8月18日 海外ネットワーク
世界各国でヒットしたハリウッド映画が公開。
記念イベントには大勢の人が詰めかけた。
アメリカのコミックのヒーローたちが集結した「アベンジャーズ」。
興行収入は「アバター」「タイタニック」に次いで歴代3位。
登場したヒーローたちは
アメリカの大手出版社マーベルの作品に登場するキャラクターである。
なぜ世界中でヒットしたのか。
その裏にはキャラクターを最大限生かした緻密な戦略があった。
公開された「アベンジャーズ」の最大のアピールポイントは
原作が異なる7人のヒーローの競演である。
自ら開発した戦闘用のスーツを身に着け戦うアイアンマン。
神の世界で最強の戦士ソー。
怒りで興奮すると巨人に変身するハルク。
そして強大な力を持つ兵士に改造されたキャプテン・アメリカ。
設定も能力も全く違うキャラクターたちが
反発しながらも団結し
地球侵略をたくらむ敵と戦う。
ジョス・ウェドン監督
「ひとつの映画の中で
7人それぞれがパワー・個性を発揮できるようにするのに苦労した。
日本の『7人の侍』を意識した。」
個性的なキャラクターたちを前面に押し出すことで
世界中の観客をひきつけたこの映画。
じつは何年も前から入念な布石が打たれてきた。
4年前に公開された映画「アイアンマン」で
物語の最後で突然アベンジャーズのキャラクターが登場するのである。
今回の作品につながるヒントは
それぞれを主人公にしたこれまでの映画すべてに隠されていた。
観客の関心を引き期待を高める効果を狙ったのである。
原作が異なるヒーローたちの競演は
日本とは違ったビジネスモデルによって実現した。
映画を製作した出版社マーベルのコミックに登場するキャラクターは
約8,000。
作者がキャラクターの権利を持つ日本とは違い
すべてのキャラクターの権利は会社が持っている。
会社がストーリーを作り
契約しているイラストレーターに絵を描かせて
作品をつくっている。
こうした仕組みが
異なる作品のキャラクターを自由に組み合わせた映画作りを可能にした。
プロデューサー ケビン・ファイギ氏
「普通なら白紙の状態から映画を作るが
私たちの最大の強みは
何千もの魅力的なキャラクターをすでに持っていること。
キャラクターを自由に使うことで
大ヒットを狙った。」
「アベンジャーズ」が生まれた背景には
今のハリウッド映画を取り巻く事情も深くかかわっている。
去年 世界で公開された映画の興行収入の上位8作品は
いずれもこれまでに公開された映画の続編である。
ハリー・ポッターと死の秘宝 Part2
トランス・フォーマー ダークサイド・ムーン
パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉
トワイライト・サーガ ブレイキング・ドーン Part1
世界的な不況で映画の製作費を集めることが難しいなか
手堅くヒットが見込める作品が求められている。
リスクを最小限に抑え大きな収益を狙いたい。
そうした状況の中で「アベンジャーズ」は生まれた。
プロデューサー ケビン・ファイギ氏
「製作費はかかったがキャラクターの力を信じた。
今後 どう展開できるかわくわくしている。」
キャラクターを最大限に生かした戦略。
今 映画の原作のコミックについても
キャラクターの魅力を引き出そうとしている。
マーベル C.B.セブルスキー上席副社長は世界中を飛び回って
作品を描くイラストレーターをスカウトしている。
キャラクターをさらに魅力的にするため
心の動きなどより豊かな表現が可能な人材を探している。
マーベル C.B.セブルスキー上席副社長
「キャラクターを魅力的にし
心あるストーリーを作ることが重要。
世界中どこの住んでいても
どんな言葉を話しても関係ない。
世界の誰の心にも訴える作品になる。」
東京に住むタケダサナさんは
日本に3人しかいないマーベル作品のイラストレーターの1人である。
これまでに30近い作品を描いてきた。
タケダさんの絵は
従来のアメリカのコミックとは大きく異なっている。
同じキャラクターでも繊細なタッチで人物の内面まで表現されている。
タケダサナさん
「たとえばアメリカのコミックだと
笑うにしても二カッと笑う表現が多いが
日本人の表現はもっとある。
そのへんを自分で表現しつたえていければいいなと。
キャラクターの表情とか仕草とか
従来のアメコミにはない繊細さがあり
そこが好きと言ってくれる人が多くて
やっててよかったなとすごく思う。」
タケダさんのもとには世界各地から称賛の声が届いている。
マーベル C.B.セブルスキー上席副社長
「アメコミは仮面にコスチュームの単なるヒーローものと言われてしまう。
でもそうじゃなくて本当はキャラクターの内面が大事。」
権利を持つ複数のキャラクターを自在に組み合わせ
その魅力を最大限に生かした新たな映画作り。
日本でも作品が受け入れられるのか
注目される。
マーベルの戦略はまだある。
ファン層を拡大するために
ブラジル、中国、ロシアなどのファンの心をつかもうと
インドを製作の舞台にしたり
ロシアの美人スパイを登場させる。
この映画のアメリカ以外の興行収入 Box Office Mojo
1 中国 8,410万ドル
2 イギリス 8,060万ドル
3 ブラジル 6,320万ドル
経済発展の巨大なマーケットに狙いを定めた
アメリカ映画のの巧みな戦略である。