8月12日 サンデーモーニング
6日に広島で
9日に長崎で
被爆から67年となる原爆の日を迎えた。
松井広島市長
「“核と人類は共存できない”という訴えのほか
様々な声を反映した国民的議論が進められている。」
田上長崎市長
「放射能に脅かされない社会を再構築するための
新しいエネルギー政策の目標と
そこに至る明確な具体策を示してください。」
広島、長崎の両市長は
原発事故後の新たなエネルギー政策の確立をともに訴えた。
式典であいさつに立った野田総理は
「脱原発依存の基本方針のもと
中長期的に国民が安心できるエネルギー構成の確立をめざす。」
その一方で大飯原発の再稼働に踏み切った野田政権。
広島の記念式典に参列した福島県浪江町の馬場町長からは
「中長期なんて言う言葉で言い表してもらいたくなかった。
ほんとにやる気があるのかどうかわからない。」
今後のエネルギー政策をめぐっては
将来の電力に占める原発の割合で
3つの選択肢について国民から意見を聞く討論型世論調査が開かれたが
その方向性はまだ定まっていない。
さらに原子力そのものの理解の難しさや
原発の安全神話が議論の大きな壁となってきたのである。
ところが日本とは対照的に
福島第一原発の事故後
わずか2か月半で脱原発に踏み切った国がある。
ドイツである。
フランスなどから電力を輸入しているとはいえ
あえて国を挙げて脱原発の方針を掲げた。
去年5月30日 ドイツ メルケル首相
「私たちは一歩一歩
2022年末までにすべての原子力から脱却します。」
去年4月
ドイツ政府は
哲学者・宗教家・政治家ら17人で構成される原発問題倫理委員会を設置。
技術や経済効率ではなく
社会的な意義や価値
いわゆる“倫理”の面から原発の是非を議論した委員会は
・10年以内に脱原発は可能
・撤退は倫理的に十分根拠があり義務である
とした報告書を提出。
これを受ける形で政府は脱原発の方針を正式決定した。
原発問題倫理委員会 クラウス・テプファー委員長
「脱原発は簡単な道ではなく非常に苦しい挑戦となります。
それでも技術的に可能か
あるいは経済的利益のみで判断してはいけない。
リスクが高い原発技術を別の技術に置き換えることができるなら
そうしないのは倫理的に見て許されないこと。」
原発事故の大きなリスクを考え
経済的利害ではなく倫理的な価値判断に基づいて
脱原発を選択したドイツ。
かたや戦後67年
反核を訴えながら
一方で原子力発電を推し進めてきた日本。
総合研究大学院大学 池内了教授
「日本は原爆の洗礼をあびた。
反原爆という倫理は強くある。
それに対して原子力の平和利用は原爆とは違う。
それならば許さると人々は考えた。
原発が持つ反倫理性よりも便利さの方にひかれてしまった。」
「政治のこと経済のことはお任せして
我々は生活さえ送ればいいと
豊かさ便利さを手に入れてきたが
今度の事故が起こるまでそれが何をもたらすか考えなかった。」
原発事故から1年5か月。
今年も迎えた原爆の日。
市民の間に核や原発の是非を問い直す動きが少しずつ広がっている。
しかし一方で政治は
依然政争に明け暮れ
倫理面などから新たに原発を問い直そうとしているようには見えない。
原発問題倫理委員会 ミランダ・A・シュラーズ委員
「日本に30年行き来しているが
日本もドイツのように将来を考えるチャンスだと思う。
新しい経済・新しいエネルギー制度・新しい民主主義も作れるチャンス。」