新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

トランプ大統領のアメリカ

2017-04-23 08:19:27 | コラム
アメリカは本当に北朝鮮に先制攻撃を仕掛けるのか:

近頃、このアメリカ(というかトランプ大統領と言うべきか)と対北朝鮮のことが、会う人ごとに話題として取り上げられる。大方の関心というか寒心事は「果たして、トランプ大統領が本当に先制攻撃をかけてしまうのか」にあるようだ。確かに、トランプ大統領は元はといえば軍人の閣僚や顧問団に囲まれて、カールビンソンの船団を派遣するような圧迫材料を使うし、習近平に陰に陽に圧力をかけてDPRKを牽制せよと仕向けている。

これだけを採り上げて考えても、これまでのトランプ大統領の衝動的なというか、アメリカの大統領としては前任者のオバマ大統領とは異なる新機軸としか見えない手法から見れば、明らかに本気と見えるのだ。私はこのことが話題となるたびに述べてきたことは「確かにその気配はあるが、就任後100日にも満たない間に彼がやって来たことを仔細に検討すれば、矢張り”unpredictable”と言う他はないと思う」だった。

この新大統領が打ち出してきた多くの政策(なのだろうか?)の特徴は「一貫性」(consistency)に乏しく「安定感」(stability)が見えないと私は見てきた。即ち、一件ごとに前後の脈絡がなく打ち出されてくるのだが、見方によればその時々の情勢の変化に即応して硬軟取り混ぜて突如として発令されるか実行されてきた感が深い。中には選挙キャンペーンの公約を何としてでも具体化させようとばかりに大統領令として発令され、物議を醸してしまった例も何件もあった。

このような統治能力(英語ではgovernanceなのだが、何故政治家もマスメディアも「ガバナンス」などと嬉しそうにカタカナ語で言うのだろう?)乃至は統治の手法を不動産、宅地造成業(ここでも何故かデベロッパーが使われる)の業界のように、一件ごとの(これぞ、まさしくcase by caseなのだが)決着を狙って処理しようと意図されたようにも見えて、多くの有識者や評論家に批判されている。

だが、別な見方をされる一派は「トランプ大統領は“アメリカ第一”と“アメリカを再度偉大に”を実践する為に、新たなパラダイムを導き出すべく行動しているのであって、その意味では首尾一貫している。衝動的だの、一件ごとのデイ―ルだなどという批判も非難も当たらない」と強硬に唱えている。確かに彼が打ち出した新機軸とも見える政策等は明らかに彼の支持層であった非富有階層や所謂恵まれない人たちの支持に応えようとしているのは確実だ。

だが、私はトランプ大統領が打ち出す新機軸の政治の問題は「そういう低層に属する人たちが対DPRK問題や不均衡貿易改善にどれほどの知識や関心があるのか」という点にありはしないかと思うのだ。中国を抑え込んで対アメリカの非耐久消費財の輸出を関税の賦課等で激減されれば、当面困るのは彼らであるし多くのアメリカの消費者ではないか。また、我が国からの自動車の輸入に高率の関税をかければ、彼らだけではなくアメリカ全土の需要者も困るのではないだろうか。

何、「その分だけアメリカでの生産分を増やして”job“(これを「雇用」と訳すのは誤りだ、念の為)を増やせば問題ないだろう」と言うのか。私はこれに対しては、韓国や中国の妄言の真似をして「アメリカこそ対日貿易の歴史認識が不足している。今更何を言うのか」と真っ向から唱えるべきだと思っている。自分たちの至らなさを他人の責任に押しつけて恥じないのは誠に不遜であると言いたい。

ここまででは、如何にもトランプ大統領に対する批判ばかりの如くに聞こえるだろうが、私はトランプ大統領がその大目標である”America first”と”Let’s make America great again”に向かってまっしぐらであることは十分に理解しているし、それなりに評価はしている。だが、如何に目標が良くても、その実現の為の手段がおかしければ何とならないのだ。万人が「将に新時代の偉大な大統領」と評価出来るものでなければなるまい。

また、既にある商社マンを例に挙げて批判したが、政権移行テイ―ムに不備があった模様で、彼が指名し議会が承認する大臣や諸官庁の幹部となる官僚の任命が膨大な数で果たされていないというような内政面の「管理能力不足」は厳しく非難されるべきだし、一向にこの問題を採り上げて報じない我が国のマスコミの姿勢にも疑問を呈したい。

しかしながら、先の大戦中にはとても考えられなかったような生命の危機が我が国民を襲ってくるかも知れないような作戦を本気でアメリカの大統領が選択するのだろうか。私に答えさせれば「矢張り”unpredictable”では」なのだろうか。だが、”predict”している有識者や専門家がいるのが怖いのだ。