ジョットはそれまでの洗練されていなかったビザンティン美術を徹底的に打ち壊し、現在見られるような現実味あふれる素晴らしい絵画をもたらした。200年以上にわたって忘れ去られていた絵画技術を現代に蘇らせた画家である。
ジョルジョ・ヴァザーリ
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われわれは、ジョットを評価していない。なぜならこの人格は、悪い王の典型であるからだ。彼は他人の霊魂を支配し、その霊魂に自己活動をすべてやらせている。ジョットの画業は、ほとんどがその霊魂のやったことなのである。
他人に自己活動をやらせ、それで名声を得ても、こいつは屁とも思わないのだ。まるで当然のように、他人の行動を詐取している。なぜそんなことができるのか。
それはこの人間が、遠い時代にわがままな王であったことがあるからだ。そのとき、人民をエゴイスティックに支配し、人民が自分のために奉仕するのを当然と思い、あらゆることをやらせ、苦しめて、それを恥じることもなく、未だにその罪を支払っていないからである。
そのときの人民であった人間の霊魂が、未だにこいつに支配されて、隷属し、すべてをやらされているのである。これは人間としては下の下だ。
王制が滅びたのは、こういう王がたくさんいたからなのである。
ヴァザーリはほめたたえているが、ジョットの絵は画一的で硬い。他人に支配されている魂が描いているからだ。生き生きとした人間の心が見えない。他人にほめられることを目的として描かれている。
多分この絵を描いていた霊魂にとっては、ジョットの魂にほめられることが、うれしいことだったのだろう。
それが支配と隷属ということだ。まさに、馬鹿である。