箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

親と思春期の子のつながり

2019年11月01日 09時07分00秒 | 教育・子育てあれこれ





おそらく東日本大地震以降、よく使われるようになったと、私が考えている言葉が二つあります。

その言葉とは「想定外」と「絆」です。

「想定外」は当時、日本の政権をとっていた民主党の枝野幸男官房長官が、福島第1原発の1号機と3号機が爆発した際に、会見で「ただちに人体や健康に影響を及ぼすことはない」という説明をしたあたりに使われだしたと記憶しています。

また、東日本大震災では、被災者を支援する人びとのつながり表現するとき、「絆」という言葉がキャッチフレーズになり、一挙に世間で使われだすようになりました。

今回のブログでは、「想定外」ではなく、後者の「絆」について書きます。

以前のブログで、「絆」とは元来、平安時代には牛や馬の家畜をつなぎとめるための縄であり、強すぎる絆は相手を縛りつけ、束縛するマイナス面もあることに、私は触れました。

親子関係の絆についても、親と子がつながることは必要だが、それが強すぎると親は子を束縛することになり、子育ての面では子どもの自立を妨げるのでよくないということを書きました。

そのとおりです。

しかし、そんなに束縛するものなら、親と子の絆がいらないという考えになってしまうかもしれませんが、親子の絆はやはり必要です。

そこで、絆を考えるときには、それが強いか弱いかではなく、深いか浅いかという視点に目を向けたいと思います。



深いところでつながるというのは、ふだんいいかげんに見える親でも、親と子が細々とでもどこかでつながっているという感覚です。

子どものことをほったらかしにしている、ずいぶんと適当な親だと、一見見える親子関係の家庭があります。

ところが、子どもが頼ってきたときには、「うるさい!」ではなく、「どうしたの?」と応じるような親子関係のある家庭です。

絆をひもにたとえれば、細長いひもだが、たぐっていけば、親と子がちゃんとつながっている状態をイメージしてもらえればいいでしょう。

子どもの帰宅が遅いと怒鳴り散らす親は、ひもが短いので、すぐ反応して「あかん」とか「遊んだらダメ」と激怒します。「直下型」の態度です。

しかし、深い絆で子どもとつながっている親は、子どもを信頼しているので、「なんで遅くなったの」と聞きます。

そして、「へー、そんなことをやってたんか」、「そりゃ、おもしろいんやろな」「そうか、そうか」となります。

とこらが、親が主導権をもっている親子関係ならば、「叱らなければならない」となり、ガーという勢いで子どもに意見をします。

そんな、ゆるゆるでいいのか。子どもの好きにさせて。

いいのです。深いところで親子の関係がつながっていれば、子どもがどこかへ行ってしまったりはしません。

だって、ひもをたどっていけばちゃんと親と子は結ばれているからです。

思春期の子には、このようにゆるくて、細長い、深いところでつながっている絆が必要なのです。

子どもの方も束縛されないので、居心地がいいはずです。そして、何かあったときには、親を頼ってきます。

それでも、親子関係がそんなゆるゆるで、子どもが好き放題したら困るじゃないか。それで親の役割を果たせるのですか。

大丈夫です。やるく親と子がつながる絆でありさえすれば。

ほんとうに信頼しているか、見せかけで信頼しているか、そのちがいを思春期の子ならちゃんと見分けることができます。

どこかで親を本当に信頼していれば、子どもは困ったときに親を頼ってきます。

よって、強い絆ではなく、深い絆がいいのです。


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