Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『白石麻衣写真集 パスポート』

2018-03-31 21:56:55 | 読書。
読書。
『白石麻衣写真集 パスポート』 白石麻衣 撮影:中村和孝
を眺めた。

乃木坂46の代表的メンバーのひとり、
まいやんこと白石麻衣さんのセカンド写真集。
今世紀もっとも売れた写真集として話題になりましたね。

いやー、もうね、
こんなにセクシーな写真集だとは思いませんでした。
乃木坂って肌の露出が少ないなかで、
写真集になると水着ショットがあるよ、くらいの認識だったんですけど、
今回の白石さんの写真集はそんなレベルじゃないじゃないですか。
半分くらいランジェリー姿じゃないですか。
それも、感情に訴えてくるショットばかりですよ。
言葉を並べて表現できる類のものではないです。
言葉はいらない。
ただ眺めてみて、この写真集でしか体験できない気持ちになってみるだけです。

こりゃ、売れるわけです。

まいやんはなんか、楽屋でメンバーとわちゃわちゃやってるときだとか、
たまにそういう姿がメンバーに動画で撮られて、番組に流れていたりすると、
そのときの表情がすごくいいんですよね。
メンバーだけで仕事しているときなんかも表情がよくて、
そういうときの彼女の愛らしさって、
あの美しい容姿と相まって、親近感がわく美人さんになります。
ふつうに仕事をしているときの彼女はやっぱり高嶺の花の感が強いんですけどね。
彼女の余所いきではない、くったくない笑顔はみんなに見て知ってもらいたい。

いつかのシングルでの同封DVDに収録された個人PVで、
白石さんが彼氏とちょっとした修羅場的な言いあいをする芝居があるのですけど、
そこで彼氏が白石さんが彼女なのに、乃木坂のまいやんと握手してきたっていう
話をして、それを、白石さんがいろいろ反応するっていうものなのです。
そんなシュールなコメディの芝居がおもしろかった記憶があります。
ああいうの、とっても向いているんじゃないかなあ。

というわけで、セクシーで素晴らしき写真集でした。


Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『夢を与える』

2018-03-28 22:46:35 | 読書。
読書。
『夢を与える』 綿矢りさ
を読んだ。

フランス人のクオーターの女の子、夕子は、
幼い頃からその優れた容姿を活かすモデルの仕事やCMの仕事をこなしていた。
その夕子と彼女をささえる母や父の家族関係が絡みつつ、
中学生、高校生…と芸能界の中で成長していくさまを描いた作品。

書きだしからの最初の章の文体といったら、
才気あふれ、読む者の目を捉える、
鋭く、貪婪ともいえるようなエネルギーに満ちた感じでしたが、
中盤くらいになると、なんだか個人的に冗長に感じてきてしまいました。
それでも、中盤からラストに書けて、
とても引きつけられ、
ぐっとくる面白い作品だったという感想になって読書は終わる。

作品のテーマは難しいものだし、
触れたがる人もいないというか触らぬ神にたたりなし的に
あまり考えずにいるようなものですが、
率直な気持ちで正面から見たまま、
そらさずに、でも、考え事の世界にいってしまわず、
現実を忘れずに取り組んだような作品。

僕には夕子の、恋の熱い気持ちはわからない。
というか、きっと遠い彼方に置き忘れてしまった気持ちなんだろう。
あそこまで愚かになって傷つくことができるかどうか、恐怖感すらある。
夕子のは血の通った、それも人間としての血のリアルな濃さを感じさせる稚拙さだと思った。
否定、とか馬鹿に、とかしたくなるけれど、これは受容すべきものだ。

『夢を与える』の表題になっている
「夢を与える」という言葉自体にもきちんと考えたその意味が、
物語の他方でのひとつの落としとなっている。

この著者の本は読み通した分だけきちんとリターンがもらえる経験があったので、
今回もそうしました。
中盤で飽きてきそうにはなるんだけど、信じて読んだら信じたぶんのリターンがある。

また、
沈黙は爆音よりも怖いものだ、というような比喩。
なぜなら、爆音の後、いつまた爆音に見舞われるか
構えて緊張していないといけなくて、疲弊するから。
これは個人的な家庭環境でこそ言えることだよなあ、と
著者の綿矢さんだって楽な人生じゃないんだなと思わせられた。
若くしてデビューし、芥川賞を獲っても、
祀り上げられることに気づき、拒否し、
楽には生きないんだね。
そこらへん、またひとつ、作家だな、という気がしました。
(勝手な考察ですが)


Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

応募用短編仕上がる2018

2018-03-17 13:41:49 | days
今年の応募用短編、いちおう執筆は終えています。
これからというか、しばらく原稿を寝かせてから、
直しや校正、推敲作業に入ります。

参考文献は三冊、どれも科学関連のものでした。
ネットでもいろいろ調べていまして、
今回の短編は、そういう力を使わないと仕上げられないタイプのもので、
書いている途中にも、最後はどうまとまるのだろう、と
思案と不安に暮れることも多かったです。

設定・プロットは15枚以上の分量になりましたが、
あくまで目安としての機能で終わり、
あんまりプロット段階で決めた通りにはなりませんでした。
これも、執筆作業が大変だったひとつの要因。

しかし、プロット通りに仕上げたならば、
決まりきった展開というか、
自分の殻を破るような執筆経験はできなかったと思います。
多少なりとも前進するためには、
こういった苦しみは必要なんだろう、と考えています。

1/16から執筆を開始して、
終了が3/11ですから、
二ヶ月くらいかかっています。
400字詰めで73枚になったので、
時間がかかり過ぎといえばそうなんですが、
まあしょうがないというか。
途中で風邪をひき、熱を出して1週間くらい休みましたが、
それも、勢いに陰りをもたらした感はあります。

今まで書いたものと同じくらいのクオリティで、
とくにチャレンジもせずに書けば
1週間でこのくらいの分量はこなせるかもしれない。
スピードと質のジレンマがありますが、
今回は自分の幅を広げるための質重視だったということです。

今作は、6/20に締め切りの『オール讀物』に応募する予定です。
それまでまだ時間がありますから、
ひとまず、どんな内容だったかを忘れるくらいまで
原稿をほうっておきます。

良い結果に繋がるよう、
最後まで気を抜かないようにしないとなあ!!
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『キング牧師』

2018-03-16 21:42:32 | 読書。
読書。
『キング牧師』 辻内鏡人 中條献
を読んだ。

キング牧師は、
1950年代から60年代にアメリカで黒人差別をなくすための運動、
公民権運動を非暴力のやり方で戦った指導者です。
39歳の若さで凶弾に倒れてしまうのですが、
自分の死が訪れた時には、以下のようにしてください、という
死の二か月前の演説がありました。
「もし私の最期に立ちあうことがあったら、長々と弔辞を述べないでください。
私がノーベル平和賞を受賞したことなど言わないでください。
そんなことは重要なことではないのです。
(中略)
最期の日には、私マーティン・ルーサー・キングJr.は、
人のために一生を捧げた、と言ってもらいたいのです。
戦争の問題では、つねに正しい立場に立ったと言ってもらいたいのです。
すべての人間を愛し、仕えたと言ってもらいたいのです。」

本書はわかりやすく、キング牧師の生い立ちから運動にかかわっていくところ、
そして、成功を収め、さらに苦悩を抱えながらもあきらめない姿勢を
一定の速度で綴っています。
キング牧師は演説を中心として、その非暴力の直接抗議行動、
つまり、座り込みやデモ行進などで黒人差別、人種隔離を壊していきました。
その成功のインパクト、意志の強さや誠実さ、信念で貫いた感があって、
読んでいて気持ちが熱くなってくるくらいでした。

それにしても、アメリカは古くから奴隷制度を根幹にして発展した国ですから、
白人たちの頭には、差別意識が深いところまで刷り込まれています。
すさまじい迫害や弾圧が、民衆レベルだけじゃなしに、
警察や州知事、FBIなどの権力者までからもなされるのです。
大統領やライフ誌、ワシントンポストなどの名だたるマスコミにだって
差別が染みついている。
アメリカのもっとも深い病巣ってここなんですね。

自由の国アメリカは、アメリカになろうとしてなれないでいる国だ、と
本書に書かれていましたが、その通りだと思いました。

権力ぎらいの僕ですが、
キング牧師の「愛のともなわない権力は有害であり、
権力をともなわない愛は感傷的で非力です。」の言葉がぐっときました。
権力って愛とは無縁のものだと思っていたけれど、そうじゃないんですね。
権力ぎらいゆえに政治力も嫌いですが、
支配にならずに権力を使うとこ、勉強したいところです。

キング牧師の有名な演説の名文句である、
「私には夢がある。(I Have a Dream.)」。
キング牧師の死後、アメリカの人種問題の針は非暴力から反対のほうに振れてしまい、
いまだ解決を見ないとされていますが、
最近ではオバマさんが大統領職を全うされていましたし、
彼の遺業は未来をちゃんと照らしているのではないかと思います。
彼の夢が本当の意味で叶えられるとき、
アメリカは真のアメリカになれるのでしょう。

素晴らしい活動家ですが、
女性関係にだらしないところがあったり、
論文にたくさん剽窃があったりしたことがわかっているそうです。
自分は善人になりたいという演説をしていたこともあって、
完璧な人間ではないのです。
だからこそ、生身の人間の生身の心情を理解したうえで、
非暴力というガンジー由来の戦法で戦うことが
いちばんいいことだと若いうちから判断できたのかもしれない。

でもやっぱりその真似できない演説力と、
ニュートラルな気持ちと、
勇気ですよね。

リスペクトの念がふつふつとわき起こりながら、
読んでしまう伝記でした。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『命の格差は止められるか』

2018-03-12 15:16:58 | 読書。
読書。
『命の格差は止められるか』 イチロー・カワチ
を読んだ。

ハーバード大学の日本人教授、
イチロー・カワチ氏による社会疫学についての紹介・解説書です。

たとえば、肥満で生活習慣病になってしまったひとがいるとする。
血圧も高い、血糖値も高い、などを改善していくために、
お医者さんが薬を処方し、運動不足を解消するように促したりする。
そういうのは、健康を大きな川の流れに喩えると、
下流での対処のしかただと、カワチ氏はいいます。
社会疫学は、川の上流で対処をするための学問。
上流ではなにが起こっているかを考えると、
貧困によって粗悪なスナック菓子や惣菜などを食べざるを得なくなっていたり、
それらの営業宣伝がうまく感情に訴えることもあって、
食生活に溶け込んでしまっていたり、ということがわかる。
社会全体を鳥瞰図のように見て、
処方箋を考えようとするのが特徴のようです。
なので、個人に責任を帰することはほとんどしない。
あくまで社会の仕組みの問題であり、
個人個人を見ていくにあたっても、
行動経済学の考え方で見ていくことになります。
人間一般の行動原理としてみていくので、
個人を責めることはないのです。

本書に、以下のような引用があります。
「下流」にいるお医者さんを主人公にして、
「上流」をイメージするに適した文章です。

_____________

「岸辺を歩いていると、助けて!という声が聞こえます。
誰かが溺れかけているのです。そこで、私は飛びこみ、その人を岸に引きずりあげます。」

「心臓マッサージをして、呼吸を確保して、一命をとりとめてホッとするのもつかの間。
また助けを呼ぶ声が聞こえるのです。」

「私はその声を聞いてまた川に飛び込み、患者を岸まで引っ張り、緊急処置をほどこします。
すると、また声が聞こえてきます。次々と声が聞こえてくるのです。」

「気がつくと私は常に川に飛び込んで、人の命を救ってばかりいるのですが、
一体誰が上流でこれだけの人を川に突き落としているのか、見に行く時間が一切ないのです。」


_____________

この「上流」を本書では、パブリックヘルスと呼んでもいます。

おもしろかったのが、
肥満は伝染する話です。
細菌やウイルスによって伝染するというのとは違いますが、
調査によって、わかっていることだそうです。

肥満の人が身近にいると、50%の確率でその友だちは肥満になるそうです。
肥満の友だちと直接関係が無くても、
肥満の人の友だちの友だちは20%の確率で肥満になる。
友だちの友だちの友だちにいたっては10%の確率で肥満に。

僕はこれってミラーニューロンが何か
影響しているのではないかなあと思いましたが、
仮に影響していても、たぶん小さい影響で、
なにがしか、脳全体に関わるような影響がありそうに思えます。
心理学的にはもう無意識の領域かもしれない。

また、現行の非正規雇用は不健康を産むだとか、
流れ作業が大きなストレスを産むだとか、
話の流れの中で登場する数々のトピックがどれも興味を引きました。

理想の労働環境について、図を用いて説明してくれたり、
高い教育を受けた者は健康である確率が高いことを教えてくれたり、
人との触れ合い、それが具体的な助けではなくても、
なにがしか助けたり助けられたりしているというソーシャルサポートの話があったり、
200ページちょっとのなかで、盛りだくさんでした。
でも、整理されているので、ごみごみしていない本で、読みやすいんですよ。

最近では受動喫煙制限の話題がありますが、
これなんかは法律でどうにかしようとしている。
つまりは、社会疫学、パブリックヘルスの考え方でやっているってことです。

著者は、日本の絆や繋がりといったものが
どうやら長寿に関係していると見ています。
日本の外にいると、それが顕著にわかるそうなんです。
日本の内側にいると、近所づきあいだとか面倒くさいなあ、なんて
思う人は多いと思うのですが、
そうであっても、長寿の恩恵はそういうところから来ているとしています。

日本の平均寿命は長らく世界No.1でしたが、その座から陥落しているそうです。
格差社会の到来がその原因ではないかと本書は言っています。
この長寿No.1の座に復権するためにも、
健康目線で社会を変えていこう、という志が根底にある本です。
幸せに長生きできて、さらに健康状態であれば個人としてもすばらしいことだし、
国家としても医療費削減は喜ばしいことです。
WinWinの状態に持っていくためには、まだまだ研究も実践も足りないようですが、
こういった分野があるってことは喜びたいですよね。

良書でした。


Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『百瀬、こっちを向いて。』

2018-03-07 15:27:42 | 読書。
読書。
『百瀬、こっちを向いて。』 中田永一
を読んだ。

恋愛短編小説集。
甘酸っぱくも、ときにユーモラス、ときにコミカルで、
簡便な言葉遣いで進んでいきますが、
存分にハートをつかまれてしまうおもしろい作品群でした。

イージーな言葉遣い、とくに平仮名を多用するのは、
若い人の中でも、あまり本を読まないようなひとでも
楽しんで読めるためなのかなあ、
そういう層を中心視したエンタメなのかなあと思いました。
とはいえ、僕みたいなアラフォー男が読んでも、
「おもしろかったーー!」とたいへん気持ちがよくなるくらい、
ちゃんとした作りです。
語られることは懐かしい気持ちにさせるところもあるけれど陳腐じゃないし、
読書時間が好い時間として過ごせました。

そうなんですよね、
人によっては文章の簡便さゆえに
物足りない恋愛小説かもしれないですが、
僕にとっては大切なものが語られているなあと思える作品群だったのですよ。

このくらいのイージーさでちゃんと楽しませてくるものを作られると、
書き手としてはプレッシャーになる(アマチュアだとしても)。
とくに今書いているものが難産だと余計に。

表題作の「百瀬、こっちを向いて。」は出会いがしらの序盤こそ、
ライトノベルって読んだことが無いけれど、
これがライトノベルっていう感覚の文章なのかな、と感じましたが、
1/3くらいを過ぎるとじっくり読めるものとして、
文章を目で追っていました。
最後の作品、「小梅が通る」がこのなかでもかなりお気に入りになりました。

無事平穏にきらきらとして、さして大きな問題も無い日常を過ごしている人より、
コンプレックスがあったり問題を抱えていたりして、
日常を過ごすのすら息苦しさがあったりする人が主人公のほうが、
読んでいるこっちの気持ちがほぐれてくるというか、
やさしくなってくるのはどうしてなのでしょう。

本作品集、4編のうち、3編の主人公が女子です。
男性作家で女子の一人称でおもしろいのは太宰治の「女生徒」ですが、
太宰のライバル格としてもいいくらい、
今作の女子目線短編は面白かったです。
女子のなまめかしさみたいなのがでてくると、もうノックアウトでしょう、
そのあたりを突き詰めるのは書き手としておもしろいかも、
と無責任かつ無邪気に思い浮かべてみるのでした。

本作こそ、おすすめしたいなあと思える本です。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『近代の呪い』

2018-03-02 00:00:05 | 読書。
読書。
『近代の呪い』 渡辺京二
を読んだ。

国民国家の成立以来、つまり近代化以来、
国民は自立性を喪っていっているとする論考など、
現代を見つめるために役立つ、
近代というものを教えてくれる本。

熊本大学での講義を書籍化したもので、
・近代と国民国家
・西洋化としての近代
・フランス革命再考
・近代のふたつの呪い
の4話と、
大佛次郎賞を受賞したときの講演
・大佛次郎のふたつの魂
の五つの章からなる新書です。

民衆と市民の違いとはなにか。
僕はEテレ「100分de名著」という番組の
ハンナ・アーレントの回で
解説の仲正昌樹さんが平易に説明してくれていたことで
その違いを知ったのですが、
本書ではそのあたりももう少し深く、
近代と結び付けて解説してくれいて、
このトピックについて何か読みたいところだったので、
渡りに船といった体で読むのを楽しみました。

要するに、
民衆とは、国家天下のことはどこ吹く風で、
自分の周囲の出来事にしか関心が無く、
そういった生活圏で楽しんで暮らす人々。
比べて市民とは、その国家の構成員であることを自覚していて、
政治について経済について、
いろいろ勉強したうえでコミットしていく種類の人たちをいいます。

昨今の文化人には「みんな、市民になろうぜ」
っていう種類の言説や思想が多いですよね。
良いか悪いかは、
本書について、その良し悪しについて解説があります。
なるほどなあと思いますよ。
どっちに傾くかにしても、
極端に100%針が振れるようなのは害悪になりますね。

近代の呪いのふたつの面についても、
端的に言ってしまえば、
ナショナリズム化していく構造的な面と、
人間中心主義ゆえに自然を消費するものとしてとらえてしまうがゆえに、
生まれてから死ぬまで人工的世界に浸ってしまう貧しさ、
もっと言えば、それは間違いなんじゃないかと著者は言ってますが、
そういった社会構造や心理の面に疑問を持とうと訴えています。

本書では、近代を考えていくことで、
そういった現代の病巣がみえていくかたちになっています。
フランス革命とはなんだったか、だとか、
近代化といえば人権・平等・自由の獲得だが、
そもそもそれは真実なのか、といった見ていき方があり、
つぶさにみていくことで、
さきほど書いたような、近代の呪いと結びつく。

滋味の感じる語り口の文章です。
それでいて論理的で非常に有機的な近代論になっています。
しっかりしていて興味深く教えられる好著だと思いました。

著者の代表作『逝きし世の面影』は名著として名高いようで、
ツイッターなんかでも、たまに良い評判を読むことがあります。
これはまだ未読なんですが、いつか読んでみたいですね。


Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする