8月18日 海外ネットワーク
ヒマラヤ山麓の小さな国ブータンは幸せの国として知られている。
仏教の教えに基づいた幸せの価値観は世界中から注目されている。
7年前の調査では国民の97%が幸せと回答したことから
世界の注目を集めた。
国力や経済規模を計る指標のひとつとしてGDP国内総生産が使われるが
ブータンはGNHGross National Happiness 国民総幸福量を掲げていて
国民の詩浅瀬を国民の基本とし
政策にも反映させている。
そのブータンでは今 伝統的な社会が変わり始めている。
ブータンでは人口70万人の60%が農業に従事している。
国民のほとんどがチベット仏教を信仰している。
GNHも足るを知るという仏教の教えに根ざしている。
首都ティンプーの小学校。
授業ではつつしみやいたわりといった考えが強調されている。
この日の英語の授業でも幸せについて問いかけていた。
「無制限にほしがらず今あるものに満足しましょう。」
しかしこの国にもグローバル化の波が押し寄せている。
インターネットとテレビが13年前に解禁され
消費ブームが若い世代を中心に急速に広がっている。
今年オープンしたスーパーマーケットの商品の9割を輸入品が占めている。
食生活を楽しみたいという人たちが数多く訪れている。
アメリカの香辛料や日本の醤油まで並んでいた。
「外国からの輸入品がたくさんあって品質もいい。」
「ここに来るとつい買いたくなる。」
この5年間で
車や建設資材など隣国インドからの輸入額は3倍近くにまで膨らんでいる。
その結果 今年3月
支払いに充てるインドルピーが底をついた。
ブータンでは市民が日常的にルピーを使っているため
手に入らなくなることを恐れた人たちが銀行の窓口に殺到した。
加熱する消費に危機感を抱き
今年4月 首相が異例のテレビ演説を行った。
ブータン ティンレイ首相
「消費に歯止めをかけなければ経済が混乱する。
私たちは行動を改めなければいけない。」
政府は次々と対策を打ち出す。
4月 自動車の輸入を当面禁止した。
6月には国王も協力してニュースがこんな放送された。
「国王陛下自ら自転車で中心部を走りました。」
車の乗り入れを規制する日を設け
急激な車の増加を抑えようという狙いである。
消費についての市民の意識を変えようと
政府がテレビドラマの制作にも乗り出した。
無理なローンを組んで車や家を購入する人が多いことから
計画的なお金の使い方を知ってもらう目的である。
「借金して買わない。
お金を使いすぎない。
本当に必要なのか考えてほしい。」
大学2年生のカルマ・ヤンゾン・ドルジ(20)さんは
伝統衣装より洋服が好きだという。
最近のお気に入りは韓国製の服。
買い物に使うお金は多い月には3万円で
公務員の月給に相当する。
商店を経営する親が支払っている。
オンラインショッピングにも夢中で最近はインド製のアクセサリーを買った。
「洋服を買うのが好き。
欲しいものが手に入ったら幸せ。」
カルマさんと離れて暮らす祖母のツェリン・ザムさん(63)は
米農家として自給自足に近い質素な生活をしている。
調理にはまきを使い
毎日お祈りを欠かさない。
「お祈りをすると仏様がすぐそばにいるように感じる。
幸せだと心から思える。」
カルマさんは小学生のころまで一緒に暮らしていた。
夏休みに久しぶりに祖母のツェリンさんを訪ねた。
普段は洋服のカルマさんも今日は伝統衣装のキラを着ている。
伝統衣装を大事にするよう
いつもツェリンさんから言われているからである。
「都会の方が好き。
世代間のギャップは感じる。
おばあさんの若いころには今のようなものがなかったから。」
物が豊富にあることが本当に幸せなことなのか
ツェリンさんは孫たちにもう一度考えてほしいと感じている。
「お金で買えるものに興味はない。
孫の世代の暮らしはずいぶん変わってしまったけれど
これまで守ってきた伝統を受け継いでもらいたい。」
グローバル化によって急激に変化するブータン。
幸せのとらえ方にも変化が生じている。
世界の幸福度ランキング 出典:レスター大学社会心理学Adrian Whites
1 デンマーク
2 スイス
3 オーストリア
4 アイスランド
5 バハマ
6 フィンランド
7 スウェーデン
8 ブータン
9 ブルネイ
10 カナダ
90 日本