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戦後の裏面史を銀幕に綴った名優

2014-12-06 07:30:00 | 編集手帳

12月2日 編集手帳

 
逮捕された組長二人が裁判所の廊下ですれ違い、
言葉を交わす。
菅原文太さん演じる「広能」が小林旭さんの「武田」に語る。
〈もう、
 時代は終(しま)いで…〉。
映画『仁義なき戦い・頂上作戦』のひとこまである。
 
続くセリフを笠原和夫さんの脚本から引く
極道で)十八年も経(た)って、
口が肥えてきたけんのう。
わしら、
野良(のら)突 く程の性根はありゃせんのよ〉
 
野良突く性根とは、
身を捨ててでも反逆児たらんとする覚悟のことだろう。
シリーズで野良を突いて、
突いて突き果てた主人公のセリフだけに哀れが深い。
 
菅原さんが81歳で亡くなった。
仙台一高の新聞部では井上ひさしさんの1年先輩にあたり、
井上さんの書く原稿を片っ端から破り捨てたという“伝説”が残る。
記者の道には進まなかったが、
ギラギラと飢えた獣のような眼光を筆にして戦後の裏面史を銀幕に綴(つづ)った名優であったろう。
野良を突けない管理社会に生きる身を菅原さんに託し、
筋目を通す暴れっぷりに留飲を下げた人は多いはずである。
高倉健さんの訃報に接したばかりで、
寂寥(せきりょう)の思いがいっそう募る
 
昔、「男」ありけり。
 
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