私が中学校の教頭・校長をしていた頃、冬季に何度か学校行事「スキー実習」の引率をしました。
岐阜県の郡上高原スキー場へ2泊3日で行きました。
学校によって、スキー実習といったり、スキー教室と呼んだり、行事名はさまざまですが、だいたい1年生で、または2年生で行きます。
3年生では修学旅行があります。また高校入試を控えているので、ケガをしたらたいへんです。
さらに、スキーをすべって、入試を「すべる」のも、これもたいへんです。
ただ、1・2年生でのスキー実習の教育的効果は、とても大きいと私は考えています。
それは、スキー実習が自分で努力した。少しずつだけど滑れるようになった。最終日には、「自分って、けっこうやるものだ」。やればできるんだ。
このように実感できるのが、スキー実習なのです。
もちろん、そこにはインストラクターや学校の先生の十分な打ち合わせに基づく支えがあってこそ可能になります。
スキー実習のメリットを裏付けるかのように、2泊3日のスキー実習を終え、帰校したときの解散式では、どの生徒も充実感で満ちた表情をしています。
それとともに感じるのが、今の生徒たちに自信を持たせる機会をいかに提供できるかが、教育課題として問われているということです。
一般的に子どもの自尊感情は、中学校入学とともに下がるのがふつうです。
それは、小学校とちがって周りの子との差が見えやすくなるからです。
わたしよりもっと勉強のできる子がいる。
おれよりもっとサッカーのうまい子がいる。
こう思うのと、思春期の自我の目覚めから自分の存在意義を考えだし、子どもの自尊感情は下がるのです。
これは、いいとか悪いの問題ではなく、小学校とは違う学校のしくみの問題なのです。
自信がない、失敗したくない。新しいことにチャレンジすることは避けたい。
このように思う中学生が、けっこう多いのです。
そんな中学生に、自信の灯をともすのがスキー実習なのです。
先日、新聞記事に次のような投稿が載っていました。
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先日、学校の行事でスキー教室に行きました。
これまでスキーをしたことがなく、不安でいっぱいでした。
行く直前まで、「私はできないからやりたくない」と前向きな気持ちにはなれませんでした。
スキー教室の初日。初めてつけたスキー板は、けっこう重くて動かしにくく、恐る恐る雪上を歩きましたが、すぐに滑ってしまい、何度も転んでしまいました。
先生のアドバイスに従って、少しずつ前進しましたが、フラフラの状態。あまり傾斜のない坂でもほとんど滑れませんでした。
でも翌日も転びながら歩いて滑っているうちに感覚がつかめるようになり、自信が付いてきました。
2日後の最終日にはかなり傾斜のある坂も滑ることができ自分自身、驚きました。
普段、難しいことがあると、「私にはできない」と逃げていました。
でも、今回のスキー教室で「逃げても何も変わらない。少しずつ進めばできるようになる」ということを学びました。
(東京都 中学生 13歳、『毎日新聞』より)
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スキー実習の教育的効果を伝えてくれる投稿だと、あらためて思いました。
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