読書。
『夜のピクニック』 恩田陸
を読んだ。
第二回本屋大賞受賞作。修学旅行の代わりに行われる夜通し80kmを歩き続けるイベント「歩行祭」を舞台にした、男子高生・融と女子高生・貴子のふたりを主人公とした物語。
二人は三年生になってから同じクラスになった。それまでお互いを避けてきたのにどうして、と困惑する二人は、実は異母兄弟なのだった。「葛藤と対立」からはじまる二日間の人間模様がどのような結末を迎えるのか、わくわくしながらずっと読み続けていられる名作でした。そして結末での「葛藤と対立」の落としどころが素晴らしかったです。しっかり活力がある作風で進んでいくのに、落としどころではさりげないくらいの柔らかさが印象的。緩急や硬軟のメリハリだととることもできるのではないでしょうか。
読んでいると、きっと細かくきっちり、がっちりとしたプロットを立てて書いていったのだろうと思えるのですが、プロットに沿って書いていても文章が生きいきとしているし、アウトラインに沿うように無機的になる部分が無いところもさすがでした。単純計算すると、作家が38,9歳くらいのときに書いたものだと推測できるのですが、作家の実年齢よりも20歳も下の世代のやり取りを、脚が浮つくことなく成立させることに成功しているところは、腕っぷしあってこそでしたね。しっかり血が通っていました。
そして、哲学や知見が登場人物たちの口から散見されるのですが、なかでも「これは!」と共感したものを引用して終わります。こういうことをなんとなく感じていたけれど、しっかり言葉にしていなかったなあというところがしっかり言葉になっていました。
______
融は未完成の少女たちが苦手だった。ふわふわしていて、サッと表情が変わったり、絡みつくような目をしたり、恨めしい素振りをしたり。その青臭さが魅力であることは認めるものの、あんなふにゃふにゃしたものに手を出したら、大変な目に遭うのではないかという不安の方が大きかったのだ。(p225)
______
……僕も苦手な方ですね。ひとつこの引用に言い添えるならば、ここで語られている性質って、少女たちだけに限らず、成人を迎えた女性たちのほとんどにも失われずにある、ということです。輪郭がくっきりした大人の女性の存在のほうが珍しいような気がするのですが?
というわけですが、さまざまな世代の人が読んでもきっと楽しめるだろう佳作なのでした。おもしろかった。
『夜のピクニック』 恩田陸
を読んだ。
第二回本屋大賞受賞作。修学旅行の代わりに行われる夜通し80kmを歩き続けるイベント「歩行祭」を舞台にした、男子高生・融と女子高生・貴子のふたりを主人公とした物語。
二人は三年生になってから同じクラスになった。それまでお互いを避けてきたのにどうして、と困惑する二人は、実は異母兄弟なのだった。「葛藤と対立」からはじまる二日間の人間模様がどのような結末を迎えるのか、わくわくしながらずっと読み続けていられる名作でした。そして結末での「葛藤と対立」の落としどころが素晴らしかったです。しっかり活力がある作風で進んでいくのに、落としどころではさりげないくらいの柔らかさが印象的。緩急や硬軟のメリハリだととることもできるのではないでしょうか。
読んでいると、きっと細かくきっちり、がっちりとしたプロットを立てて書いていったのだろうと思えるのですが、プロットに沿って書いていても文章が生きいきとしているし、アウトラインに沿うように無機的になる部分が無いところもさすがでした。単純計算すると、作家が38,9歳くらいのときに書いたものだと推測できるのですが、作家の実年齢よりも20歳も下の世代のやり取りを、脚が浮つくことなく成立させることに成功しているところは、腕っぷしあってこそでしたね。しっかり血が通っていました。
そして、哲学や知見が登場人物たちの口から散見されるのですが、なかでも「これは!」と共感したものを引用して終わります。こういうことをなんとなく感じていたけれど、しっかり言葉にしていなかったなあというところがしっかり言葉になっていました。
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融は未完成の少女たちが苦手だった。ふわふわしていて、サッと表情が変わったり、絡みつくような目をしたり、恨めしい素振りをしたり。その青臭さが魅力であることは認めるものの、あんなふにゃふにゃしたものに手を出したら、大変な目に遭うのではないかという不安の方が大きかったのだ。(p225)
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……僕も苦手な方ですね。ひとつこの引用に言い添えるならば、ここで語られている性質って、少女たちだけに限らず、成人を迎えた女性たちのほとんどにも失われずにある、ということです。輪郭がくっきりした大人の女性の存在のほうが珍しいような気がするのですが?
というわけですが、さまざまな世代の人が読んでもきっと楽しめるだろう佳作なのでした。おもしろかった。