アメリカとの貿易を考えると:
始めに言っていきたいことがある。それはトランプ大統領率いるアメリカはまたもや我が国との貿易不均衡を是正することを言い募っている。後難を恐れずに言えば、30~40年も昔の言いがかりを未だに引きずっているのだ。自分たちの手で生産拠点を安価にして良質な労働力が豊富な中国等に移しておいて、我が国のような優れた労働力の質と優れた頭脳を擁する技術者が多い国からの高品質な製本の輸入が増えたことを他人のせいにする、とんでもない思い違いから未だに離れられていないのだ。
我が国の政府も国会議員さん方もアメリカが如何に誤解をしているか、思い違いをしているかを、歴史的事実を詳細に説明して途方もない誤解であり誤認識であるかを十分の言って聞かせて、かかる間違った考えを直させるべきである。22年以上もアメリカの会社の一員として対日輸出に懸命な努力をしてきた経験から言っても、アメリカの製造業というか輸出企業にはかかる事情と言うべきか自分たちの認識が間違いであると気づいていない者が多すぎるのだ。
これまでに何度も指摘したことだが、アメリカは基本的に輸出国ではなく、1970年代までは堂々と「輸出とは国内よりも遙かに良い値段で売れる時に初めて手がけるもので、国内の需要者の犠牲の上に成り立っているのものだ。即ち、得意先に「そちら様よりも高値で買う先があるから、御社に買って頂くよりもそちらを優先するから悪しからず」などと平然として言っていたのだ。
去る18日に専門商社の知人SY氏と懇談した際にも、この誤認識も話題となって。彼はカリフォルニア州とオーストラリアに駐在の経験がある長年輸出入を担当してきた専門家である。目下ペンス副大統領が来日中で麻生副総理と日米間の経済についての会談が行われているようだ。彼も私と同意見で「アメリカは基本的に考えて輸出国ではないにも拘わらず、何が故に我が国との貿易不均衡をここまで問題にするのか」と主張した。
これは私が繰り返し述べてきた「アメリカ政府はむざむざと自国の主な製造業というか産業界に空洞化を許したが為に、非耐久消費財等では中国からの輸入にあれほど大幅に依存する態勢となり、自動車等の高度工業製品等では我が国やドイツを主体とする輸入にデトロイトが崩壊するまで制覇させてしまったことを忘れて、他国のせいにするのは全く筋が通っていない」と同じ異見である。我々は我が国がトランプ様に譲歩する必要も根拠もないという点でも意見が一致した。
私はこういう対アメリカ政府との交渉ごとや駆け引きを離れて、具体的に、経験上からアメリカから我が国に向けて輸出することがどれほど困難かと示す点を挙げていこうと思う。基本的なことは「アメリカ経済はロッキー山脈を境にして別の経済圏を為している。西海岸は全体の30%であり、その東側即ち東海岸が70%であることを忘れてはならない」という事実だ。そのロッキー山脈がある為に、そこを超えて東西海岸間で製品でも何でも移動させことには高額な輸送費がかかるので、賢明な策ではないのだ。
また、西海岸の最北端のワシントン州からカリフォルニア州の南端までにはこれという産業がなく、非耐久消費財でも何でも輸入か輸送コストをかけて東側からの輸送に依存せざるを得ない状態にある。では西海岸からの輸出品に何があるかと言えば、往年は林産物、紙パルプ製品、農産物(アイダホ州からのフライドポテト類も含め)が主たる製品で、一次産品に依存していた。
では、内陸というか東海岸からの輸出入はどうかと言えば、政治家もマスコミもあまり具体的に指摘してこなかった問題があった。それは内陸からロッキー山脈を避けて何も我が国向けだではなく諸外国に輸出をする為には、製品を東海岸のニューヨーク等の港や南部のジョージア州のサヴァナ港まで貨車やトランク輸送をせねばならないという問題があった。また、より西海岸に近い州からは貨車輸送で長い時間をかけて南部のガルフの港に運ぶか、カリフォルニア州の港まで輸送せねばならなかった。これ即ちコスト面での不利となる。
また忘れてはならないことは「コンテイナーの貨車輸送では工場内での貨車への積み込み(乗せる)作業があり、港でも一旦下ろしてから船に乗せるという、西海岸の港では向上からシャーシで輸送してそのまま船に積み込み作業よりも積み卸しの回数が多くなるので、貨物の性質にもよるが傷みやすいという問題もあるのだ。その上に内陸を走る日数が余分にかかるのは言うまでもない。
「そうであっても他に選択肢がなければ、そうすれば良いではないか」という議論が出てくるだろう。だが、事はそう簡単にはいかないのだ。それは、輸出をする為には製品を積み込むコンテイナー(私はカタカナ語の「コンテナ」は採らない)が必要になる。例えば、クリントン元大統領のアーカンソー州からの輸出を考えてみよう。そこまで西海岸の港などから何か他国からの輸入品があって大量の箱が入ってくれば良いのだが、そうは話が旨く進むことは希で、大量の空の箱を運賃をかけて運び込まねばならなる事が屡々だと聞いている。チャージを払って空気を運ぶのは無駄だ。
これは非常に不経済な輸送手段だが、それ以外に方法がなく国際市場におけるなコスト競争力を失う事態となる。言葉を換えれば、あまり合理的な対策とは言えないのだ。しかも、貨車輸送に要する日数も納期に大きな悪影響を及ぼし、しかも内陸輸送の分だけコストも増えてますます競争力を削ぐ結果となる。食料品などにとっては長期間コンテイナーの中に閉じ込めておくのは得策ではないのは当然だ。
しかも、コンテイナー内部の清潔さと衛生状態も、我が国のような清潔と安全性を重視する国向けの輸出では大いに問題となる。食品関係の荷物では受け取り拒否さえあり得るのだ。ここでは詳細を述べることは避けるが、私はこのコンテイナーの衛生状態(清潔さ)と前荷の管理の問題では、それこそ夜も眠れないほどの大事件を経験してきた。我が国の需要家や最終消費者の神経の過敏なことは、経験してみなければ知り得ない難しさがある。粗雑な感覚での対応は許されないのだ。それを知らずして、ただ単に「買え」と喚くのは筋が通らない。
ここまでに掲げた通りというか、非経済的な条件を知る東部の産業界が、対日輸出に積極的に取り組んでいなかったのだったらどうする。ここに対日輸出不振の一つの原因があると言える。現に、私の得た印象では東海岸の産業界の顔は大西洋を隔てた欧州に向かっていた。そもそも欧州の人たちが新天地を求めてアメリカに移ってきたので、我が国よりは親近感があると感じていた。そうだから、欧州に指向する方が色々な意味でアメリカ人にとっては合理的なのだと思っていた。。
アメリカの輸出が不振だった理由の一つである「自国の規格と製造基準を押しつけること」等々をここに今更論う必要はあるまい。私が指摘したかったことは「アメリカの対日輸出不振の原因と言うべきか、それ阻む目に見えない輸送問題もあること」をトランプ大統領以下の政府要人が何処まで意識か認識出来ているのかが問題だという点だ。アメリカという国では事輸出となれば西海岸から太平洋沿岸の諸国に指向するのが合理的なのだ。
よりハッキリ言えば、ロッキー山脈のようなどうにもならない自然の条件をどうやって克服して、輸出するかであって、自動車のように自国の至らざる為に入超となっていることを非難するのは如何なものかということだ。
私はそれほど間違ったことを言っているとは思っていないのだが。
始めに言っていきたいことがある。それはトランプ大統領率いるアメリカはまたもや我が国との貿易不均衡を是正することを言い募っている。後難を恐れずに言えば、30~40年も昔の言いがかりを未だに引きずっているのだ。自分たちの手で生産拠点を安価にして良質な労働力が豊富な中国等に移しておいて、我が国のような優れた労働力の質と優れた頭脳を擁する技術者が多い国からの高品質な製本の輸入が増えたことを他人のせいにする、とんでもない思い違いから未だに離れられていないのだ。
我が国の政府も国会議員さん方もアメリカが如何に誤解をしているか、思い違いをしているかを、歴史的事実を詳細に説明して途方もない誤解であり誤認識であるかを十分の言って聞かせて、かかる間違った考えを直させるべきである。22年以上もアメリカの会社の一員として対日輸出に懸命な努力をしてきた経験から言っても、アメリカの製造業というか輸出企業にはかかる事情と言うべきか自分たちの認識が間違いであると気づいていない者が多すぎるのだ。
これまでに何度も指摘したことだが、アメリカは基本的に輸出国ではなく、1970年代までは堂々と「輸出とは国内よりも遙かに良い値段で売れる時に初めて手がけるもので、国内の需要者の犠牲の上に成り立っているのものだ。即ち、得意先に「そちら様よりも高値で買う先があるから、御社に買って頂くよりもそちらを優先するから悪しからず」などと平然として言っていたのだ。
去る18日に専門商社の知人SY氏と懇談した際にも、この誤認識も話題となって。彼はカリフォルニア州とオーストラリアに駐在の経験がある長年輸出入を担当してきた専門家である。目下ペンス副大統領が来日中で麻生副総理と日米間の経済についての会談が行われているようだ。彼も私と同意見で「アメリカは基本的に考えて輸出国ではないにも拘わらず、何が故に我が国との貿易不均衡をここまで問題にするのか」と主張した。
これは私が繰り返し述べてきた「アメリカ政府はむざむざと自国の主な製造業というか産業界に空洞化を許したが為に、非耐久消費財等では中国からの輸入にあれほど大幅に依存する態勢となり、自動車等の高度工業製品等では我が国やドイツを主体とする輸入にデトロイトが崩壊するまで制覇させてしまったことを忘れて、他国のせいにするのは全く筋が通っていない」と同じ異見である。我々は我が国がトランプ様に譲歩する必要も根拠もないという点でも意見が一致した。
私はこういう対アメリカ政府との交渉ごとや駆け引きを離れて、具体的に、経験上からアメリカから我が国に向けて輸出することがどれほど困難かと示す点を挙げていこうと思う。基本的なことは「アメリカ経済はロッキー山脈を境にして別の経済圏を為している。西海岸は全体の30%であり、その東側即ち東海岸が70%であることを忘れてはならない」という事実だ。そのロッキー山脈がある為に、そこを超えて東西海岸間で製品でも何でも移動させことには高額な輸送費がかかるので、賢明な策ではないのだ。
また、西海岸の最北端のワシントン州からカリフォルニア州の南端までにはこれという産業がなく、非耐久消費財でも何でも輸入か輸送コストをかけて東側からの輸送に依存せざるを得ない状態にある。では西海岸からの輸出品に何があるかと言えば、往年は林産物、紙パルプ製品、農産物(アイダホ州からのフライドポテト類も含め)が主たる製品で、一次産品に依存していた。
では、内陸というか東海岸からの輸出入はどうかと言えば、政治家もマスコミもあまり具体的に指摘してこなかった問題があった。それは内陸からロッキー山脈を避けて何も我が国向けだではなく諸外国に輸出をする為には、製品を東海岸のニューヨーク等の港や南部のジョージア州のサヴァナ港まで貨車やトランク輸送をせねばならないという問題があった。また、より西海岸に近い州からは貨車輸送で長い時間をかけて南部のガルフの港に運ぶか、カリフォルニア州の港まで輸送せねばならなかった。これ即ちコスト面での不利となる。
また忘れてはならないことは「コンテイナーの貨車輸送では工場内での貨車への積み込み(乗せる)作業があり、港でも一旦下ろしてから船に乗せるという、西海岸の港では向上からシャーシで輸送してそのまま船に積み込み作業よりも積み卸しの回数が多くなるので、貨物の性質にもよるが傷みやすいという問題もあるのだ。その上に内陸を走る日数が余分にかかるのは言うまでもない。
「そうであっても他に選択肢がなければ、そうすれば良いではないか」という議論が出てくるだろう。だが、事はそう簡単にはいかないのだ。それは、輸出をする為には製品を積み込むコンテイナー(私はカタカナ語の「コンテナ」は採らない)が必要になる。例えば、クリントン元大統領のアーカンソー州からの輸出を考えてみよう。そこまで西海岸の港などから何か他国からの輸入品があって大量の箱が入ってくれば良いのだが、そうは話が旨く進むことは希で、大量の空の箱を運賃をかけて運び込まねばならなる事が屡々だと聞いている。チャージを払って空気を運ぶのは無駄だ。
これは非常に不経済な輸送手段だが、それ以外に方法がなく国際市場におけるなコスト競争力を失う事態となる。言葉を換えれば、あまり合理的な対策とは言えないのだ。しかも、貨車輸送に要する日数も納期に大きな悪影響を及ぼし、しかも内陸輸送の分だけコストも増えてますます競争力を削ぐ結果となる。食料品などにとっては長期間コンテイナーの中に閉じ込めておくのは得策ではないのは当然だ。
しかも、コンテイナー内部の清潔さと衛生状態も、我が国のような清潔と安全性を重視する国向けの輸出では大いに問題となる。食品関係の荷物では受け取り拒否さえあり得るのだ。ここでは詳細を述べることは避けるが、私はこのコンテイナーの衛生状態(清潔さ)と前荷の管理の問題では、それこそ夜も眠れないほどの大事件を経験してきた。我が国の需要家や最終消費者の神経の過敏なことは、経験してみなければ知り得ない難しさがある。粗雑な感覚での対応は許されないのだ。それを知らずして、ただ単に「買え」と喚くのは筋が通らない。
ここまでに掲げた通りというか、非経済的な条件を知る東部の産業界が、対日輸出に積極的に取り組んでいなかったのだったらどうする。ここに対日輸出不振の一つの原因があると言える。現に、私の得た印象では東海岸の産業界の顔は大西洋を隔てた欧州に向かっていた。そもそも欧州の人たちが新天地を求めてアメリカに移ってきたので、我が国よりは親近感があると感じていた。そうだから、欧州に指向する方が色々な意味でアメリカ人にとっては合理的なのだと思っていた。。
アメリカの輸出が不振だった理由の一つである「自国の規格と製造基準を押しつけること」等々をここに今更論う必要はあるまい。私が指摘したかったことは「アメリカの対日輸出不振の原因と言うべきか、それ阻む目に見えない輸送問題もあること」をトランプ大統領以下の政府要人が何処まで意識か認識出来ているのかが問題だという点だ。アメリカという国では事輸出となれば西海岸から太平洋沿岸の諸国に指向するのが合理的なのだ。
よりハッキリ言えば、ロッキー山脈のようなどうにもならない自然の条件をどうやって克服して、輸出するかであって、自動車のように自国の至らざる為に入超となっていることを非難するのは如何なものかということだ。
私はそれほど間違ったことを言っているとは思っていないのだが。