千曲市倉科の杉山にあるセツブンソウ(節分草)が開花という情報をネットで得たので訪れました。昨年は春の訪れが2週間も早く、月末に訪れた時にはほぼ咲き終わっていました。今年は例年並みです。群生地は、「倉科の自然を守る会」の方々が管理や保護活動を行っています。
早春に咲き、2、3ヵ月でその年の生活サイクルを終え消えてしまう植物は、スプリング・エフェメラル(Spring Ephemeral、春の妖精、春の儚い命)と呼ばれます。セツブンソウの種は、アリが巣に運んで発芽する虫媒花。アリ散布植物です。石灰質の土壌を好み、晩秋から冬の間に、地中深くにある黒褐色の塊茎から発芽します。種子から開花まで3年以上かかるわけですから、林床の環境が良い状態で続かないと生育できません。昔は雑木林に入って草刈りや灌木の除伐や薪拾いをしたので、明るい林床にセツブンソウがたくさん咲いたのだとか。カタクリと同様、人の暮らしと密接な関係にある植物だったのです。ですから、盗掘や自生地の環境が破壊されると真っ先に消える植物です。(絶滅危惧植物II類)
セツブンソウはキンポウゲ科セツブンソウ属で、本州の関東地方以西に分布する高さ5〜10センチほどの小さな多年生草本。花の直径は約2センチ。花びらに見えるのは萼です。先が黄色く見えるのが退化して蜜腺になった花びらです。東京調布市の野川自然公園観察園では、毎年1月末から節分の頃に咲いていましたが、信州では3月中旬から下旬に咲く花です。この倉科の群生地は信州の北限といわれていますが、私は実は全く知られていない群生地があるのではと思っています。
この日は、夜間に降雪があり里山は真っ白になったので、2011年の様に雪を纏ったセツブンソウが撮れるかなと思ったのですが、昼近くには既に溶けていました。もっと早く来ればいいのですが、群生地は西向きのため、10時を過ぎないと日が当たらないのです。
◉雪中の節分草(妻女山里山通信) 2011年3月28日
千曲市の群生地は、他に戸倉のものが有名で訪れる人も多いのですが、倉科の群生地は訪れる人も少なく静かに鑑賞や撮影ができます。
セツブンソウで蜜を舐める昆虫を発見。形態からハエの仲間でしょう。3000種類もいるので同定はなかなか困難です。盛んに花から花へと飛び移って蜜を舐めていました。
当日は昼頃になると寒風が吹き下ろし始め、セツブンソウは細かく揺れ始めました。寒風に震えるような感じでした。ブレて撮影もなかなか難しくなったので、三滝へ行くことにしました。
(左)逆光のセツブンソウ。(中)群生地の入り口。車は林道脇に止めます。(右)倉科のMさん手作りの標識。斎場山(旧妻女山)から天城山、鞍骨城跡などでもお馴染みです。
三滝春景。(左)一の滝と上に二の滝。(中)二の滝の下にはダイナマイトで破壊されて落ちた岩石の山が。理由は下記の「倉科三滝の知られざる歴史」をお読みください。
(右)明治の倉科村村誌には「二の滝、高四丈三尺、幅一丈七尺、是に龍の劍摺石と唱うる石ありて、自然の穴七ツあり、俗に摺鉢と称す」と書いてあるのですが、「自然の穴七ツ」とは甌穴(おうけつ)のことで、河底や河岸の岩石面上にできた円形の穴のこと。瓶穴(かめあな)ともいいます。三滝の甌穴は岩石で埋まったと思っていたのですが、今回一の滝の上の平らな岩盤に土砂で埋まった様な甌穴ではないかと思われるものをいくつか発見しました。土砂を取り除けば全容が見られるかもしれません。水温が低すぎて入れませんが、夏になったら調べてみようと思います。といっても真夏でも水温は12度ぐらいですが。
◉倉科三滝の知られざる歴史(妻女山里山通信)
拙書『信州の里山トレッキング 東北信編』の扉に使った三の滝。扉のカットは真夏で水量も多く緑濃い風景です。遊歩道もありますが、ご覧のように整備されているとはいい難く、岩もゴロゴロしているので、トレッキングシューズが必要です。また昨年は友人が子熊を目撃しているので熊鈴も必須です。
(左・中)セツブンソウが咲く頃に、妻女山のダンコウバイ(壇香梅)も咲くので寄ってみました。咲き始めでした。これから標高の高いところに向かって咲き上がっていきます。(右)斜面に白い花を発見。ヤマシャクヤクが今頃咲くはずはないしなんだろうと近づいて見ると、なんとクリスマスローズでした。もちろん園芸種です。困ったことですが、家で要らなくなった園芸種を捨てていく人がいるのです。以前は紫色のオダマキが咲いていました。いずれも状況を観ながら自然環境を破壊するほど繁殖することもないだろうと放置してあります。オオブタクサやヨウシュヤマゴボウ、セイヨウタンポポなどの帰化植物の方が余程大問題です。そして、それ以上に大問題なのが、放射能や農薬、排気ガスなのです。
さて、里ではやっと白梅が咲き始めました。これから紅梅、杏、ソメイヨシノ、桃、林檎、山桜、レンギョウ、カスミザクラ、オオヤマザクラ、ウワミズザクラやズミと信州の春は駆け足でやってきます。
◉カタクリ、イカリソウ、クサボケ、モミジイチゴ、オオヤマザクラ、ズミが満開(妻女山里山通信)
◆『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。
★本の概要は、こちらの記事を御覧ください。
★お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。長野県シニア大学や自治体などで好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。大学や市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
早春に咲き、2、3ヵ月でその年の生活サイクルを終え消えてしまう植物は、スプリング・エフェメラル(Spring Ephemeral、春の妖精、春の儚い命)と呼ばれます。セツブンソウの種は、アリが巣に運んで発芽する虫媒花。アリ散布植物です。石灰質の土壌を好み、晩秋から冬の間に、地中深くにある黒褐色の塊茎から発芽します。種子から開花まで3年以上かかるわけですから、林床の環境が良い状態で続かないと生育できません。昔は雑木林に入って草刈りや灌木の除伐や薪拾いをしたので、明るい林床にセツブンソウがたくさん咲いたのだとか。カタクリと同様、人の暮らしと密接な関係にある植物だったのです。ですから、盗掘や自生地の環境が破壊されると真っ先に消える植物です。(絶滅危惧植物II類)
セツブンソウはキンポウゲ科セツブンソウ属で、本州の関東地方以西に分布する高さ5〜10センチほどの小さな多年生草本。花の直径は約2センチ。花びらに見えるのは萼です。先が黄色く見えるのが退化して蜜腺になった花びらです。東京調布市の野川自然公園観察園では、毎年1月末から節分の頃に咲いていましたが、信州では3月中旬から下旬に咲く花です。この倉科の群生地は信州の北限といわれていますが、私は実は全く知られていない群生地があるのではと思っています。
この日は、夜間に降雪があり里山は真っ白になったので、2011年の様に雪を纏ったセツブンソウが撮れるかなと思ったのですが、昼近くには既に溶けていました。もっと早く来ればいいのですが、群生地は西向きのため、10時を過ぎないと日が当たらないのです。
◉雪中の節分草(妻女山里山通信) 2011年3月28日
千曲市の群生地は、他に戸倉のものが有名で訪れる人も多いのですが、倉科の群生地は訪れる人も少なく静かに鑑賞や撮影ができます。
セツブンソウで蜜を舐める昆虫を発見。形態からハエの仲間でしょう。3000種類もいるので同定はなかなか困難です。盛んに花から花へと飛び移って蜜を舐めていました。
当日は昼頃になると寒風が吹き下ろし始め、セツブンソウは細かく揺れ始めました。寒風に震えるような感じでした。ブレて撮影もなかなか難しくなったので、三滝へ行くことにしました。
(左)逆光のセツブンソウ。(中)群生地の入り口。車は林道脇に止めます。(右)倉科のMさん手作りの標識。斎場山(旧妻女山)から天城山、鞍骨城跡などでもお馴染みです。
三滝春景。(左)一の滝と上に二の滝。(中)二の滝の下にはダイナマイトで破壊されて落ちた岩石の山が。理由は下記の「倉科三滝の知られざる歴史」をお読みください。
(右)明治の倉科村村誌には「二の滝、高四丈三尺、幅一丈七尺、是に龍の劍摺石と唱うる石ありて、自然の穴七ツあり、俗に摺鉢と称す」と書いてあるのですが、「自然の穴七ツ」とは甌穴(おうけつ)のことで、河底や河岸の岩石面上にできた円形の穴のこと。瓶穴(かめあな)ともいいます。三滝の甌穴は岩石で埋まったと思っていたのですが、今回一の滝の上の平らな岩盤に土砂で埋まった様な甌穴ではないかと思われるものをいくつか発見しました。土砂を取り除けば全容が見られるかもしれません。水温が低すぎて入れませんが、夏になったら調べてみようと思います。といっても真夏でも水温は12度ぐらいですが。
◉倉科三滝の知られざる歴史(妻女山里山通信)
拙書『信州の里山トレッキング 東北信編』の扉に使った三の滝。扉のカットは真夏で水量も多く緑濃い風景です。遊歩道もありますが、ご覧のように整備されているとはいい難く、岩もゴロゴロしているので、トレッキングシューズが必要です。また昨年は友人が子熊を目撃しているので熊鈴も必須です。
(左・中)セツブンソウが咲く頃に、妻女山のダンコウバイ(壇香梅)も咲くので寄ってみました。咲き始めでした。これから標高の高いところに向かって咲き上がっていきます。(右)斜面に白い花を発見。ヤマシャクヤクが今頃咲くはずはないしなんだろうと近づいて見ると、なんとクリスマスローズでした。もちろん園芸種です。困ったことですが、家で要らなくなった園芸種を捨てていく人がいるのです。以前は紫色のオダマキが咲いていました。いずれも状況を観ながら自然環境を破壊するほど繁殖することもないだろうと放置してあります。オオブタクサやヨウシュヤマゴボウ、セイヨウタンポポなどの帰化植物の方が余程大問題です。そして、それ以上に大問題なのが、放射能や農薬、排気ガスなのです。
さて、里ではやっと白梅が咲き始めました。これから紅梅、杏、ソメイヨシノ、桃、林檎、山桜、レンギョウ、カスミザクラ、オオヤマザクラ、ウワミズザクラやズミと信州の春は駆け足でやってきます。
◉カタクリ、イカリソウ、クサボケ、モミジイチゴ、オオヤマザクラ、ズミが満開(妻女山里山通信)
◆『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。
★本の概要は、こちらの記事を御覧ください。
★お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。長野県シニア大学や自治体などで好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。大学や市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。