12月15日 キャッチ!
アジアではこのところカジノを認める国や地域が増えていて“カジノラッシュ”とも言われている。
ベトナムではいま外国人観光客に対してだけカジノを利用することを認めているが
隣のカンボジアに行ってカジノに興じるベトナム人が後を絶たない。
資金の流出を引き起こしていることから国内のカジノを自国民に開放すべきだとの声も出てきている。
ベトナム ホーチミン周辺の各省ではカンボジアのカジノで遊びたい人を運ぶ専門の業者がいる。
(業者)
「まず男性をカンボジアの入口まで運んでから女性を運ぶよ。
帰るときもね。
検問所は10時に閉まるから9時半ならちょうどいいよ。」
カンボジア側に国境を越えて500m行くと数十軒のカジノがある。
周辺で最も大きいカジノでは客のほとんどがベトナム人。
カジノ経営に関する議定書の草案では
“21歳以上のベトナム国民はカジノを利用できる”
という規定がある。
意見の多くは
“カジノを認め利用できるようにするべき”
“税の徴収やゲーム管理もできる”
というものである。
(ベトナム国家大学経済学部 レー・チュン・タイン教授)
「私はカジノを合法的にした方が良いと考えている。
カジノは経済面や社会面の双方にとって有益であると思う。」
ベトナムでカジノ経営の許可を受けた企業は7社で他にも計画されている。
10の省からも申請が出された。
専門家は申請が一斉に承認されれば社会的・経済的にも問題だと懸念している。
(海外投資企業協会 グエン・ヴァン・トアン副会長)
「経済のグローバル化が進む中でカジノは認めざるを得ないが
規制を設け手続きに従って進めるべきだ。
どの省でもカジノを認めていいというわけではない。
国は管理についても考える必要がある。
利用者の経済力などの条件を設け
遊ぶ程度にし
自分や家族の全財産をつぎ込んだり借金漬けに陥らないようにすべき。」
カンボジア側にわたってカジノをするベトナム人の数は減る様子はない。
そのような人の多くはカジノ経営者から見るともはや良い客ではない。
勝ち続けている客からわずかなお金をめぐんでもらおうとテーブルの間を歩き回っているだけである。
そしていつかは写真入りの出入り禁止リストに名を連ねてしまうことになる。
経済振興策の一環としてカジノを導入しているのはベトナム以外にもアジアには数多くある。
マカオはカジノの売上高がアメリカのラスベガスを抜いて世界一である。
シンガポールは今年の観光収入が前年比5,8%増の203億シンガポールドル(1兆6400億円)近くになる見通しで
4年前のカジノ導入が大きな効果を上げているとみられている。
一方 外国人には認めるものの自国民に対してカジノを開放していないのはアジアではベトナムと北朝鮮。
ベトナムでもいま自国民への解禁を求める声が出ている。
ミャンマーでは今年度中に法律の改正を行うとしてカジノ導入の方向に動いているが
利用できるのは海外からの旅行者のみとして自国民のカジノ利用は禁止するということである。
(大和総研 主任コンサルタント 原田英始さん)
「ベトナムの経済成長率は近年5%程度で推移しているが以前に比べて成功率自体は鈍化している。
ベトナム政府は観光産業振興の一環としてカジノを含んだ統合型リゾートを景気拡大の起爆剤にしようと考えている。
昨年ベトナムでは初の統合型リゾート“ザ・グランド・ホーチャム・ストリップ”が開業した。
今後も大規模な統合型リゾートの開発が予定されている。
またそれと並行して自国民にカジノを解禁することで
カンボジア等隣国に流れている金を自国内に戻す狙いがある。
現状の体制を維持するかそれとも自国民に解禁するかについては今後の議論を待たねばならないが
統合型リゾートの経済効果の大きさや他国のカジノビジネスの状況などから解禁に踏み切ることは十分に考えられる。
韓国では外貨獲得を目的として当初外国人に限定していたカジノをのちに1か所だけ自国民に解禁した経緯がある。
現在ではその1か所のカジノの売り上げが
他のすべてのカジノの売り上げの合計とほぼ同水準で推移している。
ベトナム国民のギャンブル需要は旺盛と考えられ
自国民に解禁した際には韓国と同様の状況になる可能性が考えられる。
東南アジアのカジノラッシュの背景には莫大なチャイナマネーがある。
中国人富裕層のみならず中間層を観光客として呼び込むことで観光産業の振興につなげようという思惑が各国にはある。
しばらくは東南アジアのカジノラッシュは続くものと思われる。
ただし懸念材料がないわけではない。
これまで順調に推移していたシンガポールのカジノ売り上げに陰りがみられる。
原因は中国人観光客の減少とみられる。
このように東南アジアのカジノビジネスは中国人観光客に依存。
中国経済の成長が鈍化すれば東南アジアのカジノビジネスが影響を受けるという構図だ。
今後は観光客を呼び込むために統合型リゾートにおいて
カジノ以外に何が提供できるかという視点で差別化を図ることが重要になってくると考えられる。」
日本では超党派の議員連盟がカジノ解禁に向けた法案を取りまとめ
2020年の東京オリンピックまでにカジノを解禁するかどうか議論が進められている。