12月1日 キャッチ!
11月26日 和紙がユネスコ国連教育科学文化機関の無形文化遺産に去年の和食に続いて登録された。
岐阜県 「本美濃紙」
埼玉県 「細川紙」
島根県 「石州半紙」
いずれも日本の伝統的な和紙の手すき技術が対象となっていて
“和紙作りを通して地域社会のつながりを生んでいる”というのが登録の理由である。
世界から注目されることのなった日本の和紙。
フランスのある男性がこの文化の素晴らしさを伝えようと南フランスの町で活動している。
フランス南部のアルル。
人口約5万人でユネスコの世界遺産もある歴史ある町である。
かつて後期印象派絵画の巨匠ゴッホがその最盛期を過ごし
“日本のように美しい”と称したとも言われている。
そのアルルでいま日本の和紙文化が静かに広がっている。
今年オープンした美術館の一角に和紙で作られた便せんや帽子などの作品が展示されている。
素材の和紙を手掛けた ブノワ・ドゥドニョンさん。
妻のステファニーさんとともに和紙を作り始めて2年になる。
(和紙職人 ブノワ・ドゥドニョンさん)
「これは和紙で作った帽子です。
日本の“柿渋”という色です。」
ドゥドニョンさんは大手の製紙会社に勤めていたが
4年前に組織の再編成に伴い職を失った。
妻から「せっかくなら天然の素材を生かした和紙を作ってみたら」と勧められたのをきっかけに
和紙職人として新しい人生をスタートさせた。
和紙の原料にしているのは“こうぞ”。
フランスではなじみの薄い植物だが
この“こうぞ”こそ柔らかくも強い和紙の品質を生み出すドゥドニョンさんにとってのまさに宝物なのである。
(和紙職人 ブノワ・ドゥドニョンさん)
「“こうぞ”の枝を切るときは
最高品質の和紙を作るためにより良いものを選ぼうと集中します。」
ドゥドニョンさんは4年前
日本で本格的に手すき和紙の技術を学ぼうと家族とともに島根県に渡った。
フランス政府の援助も受けて
合わせて1年間をかけてユネスコの無形文化遺産に登録されている石州半紙の技を学んだ。
(和紙職人 ブノワ・ドゥドニョンさん)
「日本で技のなかで最も難しかったのが“流しずき”です。」
2年前に帰国して間もなくアルル近郊の工場跡を専用の工房にした。
ドゥドニョンさんはより質の高い和紙を目指すとともに
フランスで和紙の魅力を伝えたいと考えている。
工房にはいまアメリカのニューヨークで織物や布地などの生地のデザインを学んだ女性が通っている。
“流しずき”の技法から生まれる美しい和紙に魅せられ
和紙と組み合わせた作品の展示会をパリで開こうというのである。
(デザイナー C・ベンセルさん)
「和紙には広い可能性を感じ強いインスピレーションを受けます。」
ドゥドニョンさんの活動のおかげでこの地域で和紙への関心は急速に高まっている。
友人の女性は先月生まれたばかりの娘のために和紙でできた折鶴のモビールを部屋に飾った。
(友人 C・エングェンさん)
「和紙を作って本やノートを作ってみたい。
和紙が大好きです。」
自然の風景を撮影するのが専門のフランスの写真家は
来年春の個展で伝統的な手すき和紙に印刷した作品だけを展示する計画である。
(写真家 J・ロシェさん)
「まるで風景画のような出来栄えです。
和紙で作る写真は素晴らしい試みだ。」
フランスでは貴重な美術品の修復に和紙が使われている例もある。
パリの国立高等美術学校では
島根県の石州半紙や岐阜県の本美濃紙を20年以上にわたって修復に使ってきた。
(美術品保存責任者 L・ケリュックスさん)
「和紙はとても美しく
繊維は長くとても強いので修復には最適なのです。
彼の和紙も素晴らしくいつか修復に使ってみたいです。」
ドゥドニョンさんの将来の夢は子どもたちの世代に手すき和紙の素晴らしさを伝えていくことである。
(和紙職人 ブノワ・ドゥドニョンさん)
「フランスでは和紙がまだよく知られていないので普及のための教育活動をしたい。
服飾などにも和紙の利用を広げたいし
環境に優しい点もアピールしていきたい。」
フランス唯一日本で伝統の手すき和紙の技術を習得したドゥドニョンさん。
南フランスの小さな町を拠点に和紙文化の普及に力を注いでいる。