先手必勝式議論:
私が新卒後に17年間お世話になった日本の会社に、実質的に2期上だった一橋大卒の秀才がいました。彼が言うには「人は中年を過ぎる頃に自信がなくなり、兎に角何が何でも先手必勝とばかりに自分が知っている事(仮令取るに足らないような程度でも)をこれでもかとまくし立てて、相手を圧倒したがるものだ。即ち、これを老化現象思えば解り良いだろう」でした。
実際に大正生まれで同じ一橋出身の専務は嘗ては切れ者の誉れが高かったのですが、気が付けば先手必勝の高圧的な議論ばかり。「彼が良い(悪い?)例だと思え」と。現在の私などはその専務よりも遙かに高齢であるだけではなく、アメリカ人の世界に長居をしたために、どうしても先手必勝的な論陣を張っているので笑われているのではと密かに反省をし心配しております。
アメリカ人は確かに先手必勝式に議論の展開しますが、それは日本式の高齢化による現象とは違うと思うのです。彼らは学校教育でdebate”を教えられており、私が常に言う「これを言うことで何かを失うと思うか」式な議論を、時にはゲーム感覚でぶつけてきます。それで相手(日本側ですが)が引っ込めばしめたものだと考える連中がいたでしょう。但し、W社にはそんな悪知恵に長けた者はいませんでした・・・・・。この手の議論の進め方が屡々高圧的で高飛車と採られていたのは確かでしょう。私流に言えば「相互の文化に対する理解不足」です。
来年の1月20日からはアメリカには未だ如何なる政治・経済・軍事・外交面の戦略で臨んでくるかが読み切れない新大統領の時代となります。即ち、トランプ次期大統領が先手必勝主義なのか、先ず相手の主張を十分に聞こうとする政治家なのかの正体の見極めが極めて大事になってくるのでしょう。安倍総理は最初の非公式会談では「良く聞いて貰えた」との印象を持たれたようですが、さて如何なる展開を見せるかは”wait and see”でしょう。