8月15日 おはよう日本
Sleepless Night(Standing) 1997
日本を代表する現代アートの作家
奈良美智(ならよしとも)さんは
釣り目でちょっと怖い顔つきの少女の作風の絵で人気を博している。
奈良さんがこの夏
これまでとは違った雰囲気の作品を披露した。
そのきっかけになったのは去年3月の震災だった。
100点以上もの新作が並ぶ奈良美智さんの個展
君や 僕にちょっと 似ている
横浜美術館(~9月23日)
My Bear (2012)
One Foot in the Groove (2012)
新しい作品には
これまでとは趣の異なるやわらかさやあたたかさが感じられる。
奈良美智さんは現在52歳。
若いころ海外で活躍していた奈良さんは
11年前の横浜での個展で一躍人気作家となった。
しかし急激に注目を浴びたことで奈良さんは
自分を見失いかけたと言う。
「自由さや自分を見つめる時間がどんどん無くなっていった。」
そして去年3月の東日本大震災。
青森出身で東北に知人も多い奈良さんは
被災地を目の当たりにして大きな衝撃を受ける。
「すごい虚無感と自分の無力さ
被災地の方々や被災状況を思って
自分は何ができるんだろう?
何もできない・・・。
白いキャンバスに筆で絵を描くなんてできない。
そんなことして何になるんだ。」
苦しむ奈良さんを救ったのは
母校の後輩と作品を作るという体験だった。
去年の9月から半年間
学生時代をやり直すような気持ちで
初めての粘土を使った彫刻作品に挑んだ。
「何か表現することは続けたい。
そうでないと自分の再起がない。
自分がまず立ち上がって自分自身がしっかりしないといけない。」
そして完成したのが高さ150㎝を超える力強い作品。
ちょっと意地悪 (2012)
「体当たり。
そこに考えはいらない。
体が考えてくれる。
筋肉で考えてくれる。
手が勝手に動いていく。
粘土と格闘した跡。」
この体験を経て奈良さんは再び絵画作品に向かう力を取り戻した。
下絵を描かず直接絵具を重ねていく。
イメージがわき起こるたび新たに描きなおしているかのようである。
「体当たりで始めて
ふとした瞬間に見える。
完成形みたいなものが。」
生み出されたのはどこか穏やかさを感じさせる少女だった。
夜まで待てない (2012)
幾重にも重ねられた色が深くあたたかな感情を呼び起こす。
「以前はポップでとがって戦闘的な感じ。
あたたかいものを感じた。」
「挑戦して自分を更新している感じ。
見ていて勇気が出る。」
奈良美智さん
「昔の作品には
甘さやなめている感じのものが多かった。
姿勢を正して
気をつけをして
真面目に取り組むようになった。」
春少女 (2012)