12月7日 NHK海外ネットワーク
インドの人権活動家 カイラシュ・サティヤルティさんがノーベル平和賞を受賞。
貧しい家庭の子どもが家計を支えるために働かされる児童労働を無くすことを訴えてきた。
カイラシュ・サティヤルティさん(60)は30年以上にわたって児童労働を無くすための取り組みを続けている。
きっかけは幼いころに見た光景だった。
(サティヤルティさん)
「私と同じくらいの5歳か6歳の子どもが学校に通わず靴を磨く姿に衝撃を受けた。
その姿に怒りを覚えるのと同時に居心地の悪さを感じた。」
インドの貧しい家庭では家計を支えてもらうため幼いころから子どもを働かせることも少なくない。
その数は政府が把握しているだけで400万人以上にのぼる。
背景には
いまだ国民の3人に1人が1日約150円未満の貧しい生活をしている現状がある。
サティヤルティさんは大学卒業後大学の教員として働いていたが
貧しい子どもたちを救いたいと仕事を辞めNGOを立ち上げた・
警察や行政機関と共に工場などに次々と踏み込んでは奴隷のように働いている子どもたちを救いだしてきた。
子どもの救出は容易ではない。
抵抗する雇い主に銃で脅されるなど危険な目に合いながらも活動を続けた。
救出した子どもの数はこれまでに約8万人にのぼる
救いだした子どもが再び労働を強いられないようにサティヤルティさんのNGOでは保護する施設も運営している。
施設に来たばかりの子どもの中には過酷な環境で働かされ心に大きな傷を負った子どもも多くいる。
「心配しなくていいよ。
もう解放されたでしょう。
君はもう自由の身でしょう。
それともまだ奴隷?
奴隷じゃない。
君は自由だ。
遊んで楽しむことが出来る。
これが自由ということだ。」
(サティヤルティさん)
「子どもたちにはまず自由とは何かを知ってほしい。
そして他の人を信頼する気持ちを取り戻してほしい。」
施設では子供たちが失った教育の機会を与えることに力を入れている。
国語や数学など学校に通うために必要な知識を教えている。
この施設を巣立った若者も活動を支えている。
そのひとりで大学生のキンシューさん。
車を洗う労働をさせられていた8歳の時に保護されてこの施設で育った。
大学で機械工学を学ぶかたわら
休みの日には施設を訪れ子どもたちに勉強を教えている。
(キンシューさん)
「この施設に来て勉強し子どもらしく生きるチャンスをもらった。」
(サティヤルティさん)
「児童労働は読み書きができない親の問題
貧困の問題など多くの要因が絡んでいる。
社会・政府・企業などすべての人が協力して取り組まなければならない。
児童労働の撲滅は私の人生をかけた使命。
生きている間に世界から無くなってほしい。
そうできると信じている。」