新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

トランプ大統領対DPRKと中国

2019-02-19 08:46:35 | コラム
予断は許さないが:

トランプ大統領対金正恩委員長の会談:

第2回目の会談がもう来週のことになってきた。経験から言えることは「アメリカの会社では会議が招集されて実際に始まった時には既に終わっていた」と言っても良いほど事前に参加する各人に課題が割り当てられ、十分に練り上げた原稿と質疑応答に備えた準備が整っているのがごく当たり前のことだった。また、得意先との交渉においても相手先の意向を可能な限り調べ上げて、対応する議論の進め方を周到に準備したものだった。

そういうアメリカ式な手法をDPRKが何処まで把握しているかは不詳だが、私は事前に事務方同士が十分な時間を取って話し合って、議題を練り上げて準備万端整えてあっても不思議ではないと思っている。だが、1回目の成果とその後のDPRKの動きを見る限り、*即時の完全非核化で両首脳が合意に達するか、*妥協的な段階的非核化をトランプ大統領が認めて制裁を緩和するか、*何らの具体的結論無しに3回目に落ち着くか辺りしか見えてこない気がしてならない。

ではあっても、再選を睨んでいるトランプ大統領の立場からすれば、何らかの具体的な成果を得ることが必要だろう。だが、ここで金正恩委員長と何らかの妥協する訳にはいくまいから、矢張り難しい会談になるとしか思えない。トランプ氏は金正恩委員長の関係は“good one”と一般教書演説の中で言いきった以上、如何なる交渉をして結果を出されるかを期待して見守っていくしかあるまいと思う。

アメリカ対中国の貿易交渉:
トランプ大統領は3月1日の期限を延ばしても良いようなことを仄めかしておられたが、それが得策が否かは疑問ではないのか。神田外語大学の興梠教授は人民日報と環球時報の記事を引用して「中国側には『原則』(=中国の現体制)を変える気はない」と指摘しておられた。中国側はトランプ大統領を「商人」(ビジネスマンの意味らしいが)と看做しているようだが、この交渉でこれから先に変える意思はないと言う習近平体制と、どのような交渉に持って行くかは最大限の注意を払って見守るべきだろう。

私には習近平主席がどれほど国際的な貿易業務や慣行を承知しているか等は察知できないが、彼らはWTOも何のそので世界市場で荒れ回っているのは確かだと思う。5~6年前だったか、アメリカの製紙業界の請願で商務省が中国の対アメリカの印刷用紙のダンピングを調査したことがあった。その時に出た結論は「中国政府は輸出に奨励金を交付し、国内の物品税等を免除しているのは不公正である」として、高率の反ダンピングと相殺関税をかけて締め出してしまった。オバマ政権時代のことだ。

要するに、中国はこの頃既に輸出奨励金を交付して国営企業等々を後推してしていたのだった。トランプ政権下でその奨励金を非難しているが、これだけはオバマ政権時代を踏襲していることになっているようだ。私が危惧していることは、中国が「商人」と規定したトランプ大統領の貿易関連の知識には少し危ないかと思わせる点がある。その点は昨夜のPrime Newsでも指摘されていたが、トランプ大統領は「中国からの輸入に高率の関税をかけたことで、財務省にドンドンと税金が入ってきている」と嬉しそうに言われたが、あれは中国が払っている訳ではなくアメリカの輸入業者が納めているアメリカのお金なのだ。何か勘違いされたのだろう。

そういう点ではトランプ政権で初代の広報官・スパイサーズ氏は大統領がメキシコからの輸入に20%だったかのボーダータックスをかけると表明された時に「これでメキシコの業者は大きな負担をすることになる」と発言してしまい、後になって慌てて訂正していたという一幕があった。この一事だけを以て論じる気はないが、アメリカはそもそも内需に依存する経済で基本的に輸出国ではないのだから、海千山千の中国との交渉は十二分の用心が必要になるだろうと思う。

今となっては「中国の統計は云々」などとは軽々に言えないとは思うが、関税賦課競争が始まって以降、中国の対アメリカ輸出はそれほど大幅には減少していないという統計が公表されているそうだ。アメリカ側はライトハイザー代表以下はじっくりと腰を据えて中国と渡り合っていかない限り、トランプ大統領な重要な公約の一つである対中国の貿易赤字削減は簡単には捗らないと懸念するものだ。何しろ「輸出奨励金は止めない」と既に公言しているのだから。