新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

我が国の英文和訳の技術の素晴らしさ

2019-02-07 08:20:45 | コラム
英語を和訳する時には洋画の題名の邦訳のような感覚で:

昨6日は方々のテレビ局で有識者や専門家を集めてトランプ大統領の「一般教書演説」の分析をやっていたので、大いなる興味を持って見て(聞いて)いた。その「一般教書」の基になっている英語の表記を見る度に、掲題の「英語を和訳する時には洋画の題名の邦訳のような感覚で」と言われた高校3年の時に英語の授業を担当して頂いた鈴木忠夫先生のこの名言を思い出すのだ。基になっている英語には何処にも「一般」に当たる単語もなければ「教書」もないのだ。

故に鈴木先生の名言を思い出すのだ。例えば古い話で恐縮だが、当時評判になっていた亜米利加の映画に「哀愁」というのがあった。この英語の題名は“Waterloo bridge”だったのだ。物凄い意訳というか映画の制作者の意図だったのだろう男女の出会いの橋を題名にしたところを見事に振り切って、悲劇的な恋愛という筋立てを尊重した「哀愁」にしてしまった。要するにこれくらいの大胆さを持たないと、他人を唸らせるような見事な英文和訳は出来ないという意味だ。

その点では我が国の英文和訳の達人の技には何時も感嘆させられているし、何という忖度振りかと腹立たしい思いをさせられることもある。そこで思い当たる「上手い」か「凄い」と言いたくなる、屡々報道関係に登場する我が国に広く普及している和訳の例を挙げていこう。

一般教書演説:
解説)元の英語はThe State of the Union Addressであり、大統領が内政・外交の方針を述べる演説のこと。私にはそれならば「施政方針演説」で良かったような気もするのだが如何なものだろう。

国際連合:
解説)言うまでもない「国連」のことだが、これは英語の表記はThe United Nationsであって、何処にもinternational という言葉はない。この和訳はこれまでにその「阿り」方を散々貶してきたので、これ以上は触れない。

安全保障委員会:
解説)これも感心するのみだ。The Security Councilなのだが、security という単語には「保障」というまでの意味はないように思える。だが、この和訳ではこの委員会の神々しさが十分に表現され、何故我が国が入りたい、常任理事会に選ばれたいという願望が表れている気がする。

常任理事国:
解説)これも凄いと思って何時も感心している。英語表記は“permanent member”であるから。私は上手い和訳の極みだと思っている。誰がこのように訳したのかと感心している。

聖火:
解説)我が国ではオリンピックは余程神聖な行事だと崇め奉られているからこそ、こういう和訳が出てきたのかと疑っている。尤も、初期のオリンピックには神聖さがあったのだと察してはいるが。英語の表記は“Olympic flame”である。

選手村:
解説)これは上手い訳し方だと感心している。英語表記はアッサリと“Olympic village”なのだから。これには本気で「座布団1枚」と声をかけても良いかと思っている