信州でさえ最高気温が34度を記録した梅雨明けの週末、某里山へ粘菌ハンティングにでかけました。なにもしていなくても汗が噴き出す気温でしたが、以外に北風が気持ちよく、遠く蓼科山から八ヶ岳の稜線が霞むをぼんやりと眺めながら車中で昼食をとり、再び撮影にでかけました。気持ちがいいのは見晴らしのいい駐車場のみで、森に入るといきなりクロメマトイがまつわりつきます。
クロメマトイは、夏に里山に行ったひとなら必ず襲われた経験のあるやっかいな虫です。ヒゲブトコバエ科クロメマトイ(ヒゲブトコバエ)やハエ目ショウジョウバエ科マダラメマトイ、オオマダラメマトイなどで、十数種類います。クロメマトイは黒目纏と書き、要するにしつこく黒目を狙って纏わりつく3ミリぐらいの虫なのです。といっても黒目が目的ではなく涙などの体液なのです。刺されることはないのですが、目に入ると非常にやっかいです。そのため、夏の里山ではメガネかゴーグルが必須なのです。クロメマトイで検索すると、Amazon.co.jpで、"クロメマトイ"の検索に一致する商品はありませんでした。 と出るのが可笑しいです。実際は、山用や釣用でハッカスプレーなどの虫除けが売られていますが、効果は抜群とはいきません。ゴーグルが一番です。でもこのヒゲブトコバエの幼虫はオオワラジカイガラムシの捕食者だそうで益虫ともいえるのです。
しつこくしつこくまとわられて森を行くと、倒木上に直径5センチぐらいのお煎餅のようなものがあるのに気づきました(写真)。ちょっと乾き始めてているようです。手に取ると倒木に接着はしておらず、置かれているような状態でした。古い赤松の樹皮が剥がれたつるつるの表面に発生したため、乾燥とともに基部が剥がれてしまったのでしょうか。二番目の写真がそれです。ゴミのように写っているのは、近くにあったサビムラサキホコリの子実体のかけらがなぜかついてしまったものです。
直径は50ミリほど、高さは最も厚いところでも5~6ミリ程度。半分に割ったのが三番目の写真ですが、擬着合子嚢体は柄がなく、個々の単子嚢体は奇麗な円筒形をしているのが見えます。直径は約0.4ミリで、それぞれが密着しています。一番下は、よく見るクダホコリの未熟で、非常に可愛く「萌え」なんですが、ばらけています。密着したまま成長するものとの違いはなんなのでしょう。成長過程での強風によるものなのか、湿度のせいなのか・・。この変形膜は白色で海綿質であることが写真からも分かると思います。変形体は無色-白-桃色(または紅色)-肌色-褐色(黄褐色・暗紫褐色など)と変化します。子実体形成まで時間がかかるため、ピンクまたは紅色の未熟体がよく観られます。
4番目と5番目の写真は同じもので、倒木の側面に発生していました。暗紫褐色で、いわゆるチョコレート色の子実体なのですが、自重で滑り落ちそうになっていました。5番目は、それを外して割ってみたものです。黄褐色になると胞子を飛ばし始めます。クダホコリは、ドロホコリ科クダホコリ属で、世界的に分布します。他にコモチクダホコリ、エツキクダホコリ、オオクダホコリが知られています。エツキクダホコリは、名前の通り4~6ミリの柄がついたもの。オオクダホコリは、単子嚢体の中央に擬細毛体をもつことが多く、子嚢壁内面に粒状・噴火口状の二種類の紋があるというのですが、まだ見た事がありません。
蒸し暑い森での撮影は、大きな三脚が使えないため、木の枝を組み合わせたりして固定しますが、超小型の使い易い三脚はないかと探しているのですが、まだ気に入ったものには出会えていません。撮影中は、今度はヤブ蚊の襲来を受けます。山にいるのはヒトスジシマカ、ヤマトヤブカやオオクロヤブカですが、刺すのはメスのみです。血液型により刺され易い人がいるというのは全く科学的根拠のない迷信です。もっとも血液型による性格や相性も全く科学的根拠はなく、むしろそれを持ち出す事でその人の知能程度が知れるようなものでしかありませんが・・・。
梅雨明けとともに豪雨ともいえる夕立が降る様になりました。こうなると運が悪い粘菌は、せっかく子実体になっても洗い流されてしまいます。少々の雨滴が当たったくらいなら修復しますが、豪雨ではどうしようもありません。また、撮影をしていると小さな虫が変形体を食べているところに遭遇します。よく見るのはテントウムシの幼虫で、マメホコリの桃色の未熟にかじりついているのを何度か撮影しました。また、ベニボタルやキノコムシなども粘菌を食べるようです。では、粘菌は食べられるかというと、有名な話ではメキシコである種の粘菌が、フライの衣として利用されたとか、中国では「太歳」と呼ばれる地中にできる大きな粘菌が、バラの香りがし肉のような歯触りといわれていますが、どうなんでしょう。私はクダホコリやツノホコリを舐めたことがありますが、いわゆる樹液臭く美味しいというものではありませんでした。思わぬ毒性がないともいえないので真似しない方がいいと思います。
また、カビやキノコを食べる粘菌もいますし、粘菌の食べ物であるバクテリアを育成するというある粘菌の実験結果がNatureに発表されたこともあります。食物連鎖というのは、必ずしも大が小を食べるというような一方的なものではなく、実はかなり複雑だということが分かります。進化(evolution)という和訳から、なにか進化は進歩のように誤解しがちですが、進化は単に、生物の形質が世代を経る中で変化していく現象のことであって、進化は進歩の意味はありません。進化の結果、絶滅することもあり得るわけです。また、進化に目的はなく、突然変異に自然選択がはたらいた結果にすぎません。ですから、粘菌がこれからどう進化していくかというのは全くの未知なのです。ただ、愚かな人類の営みによって増えた放射性物質を生き延びる粘菌が出て来る可能性はあるといえます。もう既にいるかもしれません。
★ネイチャーフォト・ギャラリー【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】に200点余りの写真を追加しました。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。樹木、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真(3に虫倉山と京ヶ倉から)などを追加。粘菌の写真はこちらにたくさんあります。
クロメマトイは、夏に里山に行ったひとなら必ず襲われた経験のあるやっかいな虫です。ヒゲブトコバエ科クロメマトイ(ヒゲブトコバエ)やハエ目ショウジョウバエ科マダラメマトイ、オオマダラメマトイなどで、十数種類います。クロメマトイは黒目纏と書き、要するにしつこく黒目を狙って纏わりつく3ミリぐらいの虫なのです。といっても黒目が目的ではなく涙などの体液なのです。刺されることはないのですが、目に入ると非常にやっかいです。そのため、夏の里山ではメガネかゴーグルが必須なのです。クロメマトイで検索すると、Amazon.co.jpで、"クロメマトイ"の検索に一致する商品はありませんでした。 と出るのが可笑しいです。実際は、山用や釣用でハッカスプレーなどの虫除けが売られていますが、効果は抜群とはいきません。ゴーグルが一番です。でもこのヒゲブトコバエの幼虫はオオワラジカイガラムシの捕食者だそうで益虫ともいえるのです。
しつこくしつこくまとわられて森を行くと、倒木上に直径5センチぐらいのお煎餅のようなものがあるのに気づきました(写真)。ちょっと乾き始めてているようです。手に取ると倒木に接着はしておらず、置かれているような状態でした。古い赤松の樹皮が剥がれたつるつるの表面に発生したため、乾燥とともに基部が剥がれてしまったのでしょうか。二番目の写真がそれです。ゴミのように写っているのは、近くにあったサビムラサキホコリの子実体のかけらがなぜかついてしまったものです。
直径は50ミリほど、高さは最も厚いところでも5~6ミリ程度。半分に割ったのが三番目の写真ですが、擬着合子嚢体は柄がなく、個々の単子嚢体は奇麗な円筒形をしているのが見えます。直径は約0.4ミリで、それぞれが密着しています。一番下は、よく見るクダホコリの未熟で、非常に可愛く「萌え」なんですが、ばらけています。密着したまま成長するものとの違いはなんなのでしょう。成長過程での強風によるものなのか、湿度のせいなのか・・。この変形膜は白色で海綿質であることが写真からも分かると思います。変形体は無色-白-桃色(または紅色)-肌色-褐色(黄褐色・暗紫褐色など)と変化します。子実体形成まで時間がかかるため、ピンクまたは紅色の未熟体がよく観られます。
4番目と5番目の写真は同じもので、倒木の側面に発生していました。暗紫褐色で、いわゆるチョコレート色の子実体なのですが、自重で滑り落ちそうになっていました。5番目は、それを外して割ってみたものです。黄褐色になると胞子を飛ばし始めます。クダホコリは、ドロホコリ科クダホコリ属で、世界的に分布します。他にコモチクダホコリ、エツキクダホコリ、オオクダホコリが知られています。エツキクダホコリは、名前の通り4~6ミリの柄がついたもの。オオクダホコリは、単子嚢体の中央に擬細毛体をもつことが多く、子嚢壁内面に粒状・噴火口状の二種類の紋があるというのですが、まだ見た事がありません。
蒸し暑い森での撮影は、大きな三脚が使えないため、木の枝を組み合わせたりして固定しますが、超小型の使い易い三脚はないかと探しているのですが、まだ気に入ったものには出会えていません。撮影中は、今度はヤブ蚊の襲来を受けます。山にいるのはヒトスジシマカ、ヤマトヤブカやオオクロヤブカですが、刺すのはメスのみです。血液型により刺され易い人がいるというのは全く科学的根拠のない迷信です。もっとも血液型による性格や相性も全く科学的根拠はなく、むしろそれを持ち出す事でその人の知能程度が知れるようなものでしかありませんが・・・。
梅雨明けとともに豪雨ともいえる夕立が降る様になりました。こうなると運が悪い粘菌は、せっかく子実体になっても洗い流されてしまいます。少々の雨滴が当たったくらいなら修復しますが、豪雨ではどうしようもありません。また、撮影をしていると小さな虫が変形体を食べているところに遭遇します。よく見るのはテントウムシの幼虫で、マメホコリの桃色の未熟にかじりついているのを何度か撮影しました。また、ベニボタルやキノコムシなども粘菌を食べるようです。では、粘菌は食べられるかというと、有名な話ではメキシコである種の粘菌が、フライの衣として利用されたとか、中国では「太歳」と呼ばれる地中にできる大きな粘菌が、バラの香りがし肉のような歯触りといわれていますが、どうなんでしょう。私はクダホコリやツノホコリを舐めたことがありますが、いわゆる樹液臭く美味しいというものではありませんでした。思わぬ毒性がないともいえないので真似しない方がいいと思います。
また、カビやキノコを食べる粘菌もいますし、粘菌の食べ物であるバクテリアを育成するというある粘菌の実験結果がNatureに発表されたこともあります。食物連鎖というのは、必ずしも大が小を食べるというような一方的なものではなく、実はかなり複雑だということが分かります。進化(evolution)という和訳から、なにか進化は進歩のように誤解しがちですが、進化は単に、生物の形質が世代を経る中で変化していく現象のことであって、進化は進歩の意味はありません。進化の結果、絶滅することもあり得るわけです。また、進化に目的はなく、突然変異に自然選択がはたらいた結果にすぎません。ですから、粘菌がこれからどう進化していくかというのは全くの未知なのです。ただ、愚かな人類の営みによって増えた放射性物質を生き延びる粘菌が出て来る可能性はあるといえます。もう既にいるかもしれません。
★ネイチャーフォト・ギャラリー【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】に200点余りの写真を追加しました。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。樹木、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真(3に虫倉山と京ヶ倉から)などを追加。粘菌の写真はこちらにたくさんあります。





