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ただの日記

何をか言わんや

2023年05月22日 | 心の持ち様
 
【変見自在】憲法審査会
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        高山 正之

 立憲の小西洋之が毎週開く衆院憲法審査会を「サルみたい」と嘲笑した。そこでどんな議論が交わされているか、一端が先日の産経新聞に載った。
 自民議員が共産党議員に「共産党は今の憲法成立時に党を挙げて反対した。それがなぜ護憲に転んだか」と質した。

 共産党議員は口籠りながら「自民が悪いから」とか馬鹿を言ったとある。
 全国中継の予算委でこんなシリアスな議論を聞いたことがない。
 毎度馴染みの辻元清美の雑言よりは遥かに知的で楽しい。こっちを全国中継すべきではないか。

 因みに共産党を代表して憲法反対論を語ったのは野坂参三だった。
 昭和21年8月の衆院本会議場がその舞台で、野坂はGHQ製の憲法草案についてこう述べた。
「憲法9条は空文だ。自衛隊を放棄すれば我が民族の独立を危うくする」
「それゆえに我が党は民族独立のためにこの憲法に反対する」
 実にまともだ。

 その野坂は治安維持法で追われる身で、終戦時は中共の庇護を受けて支那の延安に隠れ潜んでいた。
 帰国する気になったのはGHQが治安維持法を勝手に廃し、獄に繋がれた徳田球一らを釈放したからだ。
 それで彼も昭和21年の年明け早々にいそいそと支那から帰国してきた。

 それは分かるが、なぜ衆院議員になれたのか。
 表面だけを追うとマッカーサーは同年2月に幣原喜重郎内閣に自分が書いた憲法草案を受理させ、同年4月に総選挙を命じた。「戦前という穢れ」のない選良によって新憲法を成立させるためだと彼は言った。
 それでも日本人が大嫌いな共産党の野坂に清き一票を投じたとも思えない。

 実は野坂が受かるようにGHQはいろいろ手を尽くしている。
 一つが公職追放だ。まともな判断のできる政治家の大半と有識者併せて20万人を社会的に葬った。つまり被選挙権を奪った。
 代わりに野坂ら共産党員や社会党の加藤シヅエらを立候補させた。
 それでも野坂が当選する可能性は低かった。

 そこでGHQはこの「第22回総選挙」に限って従来の中選挙区を廃し、最大は14人区の大選挙区まで作る操作までやった。
 例えば野坂が立った東京1区は実に10人区だった。当たり前だが、そんな沢山の立候補など揃わない。野坂はほぼ無選挙で当選が決まった。
 「知能遅滞児は強制断種」を唱えた加藤シヅエは東京2区から立候補した。
 定員は12人。12位以下は法定得票数に達せず、彼女は自動的に当選が決まった。
 かくてGHQが選んだ立候補者はみな当選という摩訶不思議が実現した。

 ただGHQにも抜かりがあった。それは自由党の鳩山一郎の当選だ。
 彼はGHQの新聞検閲が始まる前に米国の原爆投下について「非戦闘員を殺戮した悪辣な国際法違反」と糾弾する談話を朝日新聞に載せていた。
 その鳩山は自由党総裁として首相になりそうな雲行きだった。
 それはまずい。
 GHQは外人記者会に命じて「午餐会に彼を呼んで吊し上げ、公職追放の口実を作らせた」(マーク・ゲイン『ニッポン日記』)

 こういう工作を次々打って、マッカーサーの書いた憲法草案は彼が望んだ顔ぶれによって審議された。
 天皇が発議もしていない憲法改正案は明らかに違法だが、それはなぜか審議されなかった。

 かくてまともな共産党員を除く選良たちによって新憲法は成立した。
 新憲法の前文には「日本国民は正当に選挙された国会の代表者を通じて行動する」とある。
 しかし草案の法的根拠は論じられず、候補者も選挙区の区割りもGHQによって変更され、当選者ですら勝手に外された。
 どこが正当な選挙なのか。憲法審査会は小西の言ったことなど気にせずに毎日開催してでもこの闇に光を当ててほしい。

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  松本市 久保田 康文氏 
『週刊新潮』令和5年5月25日号より採録






   わたなべ りやうじらう のメイル・マガジン
               頂門の一針 6508号
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     2023(令和5年)年 5月21日(日)より
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