晩秋のキノコといえば、信州では紫占地。フランスではピエ・ブルー(pieds bleus)といって栽培もされている高級食材です。本当に美しい藤色をしています。焦茶色ばかりの濡れ落ち葉の中にたたずむ乙女というところでしょうか。ただこの乙女は生で食べると中毒します。おまけに乙女は成菌になると必ずといっていいほどお腹にウジ虫を飼っています。ショウジョウバエや小さな甲虫の幼虫などですが、紫占地にはよく頭の尖ったオレンジ色の幼虫がいます。食べても害はないのですが、塩水に浸けて取り除きます。東京や神奈川の山のものに比べると信州のそれは虫がかなり少ないのが特徴です。おそらく発生する時期の気温や地温の低さが関係しているのかもしれません。
野生のキノコの場合、虫はつきものなので、絶対にいやだという人は食べないほかありません。また、この乙女は華奢で壊れやすいため優しく扱わなければなりません。乱暴に扱うと傘はすぐにバラバラになります。実に面倒な乙女です。成長して大きく傘を張った姿は森の貴婦人。菌輪といって輪や弧をなして並んでいる様は、まるで森の舞踏会。英語では "fairy ring"、"fairy circle"、"elf circle"、"pixie ring" など「妖精の輪」と表現されます。但し、落葉が進むと落ち葉に隠れて見つけにくくなります。足下にあっても、いわゆる「キノコ目」がないと見えて来ないのです。「晩秋ににほふ紫の乙女は葉隠れの術を使う」とはそういう意味です。古語においては、「かをる」は匂いに、「にほふ」は色彩に重きを置いた言葉とされています。梅は薫るもの、桜は匂うものといいます。藤紫の色は、雨に遭うと抜けます。さらに朝露に濡れたり雨に遭うと落ち葉が傘にべったりとついて、色も映り枯葉臭くなります。あっという間に乙女が老婆になってしまうのです。採り時がポイントです。
落葉分解菌なので原木栽培はできませんが、わりと簡単に増やす事ができます。わが家の森では紫占地のシロを蒔いて発生させています。かなり厚めの落ち葉の層が必要で、風雨で流され表土が露出するような場所だと出ません。また、日陰か半日陰の湿った場所を好みます。紫占地は、落ち葉の下に純白からやがて薄紫色の奇麗な菌糸の膜を張り、いわゆるシロを形成します。薄く紫色の膜が張ったシロは、それだけでも大変美しいもので、森の中の神秘のヴェール。大きな菌輪を作るので、大発生すると紫色の大きな輪ができます。その美しさは、まさに"fairy ring"、「妖精の輪」。
腐生菌なのでセシウムは菌根菌に比べるとあまり含有しませんが、虫出しを兼ねて濃いめの塩水に半日ほど浸けて除染をしましょう。さらに茹でこぼせばもっと効果的です。チェルノブイリ事故の経験から約9割のセシウムを除去できるとされています。もっとも最初の汚染度が高ければ食べられないのは言うまでもない事ですが。除染といいますが、無くなる訳ではないので、正確には移染です。洗ったり茹でこぼした湯水は下水に流れて行く訳ですから、下水処理場では高濃度の汚泥がでるのは当たり前です。地方で下水のない所では、汚水の溜まる場所に濃縮するので要注意です。川や海に流せば、いずれ生物濃縮して還ってきます。市販の栽培キノコの除染も同様に塩水に浸ける、茹でこぼすで行ってください。栽培キノコはほとんどが腐生菌なので、極端に高い線量は出ないと思いますが、栽培のおがくずや原木は福島が主な産地です。心配な方は、メーカーに直接問い合わせるのがベストです。
最も紫占地の旨味を堪能できる料理は、豆腐とのおすまし。あとは鍋物や炊き込みご飯に。油と味噌で炒めておやきにも。おすすめは、味噌バター炒めにして味噌ラーメンのトッピング。そして、フレンチで使われるくらいですから、乳製品との相性も抜群です。バターソテー、グラタン、エビやホタテとブロッコリーのクリームパスタ、シチューやスープに。パスタ料理や茹でてから生魚とマリネしても美味です。また、カリウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、カルシウムなどが含まれる栄養食品でもあるのです。但し、繰り返しますが、生食は厳禁です。中毒します。
ところで、キノコ狩りにはゴーグルが必須です。私はポリカーボネート製の透明な花粉用メガネをしていきます。初秋はとにかく喧しいクロメマトイ(ハエ目ショウジョウバエ科マダラメマトイ、オオマダラメマトイ、ヒゲブトコバエ科クロメマトイ等十数種)対策に。晩秋は、細かに砕けた枯葉が目に入るのを防ぐため(これが結構厄介)。また、共に小枝で目を突かないためです。目を狙うスズメバチ対策にもなります。
落葉松の黄色い葉の雨が降り始めると、秋も終わりです。紫占地と入れ替わる様に、霜降占地(銀茸)と榎茸が出始めます。今秋も最初の榎茸が採れました。白馬三山はすでに真っ白。志賀高原や菅平は白くなり始めました。そろそろ冬の匂いが漂い始めた信州です。
【信州の里山】キノコの汚染と除染について Radioactive contamination and decontamination for the mushroom 野生キノコの種類による汚染と除染の仕方についてまとめたスライドショーです。より詳細に言及したブログ記事はこちら。
「キノコの叫び」より
地球の年齢は46億年です。訳39億年前に海ができて原始生物が誕生しても、地球は太陽や宇宙からの放射線や宇宙線が降り注ぎ、陸上で生物が棲める環境ではありませんでした。誤解を恐れずに言えば、太陽は最も巨大な原発であり原爆なのです。
5.5億年前に海藻が酸素を大量に作り始め、オゾン層ができて、やっと陸上で生物が生きられる環境が整いました。
そして、人類が誕生したのがわずか450万年前。地球の歴史を1年とすると、人類の歴史はたった8時間余り。その人類が、膨大な時間をかけてやっと生物が棲める様になった地球を、自ら放射能で汚しています。原発=原爆=核は、生物学的には、最も反動的なものなのです。
前の記事で書いたとおり、今回の東北沖太平洋地震は、約1000年前の平安時代に起きた貞観地震と酷似しています。そして、貞観地震は20年ほどの間に次々と噴火や大地震を併発しました。今回も必ず起きるとみて間違いないでしょう。もう一度震度6以上の大地震は必ずやってきます。そして、原発は必ず壊れます。その時は、間違いなく日本の終わりです。あなたは黙ってその日を待ちますか?
★原発情報リンク集(妻女山里山通信編集)最新情報は、ブログの記事中やツイッターで流しています。
■肥田舜太郎氏&岩上安身氏(文字起こし) 労作。これは必見必読です。低線量被曝の恐ろしさ。
■「風評被害」と言ってはいけない 消費者を無視する最低の言葉:小山真人(静岡大学防災総合センター教授) 無批判に垂れ流すマスメディアは猛省を! 風評被害ではなく実害かデマ。実害なら東電に賠償請求するのが筋。
■TPP関連 巨大種子企業モンサントに立ち向かうカナダの一農民 農民の権利と種子の未来とは? 違反行為の監視や訴訟を武器にした農民への脅し。インドでは何万人もの自殺者。南米でも被害。耐性菌の出現でさらに悪化。
★ネイチャーフォトのスライドショーやムービーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌や森のあんずのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。「キノコの汚染と除染について」 アクセスが増えています!
野生のキノコの場合、虫はつきものなので、絶対にいやだという人は食べないほかありません。また、この乙女は華奢で壊れやすいため優しく扱わなければなりません。乱暴に扱うと傘はすぐにバラバラになります。実に面倒な乙女です。成長して大きく傘を張った姿は森の貴婦人。菌輪といって輪や弧をなして並んでいる様は、まるで森の舞踏会。英語では "fairy ring"、"fairy circle"、"elf circle"、"pixie ring" など「妖精の輪」と表現されます。但し、落葉が進むと落ち葉に隠れて見つけにくくなります。足下にあっても、いわゆる「キノコ目」がないと見えて来ないのです。「晩秋ににほふ紫の乙女は葉隠れの術を使う」とはそういう意味です。古語においては、「かをる」は匂いに、「にほふ」は色彩に重きを置いた言葉とされています。梅は薫るもの、桜は匂うものといいます。藤紫の色は、雨に遭うと抜けます。さらに朝露に濡れたり雨に遭うと落ち葉が傘にべったりとついて、色も映り枯葉臭くなります。あっという間に乙女が老婆になってしまうのです。採り時がポイントです。
落葉分解菌なので原木栽培はできませんが、わりと簡単に増やす事ができます。わが家の森では紫占地のシロを蒔いて発生させています。かなり厚めの落ち葉の層が必要で、風雨で流され表土が露出するような場所だと出ません。また、日陰か半日陰の湿った場所を好みます。紫占地は、落ち葉の下に純白からやがて薄紫色の奇麗な菌糸の膜を張り、いわゆるシロを形成します。薄く紫色の膜が張ったシロは、それだけでも大変美しいもので、森の中の神秘のヴェール。大きな菌輪を作るので、大発生すると紫色の大きな輪ができます。その美しさは、まさに"fairy ring"、「妖精の輪」。
腐生菌なのでセシウムは菌根菌に比べるとあまり含有しませんが、虫出しを兼ねて濃いめの塩水に半日ほど浸けて除染をしましょう。さらに茹でこぼせばもっと効果的です。チェルノブイリ事故の経験から約9割のセシウムを除去できるとされています。もっとも最初の汚染度が高ければ食べられないのは言うまでもない事ですが。除染といいますが、無くなる訳ではないので、正確には移染です。洗ったり茹でこぼした湯水は下水に流れて行く訳ですから、下水処理場では高濃度の汚泥がでるのは当たり前です。地方で下水のない所では、汚水の溜まる場所に濃縮するので要注意です。川や海に流せば、いずれ生物濃縮して還ってきます。市販の栽培キノコの除染も同様に塩水に浸ける、茹でこぼすで行ってください。栽培キノコはほとんどが腐生菌なので、極端に高い線量は出ないと思いますが、栽培のおがくずや原木は福島が主な産地です。心配な方は、メーカーに直接問い合わせるのがベストです。
最も紫占地の旨味を堪能できる料理は、豆腐とのおすまし。あとは鍋物や炊き込みご飯に。油と味噌で炒めておやきにも。おすすめは、味噌バター炒めにして味噌ラーメンのトッピング。そして、フレンチで使われるくらいですから、乳製品との相性も抜群です。バターソテー、グラタン、エビやホタテとブロッコリーのクリームパスタ、シチューやスープに。パスタ料理や茹でてから生魚とマリネしても美味です。また、カリウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、カルシウムなどが含まれる栄養食品でもあるのです。但し、繰り返しますが、生食は厳禁です。中毒します。
ところで、キノコ狩りにはゴーグルが必須です。私はポリカーボネート製の透明な花粉用メガネをしていきます。初秋はとにかく喧しいクロメマトイ(ハエ目ショウジョウバエ科マダラメマトイ、オオマダラメマトイ、ヒゲブトコバエ科クロメマトイ等十数種)対策に。晩秋は、細かに砕けた枯葉が目に入るのを防ぐため(これが結構厄介)。また、共に小枝で目を突かないためです。目を狙うスズメバチ対策にもなります。
落葉松の黄色い葉の雨が降り始めると、秋も終わりです。紫占地と入れ替わる様に、霜降占地(銀茸)と榎茸が出始めます。今秋も最初の榎茸が採れました。白馬三山はすでに真っ白。志賀高原や菅平は白くなり始めました。そろそろ冬の匂いが漂い始めた信州です。
【信州の里山】キノコの汚染と除染について Radioactive contamination and decontamination for the mushroom 野生キノコの種類による汚染と除染の仕方についてまとめたスライドショーです。より詳細に言及したブログ記事はこちら。
「キノコの叫び」より
地球の年齢は46億年です。訳39億年前に海ができて原始生物が誕生しても、地球は太陽や宇宙からの放射線や宇宙線が降り注ぎ、陸上で生物が棲める環境ではありませんでした。誤解を恐れずに言えば、太陽は最も巨大な原発であり原爆なのです。
5.5億年前に海藻が酸素を大量に作り始め、オゾン層ができて、やっと陸上で生物が生きられる環境が整いました。
そして、人類が誕生したのがわずか450万年前。地球の歴史を1年とすると、人類の歴史はたった8時間余り。その人類が、膨大な時間をかけてやっと生物が棲める様になった地球を、自ら放射能で汚しています。原発=原爆=核は、生物学的には、最も反動的なものなのです。
前の記事で書いたとおり、今回の東北沖太平洋地震は、約1000年前の平安時代に起きた貞観地震と酷似しています。そして、貞観地震は20年ほどの間に次々と噴火や大地震を併発しました。今回も必ず起きるとみて間違いないでしょう。もう一度震度6以上の大地震は必ずやってきます。そして、原発は必ず壊れます。その時は、間違いなく日本の終わりです。あなたは黙ってその日を待ちますか?
★原発情報リンク集(妻女山里山通信編集)最新情報は、ブログの記事中やツイッターで流しています。
■肥田舜太郎氏&岩上安身氏(文字起こし) 労作。これは必見必読です。低線量被曝の恐ろしさ。
■「風評被害」と言ってはいけない 消費者を無視する最低の言葉:小山真人(静岡大学防災総合センター教授) 無批判に垂れ流すマスメディアは猛省を! 風評被害ではなく実害かデマ。実害なら東電に賠償請求するのが筋。
■TPP関連 巨大種子企業モンサントに立ち向かうカナダの一農民 農民の権利と種子の未来とは? 違反行為の監視や訴訟を武器にした農民への脅し。インドでは何万人もの自殺者。南米でも被害。耐性菌の出現でさらに悪化。
★ネイチャーフォトのスライドショーやムービーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌や森のあんずのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。「キノコの汚染と除染について」 アクセスが増えています!