これはかのじょの最愛の友人である。
かのじょには、生涯で忘れられぬ友人が4人いる。しょうゆ工場の裏のビワの木、野原の隅のくすのき、その近くのキョウチクトウ、そして公園のセンダンの木である。
ビワの木は、もっともはやく彼女の友人となってくれた木である。その寿命の短さ故に、ビワの木は彼女に尽くしてくれた。孤独をかこっていたかのじょにとって、ビワの木は明るい光だった。
かのじょは天使ゆえに、高い使命を持っていた。それゆえに、木もすすんではかのじょとは友情を結ぼうとはしなかった。天使と友情を結べば、天使とともに戦わねばならないからである。ビワの木はすぐに死んだが、くすのきは、かのじょと友情を結び、戦ってくれた。キョウチクトウがそれに続いた。それゆえに、くすのきもキョウチクトウも、それぞれの位を超えて進化した。くすのきとしては、キョウチクトウとしては、あまりにも美しい木になった。
かのじょは美をもっぱらとする天使であるがゆえに、かのじょとかかわったものは、信じられぬほど美しくなる。くすのきもキョウチクトウも、それは美しかった。あれらの木を、何の迷いもなく伐り払い、ごみと捨てることができるのは、人間の感受性の欠如である。天然システムに対する、認識の欠如である。
今この世に残っているかのじょの友人は、このセンダンだけである。これも、かのじょと友情を結んでいるうちに、センダンを超えたセンダンとなった。写真を見て、木の人格を感じてみたまえ。あなたがたよりよほど大きくて愛に満ちた存在を感じるだろう。彼らは知性も愛もあなたがたより高い。
このように、かのじょと深い友情を結んでくれたのは、植物だけだった。人間はだれも、かのじょと友情を結ばなかった。かのじょを助けようとはしなかった。ゆえにあなたがたは恥じねばならぬ。あなたがたは、木によって助けられたからだ。木がかのじょを助けたからこそ、かのじょはあなたがたをたすけることができたのである。
その木をあなたがたは、ごみとして捨てた。ふ。どうしようもない馬鹿である。
このセンダンの木だけは、決して伐ってはならない。
伐ればあなたがたは、永遠の馬鹿の上にもう一つ馬鹿がつくであろう。