新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

11月22日 その2 対ロシア問題

2016-11-22 17:12:12 | コラム
TBSのゴゴスマに勉強させて貰ったこと:

本22日の午後に何気なくつけっぱなしにしておいたTBSのこの番組に登場した元NHKの手嶋龍一と時事通信の田崎史郎のお二方の、対プーチン大統領との北方領土問題、経済協力、平和条約等に関する交渉についての解説が大変勉強になった。私はもとよりロシア問題などについては全く何の知識もなく、ただ何となく安倍総理は大変な難敵と思わせてくれるプーチン氏を相手に、お国の為に善くぞ奮闘しておられるものだと感心しているだけだった。

昨日も偶々居合わせた次男とこの問題について短く語り合った時にも、彼の感覚的な意見である「ロシアが北方領土など返す気などありはしない。あり得ないと思って見守っている方が失望の度合いが軽いだろう」には躊躇うことなく賛成していた程度の感覚で捉えていた。また最近のマスコミ論調というか報道には「プーチン大統領は返さないとは言っていないが、その為には平和条約の締結が先で、その条約を結ぶ為には色々と難しい条件がある。即ち、簡単には事が運ばない」とあった。

いかし、今日の二人のゲストの観測はそれよりももっと厳しく「もしも二島だけでも返還すれば、そこには日米安保の適用範囲内となるので、ロシアが自国の領土だと主張して譲らない地域にアメリカが入ってくることになる。それをプーチン大統領が易々と認めるだろうか」というものだった。更に田崎は「ロシアは目下経済的に苦しいところにあり、15年度のGDPも1兆3,260億ドルと世界の第12位で、11位の韓国の1兆3,778億ドルの後塵を拝している状態で、我が国に求めているのは経済協力で、北方領土返還は・・・」と指摘した。

そこまで聞いて早速Wikipediaに訊いてみると、ロシアの人口も1億4,350万人で、韓国の5,100万人よりも遙かに多いのだ。すると、人口1人当たりのGDPが如何なることになっているかは計算するまでもなかった。知らぬ事とは言え、自らの不明と不勉強を恥じるような結果だった。なるほど、これでは安倍総理に経済協力を要望する訳だと、納得したものだった。それで、安倍総理がペルーでの首脳会談の後のあの厳しい表情での記者会見となった背景も良く見えた次第だった。

しかし、プーチン大統領も12月には日ロ首脳会談の為に総理の故郷である山口県まで来られることでもあり、何らかの色好い条件の提示があるかと期待するのは甘いだろう。だが、そこはそれ国際的にも評価されていると聞く総理の外交力が何らかの成果を上げることだろうと信じようと考えている。対ロシア問題は私のこの認識で良かったのだろうか。


トランプ氏に期待したいこと

2016-11-22 08:32:02 | コラム
「日米間の企業社会における文化と思考体系の違いの理解」が望ましい:

いきなりここから入るのは忸怩たるものがある。実は、嘗ては世界最大のInternational Paperに次ぐアメリカの最大手の紙パルプ・林産物メーカーだったWeyerhaeuser Companyが、今年の9月末で全紙パルプ事業の売却処分を終えて、完全に1900年に創立された当時の木材会社に戻っており、紙パルプ業界の衰退振りをイヤと言うほど示していた。この最大の原因は言うまでもなくICT化が進みすぎて「印刷媒体」(=紙媒体)が衰退したことにあった。中でも典型的な例として新聞用紙の需要が過去10年間で60%の減少したことが挙げられる。

International Paper(IP)を始めとする大手メーカーは21世紀に入った頃から、相次いでリストラで紙パルプ事業部門の中でも主に印刷用紙事業からの撤退を開始していた。IPはそのリストラを「経営体質転換」と称した。そして、その事業をファンドなり中小会社が引き継いで経営していった。だが、遺憾ながら時代の流れには抵抗出来ず事業が期待通りに進展せず、相次いでChapter 11(アメリカ版の民事再生法)請願となってしまったのだった。しかも、困窮した会社群は中国、インドネシア、タイ、ブラジル等の新興勢力からの輸入される良質の印刷用紙に高率の関税の賦課を商務省に申請し実行され、閉め出しに成功してしまった。

アメリカの製紙会社はこれだけに止まらず、中国とドイツから輸入されていたキャッシュレジスターのレシートに使われている感熱紙も反ダンピング関税の賦課も請願し、実質的に閉め出してしまった。問題は輸入紙の方がアメリカ製よりも品質が優れていた点にあった。これらの政策を保護貿易政策と言わずして何だろうか。

このような保護貿易政策は何も紙パルプ産業界だけに限られてはいないようだが、アメリカは今や中国に抜かれて世界第2位の製紙国に成り下がり、首位に躍り出た資源小国の中国にパルプや古紙を供給する立場に成り下がったのだった。その原料をお買い求め頂く中国からの製品を閉め出すという政策を採ったのだ。

こういう貿易政策を採ってきたのが、オバマ大統領率いる民主党だった。私は共和党のトランプ氏が率いる新政権が来年の1月以降、TPPの処理を始めとして如何なる貿易政策を採ってくるかに大いに関心がある。と言うのも、トランプ氏は既にキャンペーン中に「我が国が大量の自動車を輸出している」などという見当違いのことを吠えていた辺りを、どのように修正してくるのかということだ。要するに、トランプ氏がどれほど国際的なビジネスを理解して認識するかではないだろうか。

換言すれば、トランプ氏が専門分野だったは「不動産業」の域から如何に速やかに脱出するかではないのだろうか。希望的には、現時点で各分野の専門家からブリーフィングを受けているだろうとは思うが。望むらくは、過去におけるクリントンとオバマ大統領の民主党政権がが示したような我が国に対して冷たい政策を採って貰いたくないのだ。より深く広く「日米間の企業社会における文化と思考体系の違い」を理解した上で、対日政策を立てて欲しいのだ。

因みに、Weyerhaeuser社は最盛期の1990年代末期には2兆2~3,000億円の売上げで社員が58,000名だったものが、紙パルプ事業を手放した現在では売上高が7,000億円で社員は13,000人の会社になっている。デトロイトも周知のような状態。即ち、アメリカの製造業の回復は未だしの段階だ。そのどん底にある製造業を不動産王が建て直して、”Make America great again”の為には何をすれば良いのかをご存じであって欲しいということだ。