リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

苦手鍋

2011-03-04 07:58:37 | オヤジの日記
昨日は、雛祭り。

昨年の7月から我が家に居候をしている中学3年の娘のお友だちが、3月1日、都立高校の一般入試に合格した。
これで、晴れて4月から娘と同じ高校に通える。

めでたい!

ということで、雛祭りと娘たちの合格祝いを兼ねた晩メシを作ることにした。
スーパーなどでは、雛祭りと言えば「チラシ寿司」という風潮がある。
それは、チラシ寿司の華やかな彩から連想したものだろうと思われる。

しかし、我が家では雛祭りと言えば、伝統の「苦手鍋」。


ん? 苦手鍋? なんじゃ、そりゃ?


これは、おそらく世界中で「Mサンち」しかやっていない風習だろう。
だから、自慢できる。

出汁は、日高昆布と鰹節、煮干で作る。
1リットル分の出汁を作ったら、カセットコンロの上に、直径40センチの土鍋を乗せ、出汁を入れる。
そして、日本酒を300cc投入。
沸騰させる。

火を止めて少し冷ましたあとで、水を500cc追加。
火をつけて、短冊切りにした大根、人参を入れる。
他に椎茸、豆腐、白菜の硬い部分を入れて煮る。
10分程度煮込んだら、白菜の葉の部分を入れる。

次に、各自の嫌いな食材を入れていく。
だから、苦手鍋。

たとえば、息子は春菊が嫌いだから、春菊を入れる。
娘は、エノキ。
娘のお友だちは、マグロが嫌いだから、マグロを入れる。
ヨメは、里芋。
私は、コンニャク。

その後、中力粉で作った、手打ちの太っといウドンを投入。
最後に、濃口の醤油とみりん、おろし生姜、ニンニクのみじん切りで作ったタレを回しかけ、10分ほど煮込む。

あとは、安い豚のしゃぶしゃぶ肉5人前を皆で、シャブシャブする。

そして、締めは苦手の食い物を克服するという儀式。

ただ、苦手なものを食うだけでは、楽しみがない。

苦手を楽しく克服するために、ご褒美を用意するのである。

封筒が5つ。
表には数字が1から5まで書いてある。

中の4つには、千円札が1枚ずつ入っている。
残りの一つの封筒には、千円札6枚が入っている。

つまり、5人のうちの一人だけが「6千円長者」になれるのだ。

苦手を早く克服した順番に、数字の書かれた封筒をランダムに引いていく。
ただ、どの封筒に6千円が入っているかは、わからない。
千円札1枚の封筒にもダミーの紙が入っているから、手触りで判断できないようになっているのだ。

今回、真っ先に苦手を克服したのは、コンニャクを食うと失神する特技を持つ私だった。
のどに詰まりそうになって、失神しそうになった。
その次が息子。そして、ヨメ、娘、居候の順番。

居候は涙目になって、マグロを長い間、頬っぺたに含ませていたため、頬がハムスター状態になっていた。
20分近く、ハムスターだった。

皆が食い終わって、一斉に封筒を開ける。

6千円を手にするのは、誰か!?

・・・・・・・今回は、ヨメだった。

勝者は、ヨメ。

ヨメが、ガハハハハ、と笑った。
6枚の千円札を手にしたヨメは、誇らしげだ。


しかし、この「苦手鍋」は、ここで終わるわけではない。

勝者が勝ち誇った顔で立ち上がり、他の4人を呼び捨てにしながら、千円札を一枚ずつ分け与えるのである。
そのとき、勝者は、相手を呼び捨てにしながら、日ごろ言えないことを言う権利がある。

たとえば今回、勝者であるヨメは、私に向かってこう言った。

「サトルよ。もっと自分の体を労われ。休むことも仕事だと考えよ。この、愚か者が!」

ははー!(ひれ伏して、千円札をいただく)

勝者は、他の者にも有り難いお言葉を投げ与え、神のような慈悲を持って、千円札を分け与えた。

その結果、誰もが等しく2千円のご褒美を得て、みなの晴れやかな笑顔が座に満ちたところで、この「苦手鍋」の幕は閉じる。

めでたし、めでたし!

何と心温まる儀式であろうか。


だが、そんなめでたい空気が座に溢れていたとき、この儀式に始めて参加した居候が、娘に向かって言った。

「なあ、おまえんちって、毎年こんなことやってるのか! 誰だよ、こんなバカなこと考えたの」


その言葉を受けて、瞬速で、ヨメ、息子、娘の視線が、私に集中した。


・・・・・・・・・・(冷たい視線)。


やはり、俺は、バカだったのか・・・・・(泣)。