Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『モテキ』

2011-09-28 00:19:25 | 映画
大ヒットコミックをドラマ化した作品の、
オリジナル続編映画『モテキ』を観てきました。

主人公に、二度目のモテ期がやってくるという設定。

これでもかというように、物語の根幹をなすツイッター。
もはや、ツイッタームービーでしたね…。

なかなか言葉にするのはムズカシイ映画です。
そこを、手短に感想を書いていきます。



まず、「間」というものを、必要最小限にとどめている感じがします。
そりゃ、要所要所では、人と人、シーンとシーンの「間」をとっていますが、
「すぐに次を観たいだろう、みんな!」ってな具合に、
どんどんとストーリーは進んでいきます。

そして、そのストーリー自体、音楽にちりばめられていて、
音楽そのものがメインなのかもと勘違いしてしまいそうなくらい、
両者の癒着がはなはだしいというか、双璧をなし過ぎているというか、
そのくらい、音楽の存在感が大きいのです。
シーンを彩り、シーンをリードする音楽。
生活と密着した音楽の世界。幸世を中心としたこの物語は
そのようなことをも表現しているのかもしれないです。
そしてそして、ラストに近づくにつれて、
「そうそう、そうやって音楽が生まれていくのだよ、幸世」
と教えてあげたくなるように、音楽の原点、
創作の原点にあたる、衝動や経験が主人公の中に蓄積していくのが見えてきます。
作り手たちがポップスをリスペクトするがゆえにそうなっていくのでしょう。
さらに、主人公の幸世もそうだから、そうなっていくともとれます。
歌ってどうやってうまれるの?っていう疑問にも、実は答えている。

主要女性キャラに、
長澤まさみちゃん、麻生久美子さん、仲里依紗ちゃん、真木よう子さんが
配されています。
長澤まさみちゃんを別格としても、4人とも好きな女優さんです。
綺麗だし、演技にも芯があります。

最初、この映画を見始めた時に、そのテンポの良さや
監督の個性と言うか、ペースなのであろう、カラオケ画面のような
音楽演出の登場などから、それほどこの映画には演技力や芸術性というものは
必要とされていないんじゃないかと考えさせられました。
しかし、映画をみていくにつれて、演技力はかなり必要とされていたのがわかったし、
さりげなく4人の女優さんはレベルの高い仕事をこなされていたなぁという印象を持ちました。
原作を読んだ時、そうだったのですが、この『モテキ』という作品は、
主人公を取り巻く女性たちの生々しさ、感情、思考などがリアルで鮮烈です。
そんな恋愛ごとにおける、女の細かい駆引きにしろ情感にしろ論理にしろ、
そういったものがけむに巻かれずにページに書き起こされ、さらに、今回、
スクリーンに繰り広げられたわけです。
あますところなく、でも、解説はせずに、現代の年頃の女の血の通ったスケッチが
なされていました。
そんななんですから、腕っぷしのある女優さんたちだからこそ、表現できた
のではないかと思った次第です。


さてさて。
僕なんかは、奔放な生活を送る男というよりは、むしろ幸世に近い男なので、
映画や漫画を観て、けっこう女性キャラ達にかきむしられる楽しさがあるんです。
手に負えない女ってのも、自分の脳内処理レベルを越えるシチュエーションというのもわかる。
笑ってばかりはいられない、それが『モテキ』であり、そこが良さでもあるように思います。


というわけで、かなりまとまりませんが、面白かったです。
映画作りの丁寧さと大胆さが混在しています。
原作ファン、ドラマファンは足を運ぶと良いでしょう。
一応、原作かドラマかは押さえておく必要があるかな?
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『マイ国家』

2011-09-20 19:40:50 | 読書。
読書。
『マイ国家』 星新一
を読んだ。

これほど、洒脱で、それでいて深みがあって、
たまにちらっと残酷さも垣間見せ、
読んでいて、楽しんだり、してやられたなと
感じさせられるSF作家さんって、現代の現役の人ではもう
いないのではないでしょうか。
手塚治虫や藤子・F・不二雄に通じるものもあります。
そういう、昭和が生んだ遺産の一つでもあるのでしょうか。

ただの夢物語ではありません。
使い勝手の良い、万能の未来の技術を神の上で駆使して、
その中から見えてくる人間のあざとさなんかもあります。
でも、それを醜いとか悪いとか、書いていないのです。
そういうところにこだわらないから、
ショートショートという短い形式なのもありますが、
さらっと読めてしまって、後腐れがないのが不思議な点の一つ。

とにかく、ひけらかしのない知的エンタテイメント。
知的エンタテイナーが星新一さんです。

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『日本人のための科学論』

2011-09-05 00:31:22 | 読書。
読書。
『日本人のための科学論』 毛利衛
を読んだ。

2010年12月に出版された、宇宙飛行士・毛利衛さんの本です。

今年3月の大震災に端を発した原発事故によって
揺らいだ日本の科学技術への信頼。
みなさんの中にも、原発事故発生後に転換してしまった、
戻れない原発観、ひいてはネガティブな科学技術観、未来観を持った方が多いかもしれない。
そこまではいかなくても、何かしら、世界観がかしいだ方も多くいらっしゃるでしょう。

3月以前の世界がどうだったか、その空気すらよく思いだせないようなことはないでしょうか。
本書は、本当にその直前の空気感から、科学を論じてくれている貴重な本です。
3月以前の世界から今へと取りもどせるものは、
この本から感じることから取りもどしていけばいい、
そう感じさせられる本でした。

ただ、いかんせん、気になるところの、原発への言及は浅いです。
原発事故のリスクについて考えなければならないし、そのうえで使っていこうみたいな論調です。
そのなかで、原子力発電による核廃棄物については触れられていないのは、
ちょっと残念でした。そこも、3.11以降の常態となったアタマのポジションによる、
昔は敏感さだととらえられていたような、検証の姿勢なのです。

しかし、僕はこの本を通して読んでみて、そこのところを悪くは取りませんでした。
それはそれで、良い意味での、本書の軽さ、テンポなのです。
それに、本論の部分ではありません。

本論では、横断的な総合智の重要性だとか、
科学リテラシーを広く持ちあわそうという提言みたいなものだとか、
著者の毛利さんが館長を務める科学未来館の紹介だとか
そういったことが語られていますし、第二部の対談を含めて、
十分に骨のある内容になっています、軽さとテンポの良さを失わないままに。

それ、言ってほしかったんだ!ということがちらほらでてきます。
一見役に立たない研究が、急きょ役に立つ場合もあることや、
自分の枠組みが変わることを恐れる人は、どんな本を読んでも
自分の読みたいように読んでしまって、
逆にますます自分の発想の正しさを確固たるものにしてしまい、
そういうことが、高みから批評家発言をする態度を生みだすこと、
そういう人は新鮮な発想に出会っても気付こうとしなくなること。
気をつけなきゃなぁと思わせられました。

また、自分の中に落とし込むことが大事だとも書かれています。
勉強するということは、知識をガリガリ詰め込むことじゃない、と。
僕の言葉でいえば、自らの手で練り込むことが大事かなと思いました。
ここのところは、仕事に通じる部分でしたね。
あぁ、文章を書くことにだって通じます。

そんな、気付きや新たな観点をくれる本でもありました。
すぐ読めますから、気になる方は読んでみてください。
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