5月31日 国際報道2019
ボリビアは南米大陸のほぼ中央
アンデス山脈が連なる国である。
中国から遠く離れたボリビアだが
いま南米各国の中で最も中国寄りとされている。
きっかけは2002年に就任した親米派の元サンチェス大統領の政策に国民の不満が高まったためである。
アメリカ育ちのサンチェス大統領は
南米第2位の埋蔵量を誇る天然ガスをアメリカに輸出する計画を発表した。
年間10億ドルの外貨獲得を目指すとしたのである。
ところが貧困層の多い先住民族の人たちは
天然ガスを国内での需要に充てて貧困対策に役立てるべきだと猛反発。
サンチェス政権は崩壊した。
その後2006年に就任したのがモラーレス大統領である。
貧困層を優遇する政策を掲げて
反米姿勢を鮮明にして中国寄りの政策に舵を切った。
国民1人当たりのGDPは右肩上がりで
毎年およそ5%の経済成長を続け
40%近かった貧困率は半分以下になった。
ところがいまモラーレス大統領の中国寄りの政策に対して反発の声が広がり始めている。
(ボリビア モラーレス大統領)
「ボリビアは世界が認める経済成長を遂げている。
私は政治でボリビアを再建した。
貧困をなくし経済を回復したのだ。」
モラーレス大統領の支持者たちが手にするのは7色の旗。
古くから先住民族が象徴として掲げてきたものである。
(支持者)
「小作農や貧困層を助けてくれるのはモラーレス大統領しかいない。」
「地方への支援も手厚い。
彼自身も地方の貧しい家の出身だから。」
モラーレス大統領の政策を支えてきたのがチャイナマネーである。
モラーレス大統領は中国の力を借りて次々と大規模な公共事業を実施。
ボリビアの主な公共投資の半分近くが中国による支援だと言われている。
たとえば最大都市ラパスの交通網ロープウェー。
標高が高い山岳地帯に欠かせない市民の足となっている。
ロープウェーの購入をはじめ
建設資材や輸入の手配まであらゆる面で中国が支援した。
道路・橋
料金所のシステムまで
自身の政策をたたえるようにモラーレス大統領の写真が。
“外国語と言えば英語ではなく中国語”
そんな認識が定着するようになったのもここ数年のことである。
街中の中国語教室の生徒の数は毎年増え続けているという。
(中国語教室 講師)
「市場では製造業も輸入も中国が入り込み中国語が必須になっています。」
潤沢なチャイナマネーで多くの人が恩恵を受けている。
先住民族のチパーナさん(26)。
自らが経営する豪華なホテルはかつてのスペイン植民地時代をイメージした装飾があしらわれている。
父親が中国企業に幹部として雇われ大成功。
そこで稼いだ資金を元手にホテルを建設した。
資材はすべて中国から取り寄せたもの。
(ホテル経営者 チパーナさん)
「中国人との仕事
中国からの輸入が我々を支えています。
中国との関係を築けたおかげでこの国は目覚ましい成長を遂げられました。」
併設するイベント会場ではボリビア名物の民族衣装をまとった女性たちがプロレスで大乱闘。
大勢の観光客をひきつけ
収益も上々である。
(ホテル経営者 チパーナさん)
「週末にこうしたイベントを開けば大金が入りより裕福になれるのです。
モラーレス大統領になってから多くの購買力のある新興億万長者が誕生しました。」
ところがいまモラーレス大統領を支持してきた人々に変化が生まれ始めている。
「モラーレス政権は支持しないよ。」
「新しい大統領になってほしい。」
大工のワンカさん(40)は
モラーレス大統領の親中政策により中国企業からの仕事は増えたが
休みがほとんどない劣悪な環境のもと低賃金で働かされるなど
暮らしはむしろ悪化しているという。
(ワンカさん)
「中国は侵略者です。
中国が私たちの資源も仕事もお金も奪ってしまうのです。」
国民の間では
中国からの借金が知らず知らずのうちに膨らんでいるとして不信感が高まっている。
(ワンカさん)
「モラーレス大統領には裏切られました。
中国との取引がどんなものか知らされず借金ばかりが膨らんでいるのです。」
変化は国会でも。
与党議員が8割を占めモラーレス大統領が思いのまま政策を通してきた国会で最近こんな光景が。
地元メディアで国会議員が公然と政権批判を口にするようになったのである。
(国会議員)
「モラーレス大統領は支持しない。」
国会議員のゴンザレスさんはほかの議員15人とともにアメリカのトランプ大統領に嘆願書を送った。
モラーレス大統領の独断で政策が進められていることに懸念を抱き
アメリカに救済を求めたのである。
“大統領に仲介をお願いしたい。
モラーレス氏の独裁が広がるのを止めてほしい”。
(国会議員 ゴンザレスさん)
「アメリカとの関係を強化すべきです。
大きな支援を約束してくれるからです。
アメリカのような先進国と付き合っていくべきです。」