8月25日 NHK海外ネットワーク
アスリートが競い合ったロンドンオリンピック。
競技でよく目にしたのがタトゥー(入れ墨)だった。
米 ニューヨーク・タイムズ
「オリンピックのマークを彫ることは代表に選ばれた証。」
もはやタトゥーはタブーではないと言い切るメディアもあった。
18歳以上の5人に1人はタトゥーを入れているといわれるアメリカ。
一方で規制の動きも出ている。
警察や軍は規則でタトゥーを制限。
リトルロック市警察
「警察はタトゥーを見せない方針だ。」
ニューヨークのタイムズスクエアで1時間足らず見聞きしたところ
約50人がタトゥーをしていた。
人気のきっかけはスポーツや音楽のスターのタトゥー。
バスケットボールはタトゥーを入れたスター選手が多い。
レディー・ガガも。
体を使ったアートとしても認識されるようになっている。
個人の権利や表現をとりわけ尊重するアメリカだが
しかしかつて強かったギャングや犯罪者といった
マイナスのイメージが完全になくなったわけではない。
タトゥーの規制に乗り出す動きも相次いでいる。
米海兵隊 一等軍曹
「海兵隊では4つを超えるタトゥーを入れてはいけない。
タトゥーを入れるつもりならやめましょう。」
過酷な任務で知られる海兵隊は
5年前 腕全体や首・顔に入れることを禁止した。
プロ集団としてのイメージが損なわれるというのが理由である。
いまでは指・手・足などにも範囲を広げ
規則にも
“タトゥーは昇進を妨げる要因になりうる”
と明記している。
規則は海軍と陸軍でも強化されている。
人種差別や性的描写の禁止など
デザインにも規制が及んでいる。
警察も規制に乗り出している。
南部アーカンソー州の州都リトルロック市警察では
人目を引くようなタトゥーを入れた警察官が増え始め
対策を検討してきた。
今年4月からは潜入捜査にあたる捜査員をのぞいて
服で隠せないタトゥーは禁止。
見える場合はサポーターなどで隠さなければならなくなった。
リトルロック市警察 広報担当 テリー・ヘイスティングスさん
「多くの若者はタトゥーに違和感を持っていないが
年配の市民は違和感を持つ人もいる。
警察への良いイメージが打ち出せないなら
地域社会の警察の権威が揺らいでしまう。」
夏場でも長袖の制服を着ているドリュー・ガリソンさん(27)は
規則を守りながらタトゥーを楽しみたいと考えている。
非番の日 ガリソンさんはTシャツ姿でタトゥーショップを訪れた。
日本の模様が好きで腕には侍のタトゥー。
「ここがあいているから日本をテーマにしたタトゥーを
新たに付け加えたい。」
ロックミュージシャンの影響でタトゥーを入れたガリソンさん。
大事なことは節度だと考えている。
「プライベートでは肩まで見えるシャツを着てバイクに乗り
みんなにタトゥーを見てもらう。
でも手やのどには絶対に入れない。
自分なりの基準をちゃんと持っているつもりだ。」
その一方でタトゥーを入れたことを後悔する人も後を絶たない。
クリニックにはタトゥーを消したいと駆け込む人が増えている。
この日は病院で検査技師をしている男性が訪れていた。
「白衣の袖は肘の上なので。
だからできればこれを・・・。」
レーザーでの治療には10回以上の通院が必要な場合もあり
治療費もタトゥーを入れる費用の何十倍もかかることもある。
しかも完全に消すのは難しいということである。
美容整形クリニック スザンヌ・イー医師
「彫ったことを後悔する若者がおおぜい来る。
将来の仕事まで考えていないため就職に影響してしまう。」
トロント大学 マイケル・アトキンソン准教授
「タトゥーを入れる人は劇的に増え
もはや制御できない状況になっている。
価値観や規範が激変している。
何が適切で何が適切でないのか
まだ社会的な指針が出来上がっていない。」