4月21日(金)
起きたのは7時。
天井の照明器具が目に留まる。この家に入った時の曰く付きの蛍光灯。
前の住人が残していってくれた中古品ではあるが、何も
「人を殺してる。3人」
なんてことではない。
入居時の室内改修工事の際、五弁の花のような形(それぞれに円形の蛍光管が入る)に作られていた円形のカバーが壊れてしまった。その時点で相当に年数の経っている代物だから、交換しようにもなかなかそのカバーが手に入らない。
結局一個は何とか手に入ったけれど、壊れたのは二つ。仕方がないのであまり目立たない方はそのままで、ということで業者が平謝りをする中、家の引き渡しをされた。
寝室の電灯だから、ほとんど使わないまま二十数年が過ぎた。
しかし、ほとんど使わないのにあまり調子は良くない。5つ全部点けるか節約して3つだけ点けるか、なのだが、5つ点けようとしても4つしか点かない。蛍光管が古いのかも、と交換してみようとするのだが、天井まで十センチほどしか隙間がない中、作業をしなきゃならない。そんな身長もないし、長い手も持ち合わせていない。何よりカバーのはずし方が分からない。
そいつを朝、ベッドから見上げる。
今頃になって気付く。「これ、ガレージの蛍光灯が点かなくなったのと同じじゃないか?」ガレージの蛍光灯が点かなくなったのは、グロー球がダメになっていたからだった。
なぜ気付かなかったかというと、グロー球がガラスではなくプラスチックで内部の電気の飛ぶのが見えない、からだった。
もしかして、この寝室の蛍光灯にもプラスチックのグロー球が使われていたら?
「手が届かない」「脚立、持って来りゃいいじゃないか」「ベッドがある」「動かせば良いじゃないか」「自分でやらなきゃ。してくれる人はないぞ」と自問自答。
そして、朝食は後回し、早速脚立を持って来てベッドも動かす。
でも、まずは蛍光管のカバーを外さなきゃならない。これが分からない。
引っ掛けてあるだけだから外れそうなもんだが、と四苦八苦。やっと留め方が分かって、でもまた壊れないように、と慎重に5つのカバー全部をはずす。
蛍光管は二十数年もたっているのにほとんど傷んでない。交換する必要はなさそうだ。となると、やっぱり問題はグロー球ということか。見ると5つのグロー球の内、2つがプラスチック。3つがガラス管。ガラス管の方は3つともそれなりに煤けている。プラスチックの方は・・・分からん。
「惜しまないで全部交換しておいた方が良いな」
そう思って、まずプラスチックのグロー球を外そうと手を掛けた。
そして回そうと指先に力を入れた瞬間・・・粉微塵に砕け散ってしまった。
基部のねじになった部分だけが器具中に残っている。
「スーパーカブ」の主人公小熊のように、不安定な態勢からバランスを崩してボルトをねじ切ったというようなものではない。力そのものを入れてない。
なのに一瞬でグロー球が姿を消した。
茫然としてたって解決しない。今度は更に慎重に、もう一つ残っているプラスチックのグロー球をそーっと触った。
回そうとした瞬間、またもや粉微塵になった・・・・・。
どうするんだ一体。
(後半へ続く)