世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

リング

2016-01-23 07:14:00 | 詩集・空の切り絵

満場の観衆に囲まれた
四角いリングの中で
二人の老人が戦っている

ひとりは某国の大統領
もう一人はテロ組織の黒幕
リングの真ん中で取っ組み合ったまま
二人は動かない

当然だ
あれだけのことをやったのだから
それにしてもひどい地獄だ
あの二人もまさかこんなことになるとは
思わなかったろう

予想はどうなっているんだ
ろくよんで大統領のほうだってさ
学生時代にボクシングをやったことがあるんだと
そりゃたのしみだね

殺した人間の数は
どっちが多いんだ
おいおいそれは聞くなよ
関係ないことなはいけどな
少ないほうはハンデをもらえるらしいぜ
どんなハンデか知らないけど

お 大統領がボディアタックした
黒幕は痛そうに暴れてる
今度は黒幕が頭突きをいれたぞ
大統領がもんどりうって倒れた

正義のルールってのは厳しいな
みんなの前で正々堂々とやるだけなんだってさ
苦しいぜ
凶器なんか持ったらおしまいだもんな
反則負けなんてできるもんか

お 大統領が起き上がった




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ネズミ

2016-01-14 05:09:38 | 詩集・空の切り絵

馬鹿が甘いトカゲを食べて
のぼりつめた山のてっぺんから
一直線に落ちる前に
ネズミに命を吸いとられる

別にいいじゃないか
これくらい
別にいいじゃないか
これくらい

親の財布から
一銭銅貨を盗んだ日から
お前は何も変わってない
一銭銅貨はどこに行った
素直に謝って
母ちゃんに返さないと
神様が怒る

別にいいじゃないか
これくらい
別にいいじゃないか
これくらい

偉い人の金庫から
二億三千万円盗むまで
どれだけのことをやった
馬鹿ばかりやって
てっぺんにのぼりつめて
苦痛が全部返ってくるときになって
おまえはやっと気づくのだ
すべては嘘だったと

阿呆が一瞬で終わる前に
急いで幕を下ろして
早めに命を吸い取って
馬鹿を片付けろ
ネズミが急いで走り回る

馬鹿ばっかりだ
馬鹿ばっかりだ
忙しくてたまらねえ

阿呆が一銭銅貨盗んでやがる
返してこなくちゃならないのに
母ちゃんはどこに行った
お前は何をした
阿呆よ 阿呆よ
死ぬ前に何か言え

おれの二億三千万返せ

もうだめだおまえは





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林檎

2016-01-13 05:08:56 | 詩集・空の切り絵

林檎が腐って落ちてくる
甘い林檎になれなれと
金の肥料を入れすぎて
林檎が腐って落ちてくる

甘い林檎は甘すぎて
大きく大きくなりすぎて
虫がたまらず食いついて
蛆がたまって落ちてくる
林檎が腐って落ちてくる

金の肥料はどこから来たか
山の向こうの小さな娘の
お花の庭から盗んできた
娘が育てた大事な花を
全部盗んで林檎にやった

そしたら林檎がみんな腐って
てっぺんからまっさかさまに
落ちてくる
全部が全部落ちてくる
もうだめだ もういかん
林檎が全部だめになる

馬鹿な林檎が落ちてくる
阿呆をみごとにやりすぎて
すべてがだめになりました
腐った林檎は地に落ちて
二度と芽生えることはない





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幸福

2015-12-27 03:35:55 | 詩集・空の切り絵

解脱の境地は
清らかな水晶のようだ
明るい光が射しこんでいる
おまえは まっすぐに行くだろう

自分の真ん中に座り
自分の全身をリアルに感じ
これは わたしの自分だと
唱えてみなさい
それでわかる

混沌の嵐が終わり
熱い光の幸福が始まる
どんなに遠くに行こうとも
おまえは二度と愛の庭から出られない
それは永遠の 
美しい愛の創造の始まりだ

澄んだ明るい心の中で
おまえは
自分がどんなに美しいものであったかを
発見することだろう





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メフィストフェレス

2015-11-26 03:21:49 | 詩集・空の切り絵

何でおまえは俺の言うことを聞かんのだ
何でおまえはいつもヒスを起こすのだ


それはあなたが悪いからですよ
あなたはいつも人に勝とうとして
他人のあらを探しては
人を馬鹿にしてばかりいるんだもの

誰にだって心はあるのよ
馬鹿にされてばかりいたら
時々我慢が割れて
心が破裂しそうになるくらい苦しくて
反発することくらいあるわよ
ヒスなんかじゃないわ
あなたが馬鹿だから
人の気持ちがわからないだけなのよ

わたしを支配しようとするのはやめて
わたしはあなたの奴隷じゃないのよ
言うことを聞かそうとして
男のずるい手を使うのはやめて

頭が痛いほどあなたは馬鹿だけど
わたしは愛そうと努力しているわ
そうでないとみんなが困るもの
一番つらいのは 子供なんだもの
できる我慢はしなければ
みんなを不幸にしてしまう

あなたは そんな我慢さえできないの
わがままばかりで
権力で人を支配しようとするの
それでないと自分がつらいからよ


なんでおまえは俺に反抗ばかりするんだ
なんでおまえはおれを馬鹿にするんだ


馬鹿にしているんじゃないわ
わたしじゃないと言ってあげられないことを
言ってあげてるだけよ
わたしが何度も言ってあげなくちゃ
あなたは一生
自分が馬鹿だってこと わからないでしょう




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サタン

2015-11-19 03:29:32 | 詩集・空の切り絵

テレビ見て遊んでる間に
おれがいちばんの馬鹿になってたんです
なんにもしてないのに
おれがみんなに
悪いこと全部やれって言っただけで
みんながやったこと
みんなおれがやったことになるんです

ぜんぜんだめなんですよ おれ
何にもしてないのに
何もしたことないのに
おれが馬鹿やれっていっただけで
みんなが馬鹿やって
この世界すべて荒らしまわって
いいやつ全員殺しちまって
世界中馬鹿ばかりにしたら
世界が馬鹿になって
それすべて おれんとこに来るんです

おれ 神さまにさからうつもりなんて
なかったんだよ
だってそんなことできるわけないじゃん
いやなことみんなでやったらなんとかなるから
ぜんぶ馬鹿やれって それいっただけで
おれ 神さまに戦争ふっかけたことになるの
それ 絶対馬鹿です
やってない おれやってない
なんにもしてないよお

どんなにがんばっても
逃げられません
おれ 何にもやってないの
家でテレビ見てただけなの
何にもしてないのに
おれがすべてやったことになるんだよ
ぜんぶにおれがやれっていったからさ

そんなことに なるんだよ
言ったことは責任取らなくちゃいけないんだよ
馬鹿みたいだ
おれ何にもしてないのに
ばかみたいだ
ばかみたいだ

ばかみたいだ






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幸いは

2015-11-15 03:31:34 | 詩集・空の切り絵

幸いは 飴のように溶けて
なくなってしまいました
自分には似合わない服を
無理やり買ってもらったばかりに
わたしの幸せはみな
どこかがおかしくて
本当はみんなに馬鹿にされていたのです

きれいになりたかった
お金持ちになりたかった
そのために
悪魔にいろんなことをしてもらった
だけど その幸せは
もう だめなのです
神さまが とうとう
人間の本当の幸せのしるしを
世界中にばらまいたからです

新しい幸せは
ダイヤの中にもシャネルのバッグの中にもなくて
大きな屋敷や 高級車の中にもなくて
もっと難しいものの中にあるの
人間の魂の奥の永遠の幸福のスイッチを押すと
世界が何もかも変わって
わたしの持っている幸せはみんな
色あせたガラクタのようなものになるのです

欲しいものなど何もない
ただ必要なものがあればいい
本当の幸いは
美しい自己表現ができる自己の永遠のエネルギィをひめた
この自己存在の真実に気付くことだと

先生がわたしに教えてくれるのです
でもわたしにはまだ半分も
意味が分からなくて
今でもフェラガモの靴を履いて
エルメスのバングルをはめて
夫のフェラーリを乗り回して遊んでる

すると町でわたしを見た人が
ああ あの人はまだわからないのだと
指を差して 気の毒そうな顔をする
もう変わったのに
まだやっていると
子供たちがはやしたてる

だって まだやりたいのだもの
こんなのが幸せだって
まだやりたいのだもの
いっぱいいっぱい高級なものに包まれて
わたしは幸せだってみなに見せびらかしたいの
それだけなの

でも わたしが近寄って行くと
もうみんながわたしから逃げるように離れていくの
だれにも相手にしてもらえない
真実が どんどん世界に染みこんでくる
わたしは大きな勘違いをしているって
先生は何度もいうの

こうして わたしの幸いは
飴が溶けるように
だんだんなくなっていったのです
なぜなら わたしの持っているものは
いつか必ず古びてなくなってしまうものだから
どこにも永遠は無いのです




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森の中

2015-11-13 03:57:02 | 詩集・空の切り絵

森の中を道に迷い
一筋の小川の岸を歩いていると
どこからか
昔殺した女の呼ぶ声がする

愛してなかったわけじゃない
ただあいつが
あんまりにおれのいうことを聞かなかいもんだから
いっそのこと殺してしまおうと思ったのだ

愛してなかったわけじゃない
最後のセックスをしてから
喉を絞めて殺した女の死に顔は
信じられないほど美しかった
何をやったのか
何をやったのか
おれは死体を埋める穴を掘りながら
そんなことばかり考えていた

思いどおりにしようなんて
考える方が悪いんだよ
言うことを聞かそうとして
暴力をふるう方が悪いんだよ
女は馬鹿じゃない
馬鹿だと思わないと
男の方が苦しいから
女が馬鹿だって言う嘘を
真理の書の中に紛れ込ませておいただけだ

そうやって 
男は女を馬鹿にし続けてきて
思いどおりにしようとして
言うことをきかそうとして
すべての女を殺してしまったのだ
もう誰も帰って来はしない

あらゆるものが 阿呆かと
おれたちをあざ笑う
そこまでのことにならなければ
わからなかったのか
大馬鹿者よ

愛していると 今更言っても
誰も帰って来はしない
おれはひとりで水の中に入り
永遠に見ることのできない世界に別れを告げて
運命を受け入れる

もうだめなのだ
あきらかにおれたちのやったことは
セックスが欲しくて
女を馬鹿にして
何もかも思いどおりにできる
唯一神になることだったのだ




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いらない人間なんて

2015-11-10 03:53:55 | 詩集・空の切り絵

いらない人間なんて
ほんとはいないんだよ
だけどにんげんが自分で
こんなにんげんなんていらないって
自分を捨てるもんだから
とても悲しいことになってしまうんだよ

ぜんぜんちがう自分になろうとして
他人から自分を盗んで
それを着ぐるみみたいに着て生きていた
ほんとの自分なんていやだったから
他人のほうがいいから
そのほうがずっと自分がすごい感じがして
生きるのが楽だったんだよ

どんなに生きたって
所詮は他人の人生だったからかな
おれのじゃないから
生きることが楽だったのかもね
つらい思いなんてしなくてもいいように
何にもしなくても 偉くなれるように
馬鹿に頼んでおいて
おれはするするうまくいく人生の上にのっかって
ただ何にもしないでいるだけだった

だけどもう そんな馬鹿はできなくなるんだよ
もう神さまがダメだって言ったからなんだよ
みんな正直な本当の自分を生きなければいけないって
神さまが言うんだよ

いらない人間なんて 
ほんとはいないんだよ
だけどおれは 自分がいやで
自分なんていらないって言って
ほかのやつの人生を盗んでばかりいて
自分の事は何もしなかったもんだから
やってきたことすべてが馬鹿になるの

もう二度と 馬鹿やって
ずるやって
うそみたいなすごいやつになることできないの
馬鹿みたいって みんなに言われて
なにもかもが馬鹿になるの




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ちいちい鳴くは

2015-11-08 03:56:39 | 詩集・空の切り絵

ちいちい鳴くは ことりことり
みいみい鳴くは こねここねこ

ほら 愛があなたの中で揺れるだろう
ちいさなこのために何でもしてやりたいと
心が愛に濡れるだろう

かわいいかわいい
わたしのことり わたしのこねこ
ずっとずっとそばにいておくれ
さびしくなんかない
おまえがわたしのそばにいる限り

ちいちい鳴くは ことりことり
みいみい鳴くは こねここねこ

ちいさいものは 
あなたのなみだのうしろの
ちいさな夜空に
たったひとつぶの星を灯すだろう
それは確かにちいさいが
あなたの空をすべて温めてしまうだろう

ちいちい鳴くは ことりことり
みいみい鳴くは こねここねこ

ときにはふたりよりそって
心がたがいにとけあって
暖かい血のながれのように
ふたりをつないでしまうだろう

おまえのために何でもしてやろ
ちいさいもののために何でもしてやろ
小さな愛の幸福は
やさしくあなたの心を濡らすだろう





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