CubとSRと

ただの日記

史実を鑑みる(後)

2023年05月25日 | 心の持ち様
【欧州が提示した新技術とその後】について歴史を振り返る。

 ●燃料電池
 1990年ごろ、欧州は「次世代の自動車の動力源は燃料電池」と豪語していた。ダイムラーベンツは1993年のフランクフルトモーターショーでヴィジョンA93を発表し、床下に燃料電池スタックを収める革新的なパッケージについてアナウンスした。後の1997年に、Aクラスとしてデビューしたこのクルマは、数年以内に燃料電池を搭載した世界初の燃料電池車(FCV)となる予定だった。
しかし待てど暮らせど、どこのメーカーからもFCVは登場せず、ついに話は立ち消えになった。そして2014年に、なんとトヨタが世界初の量販FCVとしてMIRAIを発売した。これが史実である。

 ●オフセットクラッシュ
1980年代からの日本車の快進撃に危機感を募らせたドイツは、「ドイツ車の安全性」をアピールすべく、官・民・メディアが三位一体となって、新しい仕掛けを作った。それが「オフセットクラッシュ」だ。
車体幅の半分ずつズレた衝突ではボディの片側だけで巨大な衝突エネルギーを吸収しなければならないだけに、正面衝突より難しい課題だ。ドイツは1990年に突如この実験方法を主張して、日本車を含む世界各国のクルマを集めて実際にオフセットクラッシュテストを行い、自動車専門誌「アウト・モトール・ウント・シュポルト」誌がこれを報じた。
常識的に考えて、それだけの実験を行う設備を借り、多くのクルマを破壊する実験が一雑誌の予算でできるはずもなく、ドイツの自動車メーカーと監督官庁、それにメディアが協力して行った日本車のイメージダウンのためのキャンペーンであった、と筆者は考えている。

 ●ディーゼルエンジン
 インチキ・クリーンディーゼルの結末となった。

 ●ディゾット
 ダイムラー・クライスラー(当時)が2000年代初頭に提唱した新しいエンジンだ。ディーゼルエンジンとオットーサイクルエンジン(通常のガソリンエンジン)の良いとこ取りをしたシステムで、日本語では予混合圧縮着火、別名HCCIともいわれる。ここで「ん?」と思った方は、マツダファンだろう(笑)。
従来のオットーサイクルでは不可能なほど薄い混合気を燃やすことができるため、CO2排出で有利になる。しかしこの技術も結局日の目を見ることがなかった。
 そして結果的に実用化まで持ち込んだのはマツダで、現在それはSKYACTIV-Xとして市販されている。

 ●ダウンサイジングターボ
 ダウンサイジングターボは、VWなどが中心になって提唱した新技術であり、排気量とシリンダー数を削減したエンジンに過給して、低速回転で高トルクを発生させることを主眼としている。
 ところが、ここでエンジンのテスト方法にワールドワイドな統一規格が策定される。それがWLTPであり、日本の法規上使えない超高速域をカットした基準が日本式のWLTCである。
 この新規格では、従来と桁違いの高負荷加速がテストモードに組み入れられ、高回転を避けて通れなくなった。その結果、ダウンサイジングターボの苦手な領域が露わになってしまった。こうして、新時代の技術であったはずのダウンサイジングターボは一時の勢いを失い、どうも廃れていく気配である。

●そしてとどめが、2020年のCAFE規制を余裕でクリアしたのはEV専門メーカーを除けばトヨタ1社だったという現実である。

「世界の環境を善導すべく決めたオフィシャルな規制」を、言い出した側のはずの欧州メーカーがクリアできないのではとの噂が絶えなかった。最終的には排出権の購入などでほとんどがクリアするのだが、VWは達成できなかった。
そして今、欧州は「次はEVの時代だ」と言っている。まあこれまでパーフェクトに外してきた人が今回こそ予想を当てることもあるかもしれないが、どうなのだろうか。
 改めて欧州のインチキぶりがわかる。

 スポーツ競技でも日本人選手が活躍すればすぐにルールを変える。
CO2削減にしても天然ガスが高騰すれば薪や木質ペレットはグリーン燃料とみなされ森林の伐採が進む。対ロシア輸出規制もドイツはキルギスやカザフスタン向けが激増、そのままロシアに流れている。
 アメリカにしても全米で見れば発電の60%は火力である。環境にうるさいカリフォルニア州は電力価格が西部州平均の2倍、ニューヨーク州とならび州外へ移住する人口が多くなっている。左翼お得意の見掛け倒しの理想論なのであろう。


   (PB生、千葉)



 「宮崎正弘の国際情勢解題」 
    令和五年(2023)5月23日(火曜日)
       通巻第7760号 より
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