ。私は横浜市がそこまで考えてあの球場を造り直したとは思えないが、好ましく出来ているのだ。但し、齢83歳ともなって、その前に3度も心筋梗塞を経験して痛めつけられた身には、あの急勾配を登っていって良い席に座るのはかなりな負担だったし、迂闊に手洗いでも立てば(下れば)登り直すのに苦しめられた。

ここまでは俗に言う「横スタ」を実質的に褒めてきたが、開場後40年近くの年月を経た施設はやや時代遅れであり、我が国のこういう設備にありがちな「ここをもう少し予算をかけてこうしておけば」という辺りを全て予算をかけてこなかった為に、観客にとっては余り快適とは言えない物になってしまっているのだ。しかも、もしも私の記憶違いか聞き違いでなければ、2020オリンピックの野球の本戦をここでやるはずだ。

ズバリと言えば「アメリカのスタジアムしか知らないアメリカ人がやってきたら驚くだろう」と思うほど「観客様ラスト」なのである。恥ずかしいとまでは言わないが、手直しをする必要がある箇所が多過ぎる。少なくとも、あの内野スタンドの最上階まで全員に歩いて上がれというのは一寸不親切だろう。現にあのスタジアムで散々フットボールの試合をやってきた者は「へー、そうなんだ。知らなかった」と言っていた。それでは「アスリート様ファースト」だけである。

私はアメリカでシアルでは今はもう取り壊された「キングドーム」の他にも、現在はイチロー君が在籍していた「シアトル・マリナーズ」の本拠地である「セーフコフィールド」、ワシントン大学のフットボール専用の7万人収容の「ハスキー・スタジアム」には何度も行ってきた。サンフランシスコでは今や野球はやっていないような「キャンドルステイックパーク」でもフットボールを見てきた。カリフォルニア州パサデイナのRose Bowl Parkは9万人収容だが、楽に席まで入って行けた。何処でもスタンドを息も絶え絶えで上がっていくような「観客様ラスト」のような素気ない設計にはなっていなかった。特にキングドームではボックス席には専用のエレベーターまであった。

言いたいことは、アメリカ人の文化では「予算はその為にあるもの故、ここをこうすればもう一段階良くなるとの見込みがあれば、躊躇わずにそのようにするもの」と言う思想が徹底されている。だが、その対極にある思想というか文化の我が国では「節約こそ美徳」で「あと少しで、とても良くなる」所を削ってしまう傾向が見える。あの横浜スタジアムでもスタンドの裏側にでもあの高いところにある座席まで易々と上がっていけるようなエスカレーターを設置するか、アメリカ人がやるようななだらかな螺旋階段式な通路を作ってあれば有り難いのだ。

キャンドルステイックパークでは最上部にあるフットボールの試合用の「スポッター席」まで上がったのだが、息も絶え絶えで階段などを上っていった記憶はないし、確かあのスタジアムの外側にはエスカレーターがあったような記憶がある。セーフコフィールドではスタンドに入る為の長い時間をかけて上がっていくなだらかなスロープがある。組織委員会でも何でも、今からでも遅くはないかも知れないから、アメリカのこういう施設を見てきたらどうだろう。ロッカールームなども参考になるだろう。

実は、私は恐らく1980年代から横浜スタジアムに行ってきたが、中で一度も野球を見たことがないのだ。常に一番高いところにある席からフットボールだけを見てきただけだった。「アスリート・ファースト」は聞こえは良いが、「何かお忘れではありませんか森さん、小池さん」と問いかけたい。この世にはアスリートとして下のフィールドで試合をするよりも、見に行く人の方が圧倒的に多いのだ。

W杯サッカーのアジア最終予選

2016-11-16 08:15:56 | コラム
「勝って当然」と閃いた対サウジアラビア戦:

16日夜にはマスコミが大騒ぎしていたグループ首位のサウジアラビア戦があった。試合開始前には何時もの閃きと言うよりも、これまでに1~2試合見た記憶があるサウジアラビアが何で1位なのか不思議に感じていたほどでそれほど質が高いサッカーをしていなかったので、如何に不調と言われる主力選手を数多く擁していても負ける相手ではないと思っていた。結論から先に言ってしまうと「サウジアラビアは中近東独特の小汚いサッカーにオーストラリア風の乱暴さを加えた『大汚い』サッカーをするだけ」の相手だった。

確かにハリルホジッチ監督は大方のマスコミ予想通りに、最近ではめっきり不出来の香川・本田・岡崎を外すという当然のようで思い切った布陣で臨んできた。それが清武であり、大迫であり、久保であったと思うが、原口は既に指摘した通り今や半ば主力選手の地位を確保しており、当然の起用であった。この使い方を世代交代と見るのか、好不調を見ての使い分けかは難しいところだろう。

だが、後半の2点目の取り方などを見ていると矢張り経験が物を言っていると見て良い上手さが漸く表に出ていたと言えるだろう。あの上手さを捨てがたいと見るのか、イヤイヤこれから練習を積ませて使い込めば、何れは若手どももあの境地に達するだろうとの希望的観測もあり得るだろう。しかし、一寸酷な見方をすれば、本田の出来はあの長友へのパス以外はもう一つだったし、香川にも往年のドルトムントを優勝に導いた時の輝きは見えてこなかったと断じたい。

あの試合での良かった点は「全員がピッチ全体で懸命に動き回り、前線では相手のバックス陣の横から後ろへのパス交換にも良く詰めていき自由に蹴らせていなかったし、長谷部以下の中盤を死守した連中も実に寄せが早かったし積極的に相手ボールを奪って素早く攻撃に転じる機会を数多く演出していた」と思う。即ち、カウンター攻撃とやらを主体としているとマスコミが言うサウジアラビアを良い形にさせていなかったのが勝因の一つだろうし、若手選手の先発起用だけが勝因ではなかった」と思わせてくれた。古い言い方になるが、長谷部以下に「殊勲甲」を贈りたい。

私は既に指摘したようにサウジアラビアがそれほど上手いとも何とも評価しないので、この程度の相手に勝った勝ったと喜んではいられないと思っている。昨夜の試合でもNHKのBSの解説だった早野は「焦りが見える」と何度か指摘していたように、例えば原口は何度目のかのフリーに近いシュートの場面では未だキープしても良いと思えたにも拘わらずGKの真正面に蹴ってしまったように、全体的に決定力不足の恨みは残った。好機に決め切れていれば、もう2~3点取っていてもおかしくない試合だった。

私の見たところで、起用の誤りに近かったのが久保で、ほとんど効いていなくて後半には下げられてしまった。彼の試合開始前に緊張の極にある表情では未だ大試合に不慣れな面が明らかに出ていた。あれでは評価の対象にはならなかったのが残念だった。清武は何と言うか小賢しいサッカーをするだけで迫力不足の嫌いがあって私の好みではなかったが、昨夜の出来ではソロソロ香川の代役が務まるかと思わせられてきた。素直に評価したい。

折角良い試合だったし、手に汗握らせてくれるような場面もあった。だが、サウジアラビアの試合態度の悪さが目立ち、その好試合に少しく泥を塗った感があって残念だった。テレ朝の中継では松木が「レッドカード」と叫んだ長友への靴の底を見せた辺り方などは明らかに意図的で悪質だったが、重要な国際試合ともなればあの様な手段に出て来る相手もあるのだ。そこを我が国独特のフェアープレーで乗り越えて行く為には一層の技術的進歩が必要となるし、欧州組の奮起を促したいと思う。

勝って良かった。でも、オーストラリアがタイを相手にして引き分けたのには驚かされた。お陰様で途中計時では2位に上がれたのだが。