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混迷 南米のいま ①ベネズエラ 揺れる石油産業

2019-06-22 07:00:00 | 報道/ニュース

5月28日 国際報道2019


南米の経済的な側面を見ると
広大な南米大陸には石油をはじめとする豊富な地下資源と
総人口4億2,000万人の市場がある。
成長が大きく期待されていたが
実際にはいま南米の国々で急激な変化が起きていて混乱が生じている。

ベネズエラでは外貨収入の90%を占める石油産業が危機に瀕している。
石油の埋蔵量は世界一。
年間300万バレルの生産能力があるとされているが
前大統領のチャベス政権が国営の石油会社に深く関与した結果 腐敗が横行した。
人材の流出や生産施設の老朽化が進み
最新の統計では生産量が80万バレルにまで下がっている。
2013年にチャベス大統領の後を継いで去年再選されたマドゥーロ大統領の下で
経済はハイパーインフレに陥った。
さらに今年1月
グアイド国会議長が暫定大統領への就任を宣言し混乱は深刻になっている。
グアイドしを支持するアメリカは
マドゥーロ政権の資金を絶つためにベネズエラからの石油の輸入を止めて
ベネズエラの石油産業は窮地に追い込まれた。

ベネズエラ第2の都市マラカイボ。
名前の由来となっているマラカイボ湖には国営の石油会社ペドベサが原油の生産拠点を構えている。
1975年に設立されたペドベサは外貨の獲得に欠かせない原油の生産と輸出を行っていた。
マラカイボは南米の中で富裕層が集まる豊かな街として知られていたが
現在は中心部でも廃墟のような状態である。
町の中心部を走っている通りは5キロ以上にわたってほぼすべての店が閉まっている状態である。
今年に入って続く電力不足で店や高級ブランドが入る大型ショッピングセンターも閉まっている。
(商工会議所 副会長)
「商業は6割
 産業は8割以上がマヒしている。
 この国は実質的に機能停止状態だ。」
町ではガソリンスタンドの3分の2が閉店した。
ガソリンに精製するための原料をアメリカから輸入できなくなっているためである。
そのため営業を続けるガソリンスタンドでは車の列が5キロ以上続き
給油には20時間以上も並ばなければならない。
(市民)
「6時間待ってるけど全くダメ。
 これまでで最悪の政府。」
「これでは死を待つだけだ。
 我々は政府に殺される。」
国営企業のペドベサではかつて10万人以上の従業員が働いていた。
しかし経営不振などで半数近くが解雇された。
勤務していた男性の月給は日本円で3万円以上あったが去年の初めに突然解雇を通告された。
(国営石油会社に勤務していた男性)
「辞めないと投獄するぞと脅かされた。
 全く身に覚えがない脅しだった。」
退職後 男性は所有していた船を使い漁で生計を立てていたが現在は漁に出られない日が続いている。
原因は湖の汚染である。
ペドベサの老朽化した施設から油が流出したのである。
(国営石油会社に勤務していた男性)
「あの石油施設は動いていない。
 漁師の仕事を取り戻したい。
 食べ物が何もないから。」
男性は妻と子ども4人の6人家族である。
現在は妻が地元の会社で事務の仕事をしているが月収はわずか900円程度である。
食費を切り詰めても5~17歳までの育ち盛りの子どもたちに1日に1度の食事を食べさせるのがやっとだという。
(男性の妻)
「水だけ・・・。
 もうおなかがペコペコで・・・。
 この国はひどいです。
 これがベネズエラの生活の現実です。」
国営石油企業ペドベサの衰退は実はおよそ20年前から始まっていた。
ベネズエラから3,600キロ余 アメリカ南部のテキサス州。
州都ヒューストンから車で30分の所にある約5,000人のベネズエラ人が住んでいるという町ケイティ。
町にはいたるところにベネズエラ料理の看板が見える。
地元のスーパーではベネズエラから輸入した食品が売られている。
「カチャパ パタコン パステリート アレパ。
 ここにあるのはすべてベネズエラ料理です。」
5か月前にベネズエラから移り住んだ女性。
「早く状況が改善して帰国できることを願っています。」
この地域にベネズエラの人が集まるのはテキサス州がアメリカの石油産業の中心であることが理由の1つである。
サンチェス・ネゴさんは15年前にベネズエラを出てテキサス州に来た。
油田の地盤の力学を専門とし現地の技術者たちに教えている。
サンチェス・ネゴさんは同じ分野の技術者である夫とアメリカで会社を起ち上げた。
もともとはペドベサの社員としてベネズエラの石油産業を支える1人だった。
(サンチェス・ネゴさん)
「ペドベサは世界的にも素晴らしい企業でした。
 とても誇りに思っていました。」
状況が一変したのは1999年にチャベス政権が誕生してからの事である。
チャベス政権はペドベサの経営に介入を強め
原油で得た利益を施設や人材ではなく票集めのためのいわゆる“バラマキ”に利用したのである。
石油という基幹産業を政権が都合よく利用した結果
人材の流出が起きることになる。
2002年から各地でデモが起こるなかサンチェス・ネゴさんたちは政策を批判しゼネストを敢行した。
「チャベス大統領が引き起こした惨状を終わらせるために闘おう。」
しかし激怒したチャベス大統領はストに参加した社員を全員解雇。
長く混乱が続くことになる。
再就職を阻まれ祖国を離れる決心をしたサンチェス・ネゴさん。
しかし状況が改善すれば再びベネズエラの石油産業に力を尽くしたいと考えている。
(サンチェス・ネゴさん)
「多くの優秀な人たちが国の復興のために努力しています。
 できるだけ早く祖国を取り戻したい。」



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