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険しくとも至福の山坂

2014-12-13 07:30:00 | 編集手帳

12月10日 編集手帳

 

のちに“学問の神様”となる菅原道真が、
不惑の坂を越えて官吏の登用試験に合格した橘風という人物を祝った詩がある。
〈四十二年 初めて及第す/まさに 知るべし 大器晩成の人と〉(『菅家文草』)

将棋の強豪アマ、
今泉健司さんがプロ編入試験に合格した。
くしくも橘風さんと同じ42歳…と書きたいところ だが、
そうそうコラム書きの都合どおりにはいかず、
ただいま41歳である。
新人プロ棋士としては戦後最年長、
大器晩成の人には違いない。

介護施設で働いて いる。
そこで接するお年寄りの声援を糧に、
将棋盤に向かってきたと聞く。

中学生でプロ入りした羽生善治名人や渡辺明王将もいるように、
あまたの天才がひしめき合う世界である。
険しくとも至福の山坂だろう。
人生の醍醐味(だいごみ)は寝台列車の旅にも似て、
“到着”にあるのではなく、
どこかを目指して走る一瞬一瞬のなかにあるという。
どうか、
いい旅を。

遅咲きの人に励まされて勇躍わが身を、
さて、
どの方面に旅立たせよう。
〈小(しょう)器(き)われ晩成もせず永らへて凡器を抱(いだ)き安らかに生く〉(新村出(しんむらいずる))。
とりあえずは愛誦(あいしょう)の一首をひとりつぶやく。

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