Fish On The Boat

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『超高齢社会の基礎知識』

2016-02-21 22:15:21 | 読書。
読書。
『超高齢社会の基礎知識』 鈴木隆雄
を読んだ。

2012年の本ですが、
そこから2030年や2055年の人口の推移とともに高齢化率を見ながら、
超高齢社会をさらに超えていく社会が必ず来るので、
覚悟して対策を練るために知っておきたいデータや知識がいろいろ載っていました。

ちなみに、高齢化社会というのは、人口の7%が65歳以上の高齢化率になる社会をいい、
高齢社会は高齢社会の2倍でる14%の高齢化率でそう呼ばれる。
さらに、7の倍数の21%で超高齢社会になるのだけれど、
この本が出たときのデータでは、
日本はすでに23%を超える高齢化率の超高齢社会になっています。
そして、たとえばぼくの住んでいる町は高齢化率が50%に届くほどなのですが、
50%までいくと限界集落と呼ばれ、活発に産業が育たないし、発展もしないし、
お金の流れも滞り、コミュニティの存続を危うくする状態だそうです。

もっとも興味を持って読めたのは、
やはり前期高齢者、後期高齢者の健康に関するところでした。
老化は足からくる、ということです。
だんだん歩けなくなるということが、
介護を受けてしまう方向への下り坂をあらわしている。

歩けなくなると、まず転倒の恐れがある。
転倒は高齢者にとっては、骨折してしまうことも多く、
そこから寝たきりになったり、
または転倒そのもので命を危うくするリスクがあります。

次に、歩けなくなると、尿失禁を防ぎにくくなる。
こうなると、オムツを履いたりすることになり、
尿がいつ漏れるかという怖れから、外に出ることが不安になって、
社会との関わりが薄くなっていき、それによって認知症のリスクが高まります。

続いて、歩けなくなると、認知機能の低下そのものの予防もできなくなる。
歩くこと、運動をすることで、認知機能を維持したり回復したりできることが、
実験からわかっているそうです。

最後に、歩けなくなると、筋肉量減少症(サルコペニア)を予防できない。
高齢者になると筋肉の量が減っていって、痩せていく人が多いそうです。
そうしていくと、認知機能の低下の可能性が高まる疑いがあるそうです。

これら、老化の負のスパイラルに陥らないためには、
歩くこと、運動すること、という自助努力、
そしてそれらを促す周囲からの助け(共助)もときに必要になるんです。
人間にとって歩くことって本当に大事なようですよ。
といいつつ、ネットのニュースで、
一日一万歩健康法のウソ、みたいな記事の見出しを見ましたが…。
まあそこは本書のほうを信じることとします。

それと、「食べこぼし」や「むせ」というものも危険だという話でした。
うちのおふくろは寝ながらでも薬の副作用でよだれがおおくでてしまって、
むせていくことが多いのですが、本書には、
<とくに危険なのが夜間・睡眠中の無意識の状態で発生する「むせ」である>
と書かれていて、はっとしたところです。
飲みこんだものが食道へいかずに気道に入ってしまうことを誤嚥と言いますが、
誤嚥性のものを含む肺炎は高齢者の死因の第4位だそうです。

それで、そんな高齢者のなかでも、介護が必要になってしまったら、
各市町村にある地域包括支援センターで相談できるそうです。
ケアマネージャー(介護支援専門員)、医師、看護師、理学療法士、作業療法士などが
それぞれに連携してささえるシステムというのが好ましいとされていました。
さらに、ヘルパーや介護福祉士もそこに加えて考えるものなのだと思います。

利用者の「生活の解決すべき問題」「目標」「達成までの期間」を明確にして、
チームメンバーで共有することが大事だとされる。

また、今って、病院で死を迎える人が多く九割がたは病院での逝去ですが、
これからの超高齢社会においては、在宅で死を迎えることへとシフトしていくように、
政府は考えているし、世の流れとしても好ましいということでした。
そもそも、ポックリといきなり死んでしまうのが理想とされますが、
急性のポックリ死って3~4%くらいの割合だそうです。あとの9割以上の人は、
だんだん弱っていって死んでしまう。
それで、病院にかかって、胃瘻(いろう)にまでかかると、もはや回復の見込みはなく、
ただただ延命のための措置にすぎなく、治療を受ける本人にしてみても、
それが希望通りなのかもわからないことになってきます。
著者は、欧州では延命措置をとること、胃瘻を使うことはほぼないことを示したうえで
(それは宗教観がおおいに影響しているのですが)、
尊厳を持って死を迎えることの大事さを訴えています。
そして、メメント・モリ(死を想え)の言葉をひきながら、
自分で自分の死の迎え方を考えること、死を考える教育が必要だとも述べていました。
くわしいことは、本書を手に取ってみてください。

ぼくの母は最近、要介護認定3になったのですが、
どうも介護サービスの受け方がわからなくて、
いっときヘルパーさんに来てもらっていたんですが、
母が嫌がるのでやめたという経緯があります。
この本を読みながら、親父と話をしてみると、
親父は介護にかかっている時間で精いっぱいで、
母がこれからもっと歩けなくなるとさらに症状が悪化して、
介護の負担が大きくなっていくことをわかっているのかいないのか、
とにかく今で精いっぱいで、介護サービスもよくわからない、
というような反応でした。

ぼくもこの介護サービスについて全然知らなくて、
きっとサービスがないんだろうと思っていたのですが、
どうやら地域包括支援センターに相談すると、
なにか適当なサービスが見つかるんじゃないかという気がしています。
さっきも書きましたが、「生活の解決すべき問題」「目標」を明確すると、
どんなサービスが良いのかがわかってきます。
これ以上歩けなくならないように、作業療法士についてほしい、
そして、目標は今よりも歩けるようになること、だとか
相談員に持ちかけられそうな言葉が浮かんできます。
母の場合は精神の病とその薬の副作用による痴呆様症状で要介護3までいっています。
そこがふつうと違って難しいところなのですが。

介護や高齢化についての本は、あと2冊、積読になっていますので、
近いうちにまた読んでみて考えようと思っています。

おまけとして、うちの地域の地域包括支援センターの支援内容の文言をコピペしておきます。

______________

地域包括支援センター
高齢者が、住み慣れた地域で、
いつまでも楽しく潤いのある生活を送れるようにすることを目的として、
保健師・主任介護支援専門員・社会福祉士などの資格を有する職員が、次の業務を行います。

1.総合相談について
相談を総合的に受け止めて、必要な制度やサービスの利用につなげるよう支援します。

2.介護予防サービスの調整
高齢者本人が、生活の中で実現したいことを目標にして、
出来る限り住み慣れた地域で自立して生活できるよう支援します。

3.包括的・継続的なサービスの調整
一人一人の状態にあわせ、地域のいろいろな資源を活用しながら
継続したサービスを受けられるように調整いたします。

4.権利擁護について
金銭の問題や虐待など、地域生活で問題を抱えた時に、
尊厳ある生活と人生を送れるように支援いたします。


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