読書。
『人魚姫』 アンデルセン 絵:清川あさみ 訳:金原瑞人 写真:鈴木理策
を読んだ。
アンデルセンの名作『人魚姫』を、
清川あさみさんが刺繍やビーズで作った布の「絵」で彩る絵本です。
僕は、『人魚姫』の話を、140字くらいのツイッター程度の要約みたいなものでしか
知らないというか、覚えていないというか、その程度の認識加減だったので、
今回アマゾンで本書を見つけた時には、これは楽しめそうだと直感して、
購入したのでした。
清川あさみさんについては、『美女採集』という展覧会を今年の春に札幌で
見てきたので、細かい刺繍やビーズで作られた、特有の美しい世界に触れた経験から、
きっと、このコラボも想像以上のものになっていそうだし、
第一に、写真を使わない刺繍とビーズだけのこの「絵」で、
清川あさみさんをもっとよく知れるのではないか、と思いもしたのでした。
読んでみて、清川あさみさんの刺繍とビーズによる「絵」は『人魚姫』にぴったりでした。
そればかりか、物語の世界のイメージを牽引する役割もはたしていました。
「『人魚姫』をね、こういう視覚的な世界観でもってイメージして読んでみると、
どうですか、本当に宝物みたいな物語に感じられるでしょう?」とでも
言われるかのように、そのとおりに、豊かな『人魚姫』の世界に連れ立っていってくれます。
童話なんだし、それぞれ読む人のイメージのほうが豊かなんじゃないのかな、と
思う方もいらっしゃるかもしれませんが、少なくとも、僕が物語だけから
イメージを喚起するものよりも、優れたイメージの提案がなされていたんじゃないかな。
とはいえ、人魚姫の具体的なイメージ、それもリアルにイメージさせたら、
僕のほうがこの「絵」よりも具体的で美しいものが頭の中だけならば出てくるかもしれないですけれど、
この清川さんの「絵」の抽象世界具合がまた美しいのであって、素晴らしいのです。
さてさて、『人魚姫』の物語自体はどうだったかというと、実に面白かったです。
アンデルセンは19世紀のデンマークの人で、『マッチ売りの少女』もこの人の作です。
それぞれの世界を越えて結びつくことのむずかしさ、もしかすると、分不相応さには
不幸が訪れることをさとす話かもしれない。
それでも、それにあらがう勇気だとか気持ちの強さ、そしてもっと根本の「愛」というものを
アンデルセンは否定していないし、それが美しいのだと考えてもいると思いました。
『マッチ売りの少女』だったらば、不幸なマッチ売りの少女に訪れるマッチを擦った時だけに
現れる想像上の幸福というような、ある種、その少女の人生を不幸一色じゃないとする弁護というか、
弁護しながらもこれじゃいけないだろうという問題提起もさりげなく感じれたりもするような気がします。
両者に通ずるのは、主人公が痛みや苦しみに耐えるところでしょうか。
耐える美しさがそこにありますし、周りから見れば、耐えさせないで解放してあげたい気持ちが働くでしょう。
実は『マッチ売りの少女』も140字の要約といった具合のツイッター程度の知識しかないので、
あまり深くは追求できません。追求できないのならはじめから書かなきゃ良かったのかな…。
童話と言ったって、『人魚姫』は全然、薄っぺらじゃないです。
人魚の妖しさもあるし、人間から思われている人魚の魔性についての言及もあるし、
それでいて、人魚世界の美しさが語られていて、そういったところだけでも、深みがありますよね。
本書は税別で2000円でちょっと高い大型本ですが、
プレゼントに喜ばれそうな作品ですし、自分で買っても大事したくなるような本です。
『人魚姫』 アンデルセン 絵:清川あさみ 訳:金原瑞人 写真:鈴木理策
を読んだ。
アンデルセンの名作『人魚姫』を、
清川あさみさんが刺繍やビーズで作った布の「絵」で彩る絵本です。
僕は、『人魚姫』の話を、140字くらいのツイッター程度の要約みたいなものでしか
知らないというか、覚えていないというか、その程度の認識加減だったので、
今回アマゾンで本書を見つけた時には、これは楽しめそうだと直感して、
購入したのでした。
清川あさみさんについては、『美女採集』という展覧会を今年の春に札幌で
見てきたので、細かい刺繍やビーズで作られた、特有の美しい世界に触れた経験から、
きっと、このコラボも想像以上のものになっていそうだし、
第一に、写真を使わない刺繍とビーズだけのこの「絵」で、
清川あさみさんをもっとよく知れるのではないか、と思いもしたのでした。
読んでみて、清川あさみさんの刺繍とビーズによる「絵」は『人魚姫』にぴったりでした。
そればかりか、物語の世界のイメージを牽引する役割もはたしていました。
「『人魚姫』をね、こういう視覚的な世界観でもってイメージして読んでみると、
どうですか、本当に宝物みたいな物語に感じられるでしょう?」とでも
言われるかのように、そのとおりに、豊かな『人魚姫』の世界に連れ立っていってくれます。
童話なんだし、それぞれ読む人のイメージのほうが豊かなんじゃないのかな、と
思う方もいらっしゃるかもしれませんが、少なくとも、僕が物語だけから
イメージを喚起するものよりも、優れたイメージの提案がなされていたんじゃないかな。
とはいえ、人魚姫の具体的なイメージ、それもリアルにイメージさせたら、
僕のほうがこの「絵」よりも具体的で美しいものが頭の中だけならば出てくるかもしれないですけれど、
この清川さんの「絵」の抽象世界具合がまた美しいのであって、素晴らしいのです。
さてさて、『人魚姫』の物語自体はどうだったかというと、実に面白かったです。
アンデルセンは19世紀のデンマークの人で、『マッチ売りの少女』もこの人の作です。
それぞれの世界を越えて結びつくことのむずかしさ、もしかすると、分不相応さには
不幸が訪れることをさとす話かもしれない。
それでも、それにあらがう勇気だとか気持ちの強さ、そしてもっと根本の「愛」というものを
アンデルセンは否定していないし、それが美しいのだと考えてもいると思いました。
『マッチ売りの少女』だったらば、不幸なマッチ売りの少女に訪れるマッチを擦った時だけに
現れる想像上の幸福というような、ある種、その少女の人生を不幸一色じゃないとする弁護というか、
弁護しながらもこれじゃいけないだろうという問題提起もさりげなく感じれたりもするような気がします。
両者に通ずるのは、主人公が痛みや苦しみに耐えるところでしょうか。
耐える美しさがそこにありますし、周りから見れば、耐えさせないで解放してあげたい気持ちが働くでしょう。
実は『マッチ売りの少女』も140字の要約といった具合のツイッター程度の知識しかないので、
あまり深くは追求できません。追求できないのならはじめから書かなきゃ良かったのかな…。
童話と言ったって、『人魚姫』は全然、薄っぺらじゃないです。
人魚の妖しさもあるし、人間から思われている人魚の魔性についての言及もあるし、
それでいて、人魚世界の美しさが語られていて、そういったところだけでも、深みがありますよね。
本書は税別で2000円でちょっと高い大型本ですが、
プレゼントに喜ばれそうな作品ですし、自分で買っても大事したくなるような本です。