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映画の巨匠が語る“危機のリーダー”論

2013-01-22 09:51:32 | 報道/ニュース


  1月12日 海外ネットワーク


  (スピルバーグ監督)
  「アメリカの歴史で最悪の危機の時代に国を導いたのがリンカーン。
   彼は国家を存続させるのに誰よりも大きな役割を果たした。」

  アメリカ16代大統領 リンカーン(1809~65)。
  アメリカの歴史で最も偉大な大統領といわれる。
  南北戦争を戦い抜き奴隷解放を実現した指導力。
  (スピルバーグ監督)
  「偉大な大統領は国家の危機に向き合い
   試されることで生み出される。」
  
  19世紀半ば アメリカは南部で綿花などのプランテーション大規模農園で
  黒人が奴隷として働かされていた。
  そこへ奴隷制に反対するリンカーンが大統領に当選したが
  これに対し南部の6つの州が合衆国から離脱。
  南北戦争が勃発する。
  リンカーンは国が分裂するかどうかの危機の時代の大統領だった。
  その危機を乗り切るためには軍事的に南部を屈服させるとともに
  奴隷制度の廃止が不可欠だった。
  国を守るためにも奴隷制を廃止する。
  合衆国憲法修正第13条を超党派で成立させなければならない。
  その難局をどう乗り切ったのか。

  奴隷制度をめぐって北部と南部が対立し50万人超が死亡した南北戦争。
  南部連合の軍が一時 首都ワシントンに迫るなど
  アメリカは国家分裂の瀬戸際にあった。
  この危機に立ち向かったのがリンカーンだった。
  (スピルバーグ監督)
  「リンカーンは現代でも重要性を失っていない。
   リーダーとはいかなる存在であるべきか明確に示しているからだ。」
  戦争を終わらせるとともに
  戦争の原因となった奴隷制度をなくすため
  リンカーンがやらなければならなかったことは
  奴隷制禁止を憲法に明記することだった。
  映画「リンカーン」では議会での激しい攻防が描かれている。
  「議会が決めることではない!
   神が人を不平等に創ったのだ」
  「私は憲法う修正第13条に署名する。」

  (スピルバーグ監督)
  「とても重要な出来事なのによく知られていない話を取り上げた。
   憲法修正第13条を成立させる戦いだ。」
  アメリカ合衆国憲法修正第13条
  奴隷制および本人の意に反する苦役は(中略)合衆国またはその管轄に服する
  いかなる地においても存在してはならない

  この一文を憲法に加えるのは難航を極めた。
  議会下院で3分の2の票が得られないと成立しなかったからである。
  立ちはだかる奴隷制度支持派の議員たち。
  リンカーンは支持派を切り崩し
  なんとしても3分の2を確保しなければならなかった。
  「まだ20票足りません。」
  「たった20票か。」

  ロビイストを雇いあらゆる手段を尽くすリンカーン。
  戦時下でも民主主義の手続きにのっとることが国の礎を創る
  という強い信念があった。
  投票間際にあと数票とどかないと弱音を吐く側近にリンカーンはきびしく迫る。
  「戦死者のためにも決断は
   今だ!今!今しかない!」

  (スピルバーグ監督)
  「最後はリンカーンがたった1人で決断した。
   リーダーは本当に孤独だ。
   彼は偉大な業績を残した。
   民主主義が有効な仕組みであり
   建国の時代から受け継がれてきた憲法が
   アメリカの自由・チャンス・寛容さの礎であることを示した。」

  スピルバーグ監督は国が二分したリンカーンの時代と
  現在のアメリカの政治状況はよく似ていると指摘する。
  (スピルバーグ監督)
  「映画の構想を練りだした1999年は政治の分断はここまで大きくなかった。
   しかし今回の大統領選挙で分断は南北戦争以降最悪になっている。」
  
  映画はリンカーンの人としての魅力にも光をあてている。
  若い兵士に対しても真摯に向き合い
  人間は皆同じだ
  と直接語りかける、
  (スピルバーグ監督)
  「大統領は自らが導く国民に対して
   真に思いやる心と優しさを持たなければならない。」

  リンカーンが目指したアメリカ。
  それは南北戦争の行方を決した戦地ゲティスバーグ演説に込められている。
  人民の人民による人民のための政治を地上から絶滅させない
  (スピルバーグ監督)
  「偉大な大統領は国家の危機に正面から向き合い試されることで生まれる。
   ルーズベルトは大恐慌と第2次世界大戦で試され
   ケネディはキューバ危機で試された。
   リンカーンは誰よりも未来を見通し
   歴史を知り
   深く自分に向き合っていた。
   それこそが大統領の資質だ。」

  奴隷制度が廃止されても
  選挙の投票権が黒人に完全に与えられるまでには100年以上かかっている。
  そのアメリカを黒人のオバマ大統領が率いている。
  リンカーンを最も好きな大統領だとオバマ大統領は話している。
  この映画を観て
  大統領の内情に迫った作品だと
  感動したという。
  高い理想とモラルを追及するには嫌な仕事も引き受けなければならない
  妥協も必要なことをこの映画から学んだ
  また困難な時代に正しい方向に導くことがいかに大切か
  ということを話していた。

  映画「リンカーン」は10日 
  アカデミー賞の作品賞や監督賞など12の部門でノミネートされた。
  発表は2月24日
  日本での公開は4月。

  
  


  
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