新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカの人種差別に抗議するデモについて

2020-06-10 16:31:28 | コラム
この際ご理解願っておきたいことがあります:

私は今回アメリカで最も尊敬してきた女性のアメリカにおける人種差別に対する抗議のデモンストレーションについての見解を聞かせて頂きたいと依頼しました。私が特に知りたかったことは「あのデモに何故多くの白人が参加してニューヨークでは店舗のショーウインドウを破壊して略奪行為までしていたか」でした。私はこのことが理解出来ず、この点を少し強調して質問した次第でした。ご承知のようにアメリかでは人種差別とは微妙な問題なのです。私は22年間のアメリカの会社勤務の間に、当然のことながら一度も上司や同僚ともこの件で語り合ったことなどありませんでした。

そして、女性からの返信には「私の個人の考えであり、アメリカ人の総意ではないから、友人か知人に公開するのならばその点を弁えた上にして下さい」と釘を刺されていました。そこで「敢えて公開」と断った上で紹介した次第です。実は、お馴染みかと思う元の同僚にL氏にも同じ事を質問していました。L氏からは先ほど答えのEmailを受信したところですが、私が推定していたことと似たような内容だったので、ホッと安堵しております。

彼からの返信で特徴的だったことがありました。それは何時でもズバリと物を言う彼が「私は専門の大学教授ではないが」と断っていた点でした。彼は「デモに参加している白人たちは、白人の優位性(元の言葉は「白人至上主義」と同じでしたが)を示そうとしているのでは」という見解を示していました。この辺りにこの微妙な話題に触れる際には十分な注意が必要なことを表していると解釈しました。

彼は同時に彼の見解を私が他者に公開するときには、それ相応の配慮をして欲しいと言っているとも理解しました。あの女性と同じに微妙な問題に触れることの危険性を考慮していると思うのです。それにも拘わらず、この二人は答えてくれました。私はこのことを誇りに思っているので、敢えて公開しようとしているのです。

更に敢えて述べておきたいことがあります。それは、私はアメリカの会社に転進してから「彼等の中に自分の居場所を築き上げ、同時に彼等との人脈を築かねば」と痛感させられたので、何とかせねばなるまいと懸命に努力をしました。その成果というか結果で、管理職以上に数多くいるアッパーミドルの人たちの輪の中ににどうやら受け入れられたと自負しております。即ち、彼等と思うように意思の疎通が可能になったという意味です。そして、ウエアーハウザーをリタイア後に26年を経た今でも、会社の内外に交信している人たちがいます。そして、彼等にこの人種問題に関するような微妙な意見を求めても答えて貰えたのは無上の光栄だと思っております。

やや自慢話めいて恐縮ですが「アメリカの私が勝手に定義した支配階層にある人たちと交信して、意見交換が出来る元ビジネスマンやジャーナリストがどれほどいるのかな」などと言えるかななどと愚かにも考えています。元より私はジャーナリストではありませんが「彼等と意見交換の場がある事を楽しんでいる」のです。

以前に紹介したことがありましたが、畏友YM氏が言うには「スタンフォード大学、プリンストン大学等々には著名な経済学者が数多くいる。だが、そのような教授たちに我が国の専門家やマスコミの人がアポイントを取って取材に来たという話を聞いたことがない。また、アポイントを取ろうと思っても、先ず無理だと認識している。第一に、そういう教授たちと会って英語で意見交換をするとか取材できる人がどれほどいるだろうか」なのだそうです。

告白しますが、かく申す私はワシントン州の短大で「日米企業社会の文化比較論」の講座を持たないかという身に余るお話を頂いたこともありました。だが、在職中で物理的にも無理なので残念ながら辞退したのでした。私は今回は友人・知人・元同僚たちが質問に応じてくれるかが不安でした。先ほどL氏からも返信のメールが来ていました。要するに、私は名も顔も売れている専門家でもジャーナリストでもないアメリカのビジネスの世界にいた人たちの見解を、嬉々として敢えて紹介した次第です。彼ら乃見解をそういう視点から受け入れて頂きたいのです。

私のお願いはこのような私的なと言うか、個人的な付き合いのネットワークを維持できていることを、ご理解願いたいのだと言う点です。そういう個人的(personalとなるでしょうが)の間での意見交換の場を、今後とも維持していこうと思っています。宜しくご理解とご支持のほどを改めてお願いします。


アメリカで発生している人種差別問題に対する抗議デモ

2020-06-10 08:52:30 | コラム
何故白人があのデモに参加しているのだろう:

このミネアポリスで白人警官がアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさんを逮捕する際に死に至らしめたことに対する抗議のデモンストレーションが、報道によればアメリカ全土で行われているようだ。当の警官は解雇されて訴追されるようだが、その程度ではアフリカ系アメリカ人たちの人種差別に対する抗議デモが収まるものではなかった。

私はこれまでに何度も22年以上ものアメリカの会社勤務の間に、一度もアフリカ系アメリカ人と膝つき合わせて語り合ったこともなく、社内で人種差別問題などを誰とも語り合うというか語り合いの中で話題にしたか、話題に上ったことなどなかった。とは言うが、勿論アメリカには人種差別問題がある事は承知していたし、世界史では奴隷をアフリカから連れてきたことくらいは知識として持ち合わせていた。言わば、この問題については、ほとんど確たる知識も意見もないと同様だと思っている。

ところが、テレビのニュースを見ていると、ニューヨークやその他の都市でデモに白人が参加していたし、店舗のショウウインドーのガラスを破壊して略奪している群衆の中にも白人がいたので、不思議なことだと大いに違和感を覚えていた。私に推察できたことは「あのデモに参加している白人はローワーミドル(=lower middle、中流以下)乃至はそれ以下の層に属する者たちで、日頃抑圧された生活をしてきたことに対する不満、乃至はフラストレーションの解消を企図しているのかな?」程度だった。だが、「そういうことがあり得るのか」と自分の「閃き」を信じにくかった。

そこで、これまでに何度か採り上げたきた、アメリカで出会った数多くのご婦人方の中で最も知性的で教養もあるMBAでコンサルタント事務所を運営しておられた方に、私の疑問を解消して頂くべくEmailでお願いしてみた。結果的には速効で長文の返信が来た。その全部を和訳しようという勇気が出てこないのだが、折角の機会なので「何故白人が」という辺りだけを言わば「意訳」して紹介しようと思うに至った。

抄訳:
貴方の「何故白人があのデモに加わっているのでしょうか」に答えてみます。私たちはアメリカ合衆国はその市民全部に対して十分に報いていないことに気が付き、その問題の複雑さを認識して恥ずかしいことだと思っているのです。そして、不当に扱われている人たちに大いなる同情心を持っています。最早、警察官の暴力的な振る舞いを終わりにすべき時が来ています。だが、この点に目覚めるのに余りに時間をかけすぎました。その為に多くの市民はアフリカ系アメリカ人、その他の有色人種の抗議デモに参加する以外の手段を見いだせなかったのだと思います。

この件は肌の色だけの問題ではありません。私はあのデモが示していることの中には「格差社会」の問題もあると考えています。多くの中流以下の白人たちは今世紀に入ってからも、不当に低額な給与しか与えられないというように粗略に扱われてきましたし、彼らの将来に対する見通しは悪化してしまったようです。私が特に問題ありとして採り上げるのは、中西部の州です。この地方の経済は主として石炭、鉄鋼、自動車等の産業に依存しています。だが、これらの業界は最早アメリカにとっては嘗てのように重要な地位を占めていなくなったし、海外からの輸入に押されて失業者が増えてしまったのです。

彼等白人たちはアフリカ系アメリカ人たちには「食事券」が給付されているし、所謂「積極的優遇処置」(=affirmative action)が採られてアフリカ系アメリカ人は優先的に雇用されるとか、大学に進学できるような特権が与えられていることを快くは思っていないのです。白人たちのプライドが“food stamp”(困窮者の為の食料費補助対策)を貰うことを許さないという要素もあります。デモに参加している白人たちはその怒りをそこで表現しようとしていると考えられます。私は少なくとも彼等がデモに参加する理由の中心には、これらの不満の表明だと思って見ています。

以上

なお、彼女からは「これは飽くまでも私個人の見解であり、アメリカ人全体の総意ではないとご承知の上で読んで下さい」と注意されています。しかしながら、私には「なるほど、そうだったか」と思わせられるだけの内容でしたので、敢えて紹介する次第。