12月14日 NHK海外ネットワーク
西アフリカで流行が続きいまだに収束の見通しがたっていないエボラ出血熱。
世界各国では水際対策に加えてワクチンや治療薬の開発も急がれている。
しかし課題も浮き彫りとなってきた。
アメリカのNIH国際衛生研究所。
エボラウィルスに効果のあるワクチンの実用化に近づいたとして
来年半ばには完成する見通しを11月に明らかにした。
(米 NIHアレルギー感染症研究所 ファウチ所長)
「臨床試験はうまくいった。
心配された副作用もなく強い免疫反応を確認できた。」
ワクチンはアメリカだけでなく世界各国の研究者たちが開発を急いでいる。
その開発に欠かせないのがバイオセイフティーレベル4
通称BSLー4と呼ばれる施設である。
密閉した部屋で宇宙服のような防護服を身につけて入る。
ウィルスを封じ込めるため室内の気圧は外より低く保たれている。
WHO世界保健機関は致死率が極めて高く有効な治療薬の無いエボラウィルスの取り扱いをBSLー4でしか認めていない。
エボラ出血熱の流行が爆発的に起きている西アフリカ。
患者の数はすでに1万8,000人を超え6,000人以上が死亡している。
現地ではワクチンを開発できる施設は無く感染の拡大を食い止めることが出来ない状況である。
日本でも警戒感が高まっているエボラ出血熱。
その研究の最前線の一つが長崎大学である。
エボラ出血熱の研究で日本を代表する研究者の1人安田二郎教授。
国内では爆発的な流行を食い止める環境が十分に整っていないと危機感を持っている。
安田教授は感染者をできるだけ早く把握するためエボラウィルスを簡単に検知できるキットを開発した。
感染者が出たナイジェリアの研究者とも情報を共有しながら研究を進めている。
安田教授が研究に使用しているのは長崎大学の中にあるBSL-4よりも封じ込めのレベルが低いBSL-3の施設。
しかしここでは実際のエボラウィルスを扱うことはできない。
国内には現在BSL-4はひとつも無い。
エボラのような未知のウィルスは感染が広がる段階で変異する恐れがある。
仮に日本で感染が広がった場合
外国で開発中のワクチンが効かず独自にワクチンを開発しなければならない可能性もある。
ワクチンを国内で開発すrためには「BSL-4」が必要となる。
(長崎大学 熱帯医学研究所 安田二朗教授)
「日本にBSL-4の施設がないことは大きなリスクだ。
目前の脅威となる前に対策をとらないときちんとした感染症対策が取れなくなる。」
国内にはまだBSL-4がないので安田教授たちはBSL-4が使える南アフリカにまで出向いている。
(長崎大学 熱帯医学研究所 安田二朗教授)
「この施設は通常は3層構造で真ん中のフロアが実験室になる。」
安田教授たちは日本の10の大学や研究機関と連携し
総力を挙げてBSL-4の建設を目指している。
国内でエボラ出血熱に対応するワクチンや治療薬が出来る環境を早く整備する必要があると考えている。
BSLー4で使用する予定の防護服も準備している。
防護服の中の気圧を高めウィルスが中に入らないようになっている。
BSLー4は長崎大学の中に整備される計画である。
しかし大学が人口密集地にあるため周囲の住民からは不安の声があがっている。
安田教授たちは住民たちに集まってもらい説明会を開いている。
(長崎大学 熱帯医学研究所 安田二朗教授)
「3重以上のフィルターを通らないと外に空気は出ない構造になっています。」
こうした説明会をこれまでにr70回以上開いて施設の安全性をアピールしている。
しかし住民からは
・地震の蔡に安全性が保てるのか
・周囲に住宅の無い場所に作るべき
といった声が相次ぎ不安は払しょくできていない。
安田教授は
デボラ出血熱の対応が喫緊の課題である日本にとって施設がきわめて重要であることをt理解してもらい
計画を実現させたい考えである。
(長崎大学 熱帯医学研究所 安田二郎教授)
「対岸の火事と思っている間はこういう施設はできない。
少なくとも5年6年という年月が稼働させるまでには必要なので
非常に厳しい対応を迫られている状況に陥るというふうに考えている。」