エンジンが冷えているとチョークレバーを引く。
そうやって、混合気を濃くして取り敢えずエンジンをかける。
エンジンがかかったら、とにかく円滑にまわりゃ良いんだから、ぎりぎりの薄い混合気にするため、チョークレバーを戻す。
SRの場合はキャブレターの端にある。レバーじゃなくて押しボタンのような形をしているから、チョーク「レバー」とは言えない。
だから「チョークノブ」と言うらしい。この押し釦みたいなのに指を二本引っ掛けて、引く。
夜中に乗ってなかったら、朝、エンジンは冷えている。
そうなると必ず「チョークノブ」を引かなければエンジンはかからない。
セルモーターが付いていれば、「スイッチを押して掛からなければチョークを」となるが、セルモーターなし、キックペダルのみ、それも単気筒、というSRの場合は、イチかバチか、でチョークノブを引かず、エンジンを掛けてみる、よりも「チョークを引かなければエンジンは掛からないもの」、くらいに思って必ずチョークノブを引く方がいい。
一発で上手く掛からなければ、二度三度とキックペダルを踏む。
カブの何倍もの馬力を発生させるエンジンだから、相応に強く踏む。上手くいかなきゃ冬だって大汗かいて繰り返さなきゃならない。
いつの頃からだろう、そのチョークノブが、引っ張っても何かの拍子で勝手に戻ってしまうようになった。
そうこうするうちに、エンジンを掛けようと引っ張る、指を放すと拍子も何もない、勝手に戻る、なんてことが起きる。
これじゃエンジンが掛からない。
で、そのボタンみたいになっているノブを押したり引いたり回したり、と色々やってみて、とにかく勝手に戻らない場所を探してようやくキック、なんてのが当たり前になっていた。
きっとそれが悪かったんだろう。
状況が好転するわけはない。自然治癒能力なんて持ってないんだから。ここら辺は人間とは違う。
「チョークのボタンが勝手に戻ってしまって」
「あ~、留めのところがすり減ったんですね~」
「交換するしかないですか」
「良くなることはないから」
「もうちょっと、騙しだましで乗ってみます」
こんなやり取りをしたのは何年も前だったと思う。
だから、容態は悪化の一途を辿っているのだけれど、その足はとても遅い、ということだ。
持ち主と一緒で、順調にゆっくりとボケてきている。
でも、自然治癒力はない分、人間と違って部品を交換すれば元通り、となる。
カブに対する姿勢の反省から、当然SRにも「同じくもっと大事にしなきゃ」という気持ちが湧いてきている。
我ながら「なかなか殊勝である」とほめてやろうと思う。
カブのエアクリーナーを交換してもらってから一夜明け、今度はSRのチョークノブの交換。
昼過ぎに預け、4時前に受け取りに行った。
何しろ、このチョークノブ、タンクの真下、キャブレターの後ろ側、奥の方に在ってねじ込み式であるとはいえ、指が辛うじて入るくらいの隙間しかないから、それを捉えて外そうにも工具そのものが入らない。それを無理して入れようとしても、このノブが盾のようになって邪魔をする。
そうなると、タンクを外して上からキャブレターとの隙間を探して・・・となるのだけど、これまた隙間がほとんどない。
「こんな風になって、引っ掛からなくなってました」
「プラスチックのところが負けるんですね」
「両方ですね」
中心になる金属棒に二箇所、竹の節みたいになっているところがある。そこが擦れて磨き上げられたようになっている。おそらく、プラスチックの方もそうなっているだろうということだった。
結局、タンクを外し、何とか工具を差し込んで回し取ったらしい。プラスチックの、ナットの形に成型されていた部分にはかなり強く工具で掴んだらしい深い爪跡が残っていた。
帰り掛け、エンジンを掛けようとしたが掛からない。チョークを引くのを忘れていた。
引いてみると、カチッと留まる。久しくなかった感触だ。
翌朝、改めて見ると、ホントにめんどくさいところにある。
やはり、一番の問題は「チョークノブの止まりがわるいから」と、その都度、何度もノブを回していたこと。
そのせいで中に入っているバネが「節」のような部分を少しずつ擦って行ったんだ。
要らんことをせず、「引き出す、押し込む」だけでいたら、もう二、三万キロは問題なく使えていたことだろう。
でも、同時に、少なくとも、今度は同じ失敗はしないだろう、とも思う。
ただ後悔しているだけじゃ仕方がない。
そうやって、混合気を濃くして取り敢えずエンジンをかける。
エンジンがかかったら、とにかく円滑にまわりゃ良いんだから、ぎりぎりの薄い混合気にするため、チョークレバーを戻す。
SRの場合はキャブレターの端にある。レバーじゃなくて押しボタンのような形をしているから、チョーク「レバー」とは言えない。
だから「チョークノブ」と言うらしい。この押し釦みたいなのに指を二本引っ掛けて、引く。
夜中に乗ってなかったら、朝、エンジンは冷えている。
そうなると必ず「チョークノブ」を引かなければエンジンはかからない。
セルモーターが付いていれば、「スイッチを押して掛からなければチョークを」となるが、セルモーターなし、キックペダルのみ、それも単気筒、というSRの場合は、イチかバチか、でチョークノブを引かず、エンジンを掛けてみる、よりも「チョークを引かなければエンジンは掛からないもの」、くらいに思って必ずチョークノブを引く方がいい。
一発で上手く掛からなければ、二度三度とキックペダルを踏む。
カブの何倍もの馬力を発生させるエンジンだから、相応に強く踏む。上手くいかなきゃ冬だって大汗かいて繰り返さなきゃならない。
いつの頃からだろう、そのチョークノブが、引っ張っても何かの拍子で勝手に戻ってしまうようになった。
そうこうするうちに、エンジンを掛けようと引っ張る、指を放すと拍子も何もない、勝手に戻る、なんてことが起きる。
これじゃエンジンが掛からない。
で、そのボタンみたいになっているノブを押したり引いたり回したり、と色々やってみて、とにかく勝手に戻らない場所を探してようやくキック、なんてのが当たり前になっていた。
きっとそれが悪かったんだろう。
状況が好転するわけはない。自然治癒能力なんて持ってないんだから。ここら辺は人間とは違う。
「チョークのボタンが勝手に戻ってしまって」
「あ~、留めのところがすり減ったんですね~」
「交換するしかないですか」
「良くなることはないから」
「もうちょっと、騙しだましで乗ってみます」
こんなやり取りをしたのは何年も前だったと思う。
だから、容態は悪化の一途を辿っているのだけれど、その足はとても遅い、ということだ。
持ち主と一緒で、順調にゆっくりとボケてきている。
でも、自然治癒力はない分、人間と違って部品を交換すれば元通り、となる。
カブに対する姿勢の反省から、当然SRにも「同じくもっと大事にしなきゃ」という気持ちが湧いてきている。
我ながら「なかなか殊勝である」とほめてやろうと思う。
カブのエアクリーナーを交換してもらってから一夜明け、今度はSRのチョークノブの交換。
昼過ぎに預け、4時前に受け取りに行った。
何しろ、このチョークノブ、タンクの真下、キャブレターの後ろ側、奥の方に在ってねじ込み式であるとはいえ、指が辛うじて入るくらいの隙間しかないから、それを捉えて外そうにも工具そのものが入らない。それを無理して入れようとしても、このノブが盾のようになって邪魔をする。
そうなると、タンクを外して上からキャブレターとの隙間を探して・・・となるのだけど、これまた隙間がほとんどない。
「こんな風になって、引っ掛からなくなってました」
「プラスチックのところが負けるんですね」
「両方ですね」
中心になる金属棒に二箇所、竹の節みたいになっているところがある。そこが擦れて磨き上げられたようになっている。おそらく、プラスチックの方もそうなっているだろうということだった。
結局、タンクを外し、何とか工具を差し込んで回し取ったらしい。プラスチックの、ナットの形に成型されていた部分にはかなり強く工具で掴んだらしい深い爪跡が残っていた。
帰り掛け、エンジンを掛けようとしたが掛からない。チョークを引くのを忘れていた。
引いてみると、カチッと留まる。久しくなかった感触だ。
翌朝、改めて見ると、ホントにめんどくさいところにある。
やはり、一番の問題は「チョークノブの止まりがわるいから」と、その都度、何度もノブを回していたこと。
そのせいで中に入っているバネが「節」のような部分を少しずつ擦って行ったんだ。
要らんことをせず、「引き出す、押し込む」だけでいたら、もう二、三万キロは問題なく使えていたことだろう。
でも、同時に、少なくとも、今度は同じ失敗はしないだろう、とも思う。
ただ後悔しているだけじゃ仕方がない。